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963.キノコ地獄

「あっと、ごめんなさい」

「それはキノコです」


 肩がぶつかって跳ね返されたレン、【幻覚】の効果でキノコとツバメを間違える。


「ところでこの空間、どれくらい続くのかしら」

「あはは、それもキノコだよ」

「…………」


 生えている大型キノコとメイたちの区別が全然つかないレンは、ため息をついた。


「こういうレンさんはなかなか見られないので、楽しいですね」

「ツバメちゃんの歩き方も楽しいよ」


 そう言うツバメも、【酩酊】のせいで見事な千鳥足だ。

【笑い】の異常は早めに消えてくれたが、それ以外はしっかり継続中。


「すっかり全てがキノコに乗っ取られてる感じの道。かなり難しいルートみたいね」

「あっ、ここから胞子が濃くなってるよ」


 続く道には、胞子を吐くオブジェクトキノコが多い。

 そのためこれまで以上に胞子が飛び交い、視界が白く煙るほどだ。


「進みましょう。敵が来た時は教えて。そこに向けて魔法を使うわ」


 胞子が舞い散る中、レンは杖を手前に向けた状態で進む。


「きたっ!」


 敵はまたもマタンゴ。

 しかし数は一体のみ。

【幻覚】状態のレンにはツバメに見えているが、これなら間違うはずもない。


「【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」


 レンはすぐさま炎弾の連射で、マタンゴを打倒。しかし。


「「「「っ!?」」」」


 駆ける大炎が、四人の鼻先を焦がしていく。

 その火力は、どう見ても高すぎる。


「……もしや、粉塵爆破ですか?」

「そんな仕掛けもあるの……?」

「お、おそろしいです……っ」


 四人は意外な罠に、思わず息を飲みつつ進む。


「またくるよ!」


 新手に気づいたメイが、すぐに声をあげた。


「それなら氷結魔法に変えるだけよ!」


 道の先にいたマタンゴ。

 レンの目にはメイだが、これも間違い様がない。

 しっかりと狙いをつけて魔法を――。


「なにあれ……?」


 こちらに気づいたマタンゴは、なぜか石積みの壁に付着した胞子を払う。

 出てきたのは、壁に埋め込まれた灯篭。


「ちょちょちょちょっと待って!」


 レンは大慌てで叫ぶが、マタンゴは止まらない。


「伏せてぇぇぇぇーっ!」


 レンは叫んで、大急ぎで伏せる。

 直後、灯篭に着いた炎が一気に閃光を放ち、二度目の粉塵爆発。


「うわあああああーっ!」


 慌てて全員で伏せの姿勢を取り、どうにか事なきを得た。


「……恐ろしい展開でした。まさか灯篭に火をつけて爆発を狙うとは」

「び、びっくりしました」

「本当だねぇ……」

「それなら、燈火装置を先行して叩くのみよ!」


 レンとメイは、狙いを発火する装置の方に変更。


「【フリーズボルト】!」

「【投石】!」

「【フリーズボルト】!」

「【投石】!」


 先行して燈火装置を潰して先行。


「これなら粉塵爆破も起こりませんね」


 こくりとうなずくツバメに、まもりもひと安心。


「敵が来るよ、レンちゃん」

「どこからでも来なさい! ここにはもう一つたりとも炎が出る装置は残っていないわ!」


 聞こえた敵の足音に、メイが指を差す。

 そしてあらためて、やって来た敵に視線を向けると――。


「あれは……サラマンダーです!」

「敵自体が燃えてるのは反則でしょう!?」

「ま、ままま待ってください――っ!」


 全身にキノコを生やした、赤い身体の大蜥蜴。

 まもりの制止の声も届かず、ついに登場した炎を自力で灯す敵。

 巻き起こる、盛大な粉塵爆発。


「わあああああーっ!」

「きゃあああああっ!」


 まもりが前に出て、盾を構えたことで炎の直撃は抑えたが、全員して飛ばされ転がる。


「もう! なんなのよ!」


 こちらの裏をかく粉塵爆破の連続攻勢に、声を荒げるレン。


「まもりさん、ナイスです」

「あははは、ビックリしちゃったね」

「こんなところ、さっさと抜けちゃいましょう!」


 粉塵爆破サラマンダーの、まさかの自爆。

 これはたまらないと、小走りで粉塵爆破地帯を進むレンたち。


