957.動き出すワールドクエスト
「でもこのクエスト、一体どこに向かえばいいんだ!?」
「失われた三つ目のゼティアの門か……」
「天空と海底の遺跡は、ラプラタで起動した『古代ポータル』を使えばすぐ行けるはず。何かヒントがあったりするのかも!」
さっそく盛り上がる参加者たち。
世界中の都市で行われた、『世界維持機構』によるクエスト発注。
それは大型のイベントクエストに酷似しており、どうやら大勢が参加できる形のようだ。
「今遺跡にいるプレイヤーの話だと、特に変化はないみたい」
「そうなると、古代ポータルが何かヒントになるかもしれないな……」
「とにかく怪しいところを回ってみようぜ!」
「ラプラタとか何かあるんじゃないか?」
かつてない規模のクエストに、慌ただしく動き出すプレイヤーたち。
そしてこの状況は今、星屑の世界中で起こっている。
「歴史からも忘れられた、三つ目の門ね」
レンも行き先が明確でなくなったことに、悩むようにする。
「この広い世界から、見つけることができるでしょうか……」
「そ、想像もつきませんっ」
「でもこの急な展開の中で、これまで何の関係もなかった場所につながるかしら」
「何か『残してきたもの』という角度で、考えるのが良いのでしょうか」
これまでの冒険の中でまだ回り尽くしてない場所や、置きっぱなしにしている要素。
レンはその辺りに何かあるのではないかと、考える。
「よし! とにかく行ってみようぜ!」
「行け行け! 怪しいところはしらみつぶしだー!」
「「「おうっ!」」」
「超大型クエストに参戦だぁぁぁぁ!!」
「「「オオオオオオオオ――――ッ!!」」」
いまだなかった展開に、気合を入れて動き出すプレイヤーたち。
「何か見つけたら、鳩部隊を送りますねっ!」
「よろしくお願いしますっ」
その中から、メイたちに気づいた一団が声をかけてきた。
手を振って見送るメイを見て、周りのプレイヤーたちもそれに気づく。
「俺たちも、何か見つけ次第鳩を送るよ!」
「よろしくお願いいたしますっ!」
続けざまに走り出すプレイヤーたち。
「……鳩?」
「伝達部隊のことですね」
「なるほどーっ」
富士見稲荷だけでも千人以上が目撃し、動き始めた大型クエスト。
これが世界中各所で同時多発的に行われ、掲示板も大騒ぎ。
かつてない大きな物語の始まりに、星屑の世界が大きくわき立っていく。
◆
「む、メイたちがまた大きな展開に足を踏み入れたようだな」
「本当だね。私たちも応援に行こうよ」
「そいつはいいな。メイたちと一緒なら、間違いなく面白いことになるからな」
「ふん、世界を賭けたクエストなど生意気な! 知らん!」
「「…………」」
そっぽ向くグラムに、互いを見合うローランと金糸雀。
「今回はこの規模だし、メイちゃんたちの戦いにトップ勢は必要になってくると思うんだよね」
「そうだよな。そしてメイちゃんのピンチに助けに入れるプレイヤーがいるとすれば」
「「グラムくらいしかいないんじゃないかなぁ」」
「……ほう」
ローランと金糸雀、このワクワクのクエストに乗っかるために共謀。
「この世界クラスのクエストに、さっそうと現れるグラムは映えるだろうね」
「…………当然だな!」
神槍のグラム、すっかり二人に乗せられる。
「ゆくぞ! さらに強化された神槍のグラムの力を見せてやる! はっはっはっはっは!」
笑い出すグラムにローランと金糸雀は、片手でハイタッチを決めた。
◆
「ふむ、さすがメイだな! 世界を賭けたクエストにたどり着くとは!」
「……大変なことになってる」
「マリーカ、これはちょうど良いタイミングだぞ」
「……間違いない。ちょうどいい」
聖騎士アルトリッテは、聖剣エクスカリバーを手に笑う。
隣りに並んだ魔導士マリーカも、こくりとうなずいた。
「ならば行くぞ! 新たな我らをお披露目といこうではないかっ!」
気合と共に指輪を輝かせ、呼び出す白馬。
「それっ! ぐはあっ!」
そのまま飛び乗ろうとして、はねられたアルトリッテはゴロゴロと転がった。
「……いつものこと」
「いつもではなーいっ!」
気を取り直して、しっかりと再騎乗。
「ゆくぞマリーカ!」
「……楽しみ」
アルトリッテたちは白馬を駆り、草原を走り出した。
◆
「ほう、さすがは闇の超越を目指す者。ついに世界の深淵の一つにたどり着いたか」
「――レクイエム。ここは我らも動くべきかと」
「そのつもりだ。世界の行く末は、我らにとっても大きな問題だからな」
黒神リズ・レクイエムがそう言うと、突然聞こえ始めた慌ただしい足音。
「――最近また増えた使徒加入希望者たちですね。ここがバレるのも時間の問題かと」
「よし、行くぞ」
レクイエムと共に、動き出す鳴花雨涙。
使徒加入希望者たちの前に立ち、宣言する。
「我らは世界の終焉を確かめに行く。全てはその後だ」
そして転移アイテムを使い、近くのポータルへ。
「あら、これは偶然ですわね」
そこで出会ったのは、九条院白夜と光の使徒たち。
「光の者か。行く先は、忘れられた『第三の門』だな」
「当然ですわ。世界を危機に陥らせる者たちの野望など、わたくしたちが見逃すはずがありません」
「この状況、当然『暗夜教団』もやってくるだろう」
「――賑やかになりそうですね」
絶妙な距離感と緊張感を保ったまま、歩き出す使徒たちの口元には笑み。
この事態に気づいたトッププレイヤーたちが、続々と動き出す。
メイたちが動かしたワールドクエストは、かつてないほど大きな展開になりそうだ。
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