959.第三の門の行方
「エルラトもナディカも、動きはなし」
「ヒントになるようなクエストや、情報提供NPCも見つかりませんでしたね」
アサシン集団こと『世界維持機構』の管理者による宣言は、星屑の世界に響き渡った。
様々なプレイヤーが『災厄の門』を探して駆け回る状況は、もはやゴールドラッシュ状態。
世界各地にある遺跡や怪しいポイントに、たくさんのプレイヤーが駆けつけている。
世界中が賑わう中、メイたちが足を伸ばしてみたのは二つの遺跡だった。
しかしそこに変化はなく、ヒントになる物もなかった。
「い、一体どこにあるんでしょうか……」
「……こういう場合は、新たな場所ではなさそう」
「これまでに通り過ぎて来たマップの中から、その場所を考えるといった感じでしょうか」
「見落としがない限りは、そうなるんじゃないかしら。実はラプラタの深部に何かが眠ってるなんて、ありそうじゃない?」
「確かにあの遺跡は見事な造りでしたし、まだ見つかっていない何かがあるかもしれません」
「い、行くだけ行って、確かめてみるのもいいかもしれませんね」
そんなことを話しながら、レンたちは古代ポータルによる移動を使おうと歩き出す。
「…………あれ?」
「どうしたの?」
皆と一緒になって首をかしげていたメイは、一つの疑問にぶつかる。
「二つの門には、それを守る大きな『王様』がいたよね。空は鳥、海は角のある白クジラ。それなら山とか大地の王様もいるんじゃないかなーと思って」
「確かにそうね……ちょっと待って」
そんなメイの指摘に、レンが何やら考え始める。
「確かエルラトの王城にあった壁画には三つの魔物がいて、旧世界の危機の時は一緒に戦って異世界の魔物を北極に封じたのよね。そのうちの二体は間違いなく、空の王と海の王だった。そして最後の一体。『これまでに通り過ぎたマップ』っていう視点で考えれば、あれって……」
その瞬間、三人に同じ映像が浮かぶ。
「「「獣の王!」」」
自然と、声が重なった。
「確かにそうですね。しかもあの二体の王様は普段、世界をめぐっている感じのようですし、どこかで接触してても不思議ではありません」
「それが獣の王みたいに何かしらのクエストの大ボスという形だったとしても、おかしくないわ」
「な、なるほど……!」
メイたちの冒険を一通り確認しているまもりも、特にあの『野生児と獣の王』の構図は鮮明に覚えている。
野生児メイの名前を一躍有名にした、王都をかけた戦い。
CMとして初めて使われ大人気を博した、野生児と獣の王の和解の図だ。
「探しに行くなら、王都ロマリアね!」
「あの広大な地下になら、ゼティアの門が隠されていてもおかしくありません!」
「おおおおーっ! 確かにそうかも! まだ行ってない場所もありそうだしっ!」
「こ、こういう流れはワクワクしますね……っ!」
現在発見されている遺跡や、新たな遺跡ではなく王都。
独自の流れから思い至った『第三の門』の在処、確信はないが思わず興奮してくる。
「それじゃあ、さっそく行ってみる?」
「いいと思いますっ!」
「そうしましょう」
「はひっ」
四人はすぐにポータルを使って、王都ロマリアへ。
「わあーっ、久しぶりだね!」
そこはメイとクエスト参加プレイヤーたち、そして獣の王の一団が戦った王都。
半壊し、植物に飲まれた姿はすでに『原状復帰』によって元に戻っている。
ヨーロッパの首都を思わせる星屑最大級の城下町は、その作りも美しい。
「変わらず賑わっていますね」
「き、緊張してしまいます……っ」
人通りの多い、賑やかな大通りに踏み込む。
もちろんこのロマリアでも、王城の前という絶好の場所で、世界維持機構のクエスト宣言がなされた。
酒場には『第三の門を見つけ、帝国残党の野望を止める』というクエスト票が貼られている。
そのため、いつも以上に盛り上がっているようだ。
「まだ情報はないけど、どうすんの?」
「俺は待ちだな。誰かが行き先を発見したらすぐ駆けつける。でも、最後の門はどこにあるんだろうな」
「今回もレベルの足切りがないから、前の大型クエストみたいに皆にやることがありそうな感じなんだよね。楽しみだ」
街行くプレイヤーたちも、ワクワクしながら今後の動きに意識を向けているようだ。
メイたちはあらためて王都ロマリアを見て回るため、建物の上部へ。
その中でも、前回来た際にクエストを受けた大型アイテム店。
教会と並んで立つその店舗の、屋上に上がって街を見回す。
そこにはまさに、RPGの『首都』を思わせる石造りの町並みが続いている。
「一応前回使った、地下への道は覚えてるけど……」
「こういう時は、一緒に探してくれる皆の力を借りましょうっ! お近くの皆さんっ、よろしくお願いいたしまーすっ!」
メイが【呼び寄せの号令】を発動して両手を振ると、たくさんの鳥たちが集まってくる。
さらに猫や犬、リスやネズミといった小動物たちもやって来た。
そして従魔ギルドがある影響か、肩乗りサイズの飛竜やニワトリのような姿をしたコカトリスもいる。
たくさんの動物たちが、あっという間に大型アイテム店の屋上に集結した。
「何度見ても……」
「壮観ですね」
「ね、猫ちゃん、可愛いですっ」
「王都地下へと続く、新しい道を探しておりますっ! よろしければ力を貸してくださいっ!」
メイが言うと、一斉に動き出す動物たち。
すると早くも、一羽の鳥が何かを伝えにやって来た。
「何か見つけたみたい!」
「いってましょうか!」
「はいっ!」
「はひっ!」
笑い合い、走り出す四人。
さっそく、メイたちのワールドクエストが動き出したようだ。
ご感想いただきました! ありがとうございます!
返信はご感想欄にてっ!
お読みいただきありがとうございました!
少しでも「いいね」と思っていただけましたら。
【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!