「こ、ここは下りみたいです……っ」


 たどり着いた先には、石畳みの床に空いた四角い大穴。

 吹き抜けのようなこの穴の壁面には、またびっしりと胞子とキノコが生えており、ところどころに大きなキノコが目につく。

 穴の上部に架けられた十字の角材は、最初の足場か。

 釘で打ち付けただけみたいな造りは、すごく心もとない。


「っ!」


 メイの耳がピクリと動く。


「また魔物たちが来るよ!」


 振り返るとそこには、猛然と駆けてくる7体のマタンゴたち。


「降りてしまいましょう。マタンゴはやっかいですし、押されて穴に落ちてしまう可能性があります!」


 底が見えない穴を背に、状態異常のままマタンゴの相手はしたくない。

 四人は順路であろう吹き抜けを、降りることにする。

 壁に生えた大キノコは間違いなく、降りていくための足場だ。


「レ、レンさん! そこに足場はありません……っ」


 慌てて服をつかんで止めるまもり。


「まもりさん、まずはこの角材の上を進んで、大キノコに飛び移れる場所まで進みましょう」

「は、はひっ」

「私が先行しますので、後に続いてください」


 そう言いながら、角材に乗った【酩酊】ツバメ。


「……あっ」


 二歩目で早くも踏み外す。


「【ターザンロープ】!」


 メイは真っ逆さまのツバメをロープで捕まえ、そのまま角材の上へと進む。


「マ、ママママタンゴたちが来てしまいますっ!」


 背後からは胞子を噴き出しながら迫る、マタンゴたち。


「メイはそのまま飛んで!」

「りょうかいですっ! 【ラビットジャンプ】!」


【ターザンロープ】でツバメを捕らえたまま、メイは大キノコの上へジャンプして事なきを得る。

 残ったのは、まもりとレン。

 一体目のマタンゴが、容赦なく体当たりを仕掛けてきた。


「っ!」


 これをかわすと、マタンゴはそのまま吹き抜けを落下して消える。


「ど、どどどどうしましょう!」


 穴のフチに立つまもり。

 角材は細く、マタンゴたちに群がられれば間違いなく一緒に落下することになるだろう。


「まもり、私を抱えて飛び降りて!」

「は、はははひっ!」


 マタンゴに向けて真面目な顔で言うレンに向けて、まもりはダッシュ。


「よし、このままいくわ!」


 駆けてきたまもりと抱き合ったレンは身体を倒し、そのまま吹き抜けに身を投げる。


「レ、レンさーん!!」

「大丈夫! 二人なら【浮遊】がスロー落下になることは、とっくに確認済みだから!」

「今抱えてるそれ――――マタンゴですぅぅぅぅっ!」

「……は、はああああああっ!?」

「きゃあっ!」


 一人上部に残されたまもりも、マタンゴたちの『捨て身体当たり』で吹き抜けから落下。


「まもり!」


 落ちてくる6体のマタンゴたち。

 レンはすぐさま手元のマタンゴを捨て、まもりであろうマタンゴに手を伸ばす。


「レンさんっ!」


 そしてギリギリで、レンはまもりらしきマタンゴの手をつかんだ。


「これは、まもりで大丈夫よね……?」

「は、はひっ」

「よかった……」


 落ちてくる6体のマタンゴから、見事にまもりを選んだレンは【浮遊】効果でゆっくりと降下。

 大きなキノコの足場を跳んで降りていくメイと共に、無事吹き抜けの罠を乗り越えることに成功した。


「とりあえず一段落ね……でも」

「あははははっ。楽しかったね!」

「ふふふ、とてもスリリングでしたね」

「皆、この笑いは【笑い】じゃないわよね……?」


 危機一髪、粉塵爆破のマップをどうにか切り抜けたメイたち。

 四人はまだ残る状態異常を抱えながら、吹き抜けを降りていく。

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― 新着の感想 ―
[一言] まもりのお菓子な箱庭チャンネル、チーズコロッケ丼編の通常ばん出来ました、デカ盛りばんと一緒にはるか、先に通常の方だけはるか迷い中、料理行程は量が違うだけで、基本的に同じものになります。
[一言] 論理クイズは幼女と七枚のカードの要素が少しだけあるかも…。
[一言] まもり「食べれそうなキノコ無いかな?」
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