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945.冥界降臨の狙い

「……あの集団は何ぽよ?」

「使徒長ちゃんが見やすい場所で戦ってると聞いて、闇の感じを忘れて全力ダッシュをかましてきた使徒候補生の一団だな」

「フッ、使徒を名乗るには冷徹さが足りないな」

「迷子ちゃんを抱えて運んでる君が、それ言う?」


 町外れの小高い丘にある神社。

 集まって来た、たくさんの観戦者たち。

 ワクワクしながら、メイたちの戦いに視線を向ける。


「……ぬし、何を考えておる」


 たまちゃんが問いかける。

 武御雷を打倒され、追い込まれた藤原真非等。

 しかし事ここに至っても、まだその余裕は崩れない。


「二度の冥界降臨と召喚を経て、ようやく『感覚』がつかめました。これならより深い冥界への接続、召喚も可能でしょう」

「力だけで、帝の座が奪えるものか……! いくら力を持ったとて、誰も貴様を認めたりはしない!」


 猛長親王は、怒りと共に告げる。


「帝になるのなら、公家たちに認められなければならないという事ですね?」

「その通り。武力だけでどうにかなるものでないからこそ、明光天皇が存在するんだ」

「そういうことよ」


 続く冷泉と桔梗。

 しかしそれでも、真非等の態度は変わらない。


「確かに明光を呪い殺し、武力で反対者を押しのけたところで、帝に相応しいと言われることはないでしょう。ですが……」

「ですが……なんじゃ?」

「三種の神器の一つ、【天叢雲剣】を手にしたとしたら?」

「【天叢雲剣】? 一体何を言って……」


 真非等の言葉に、困惑する皇位継承者たち。

 そんな中、たまちゃんだけが「まさか」と息を飲む。


「冥界から召喚するのですよ……【天叢雲剣】と共に沈んだ暗徳天皇をね」

「なんだとっ!?」


 その言葉に、猛長親王は愕然とする。


「ヤマトの帝となるには『三種の神器』を奉納する神事が必要です。ですがそれは神器の封印を解き、あらためて封じ直すという形ばかりの奉納を行うのみ。子供でもできます。ですが、失われた【天叢雲剣】を取り戻してきた者が現れたら、どうなるでしょうかねぇ?」


 三人の継承者たちは、言葉を続けられない。


「【天叢雲剣】を抱いたまま海に沈んだ暗徳天皇を現世に呼び戻せば、失われた神器が手に入る……! これ以上の神事が歴史上ありましたか!? いいえ、ありません!」

「冥界と現世をつなぐ儀式は、そのためのものだったのね……これは驚いたわ」

「大嶽丸さんたちを呼び戻していたのは、その予行だったのですか」

「帝の『武力』の証たる【天叢雲剣】を手に御所へ戻り、そのまま公家たちの前で、明光を処刑してあげましょう。そうすればもう、誰も僕の即位に反対することなどできません」

「ふ、ふざけるな……っ! そのような真似、認めるものか!」


 再び立ち上がる皇位継承者たち。

 しかし真非等は息をつき、片手を上げる。


「新たな御代の始まりにふさわしい最高の神事。邪魔をさせないよう頼みますよ」


 するとそこに現れたのは、黒づくめのアサシンたち。

 すぐさま立ちはだかるように立ち、武器を構える。


「アサシンたち、ここで出てくるの!?」

「ええっ!? どうしてーっ!?」

「これは驚きました……」

「約束通り、今回はしっかり冥界と現世の行き来ができるほど濃い『降臨』になっています。貴方たちが何を求めて僕に『力の宝珠』をもたらしたのかは分かりませんが、感謝しますよ」


 そう言って真非等は、その手に妖しい輝きを見せる宝珠を取りだしてみせた。


「……なるほどね。本来以上の能力を発揮できる『宝珠』で、冥界からの召喚を行い暗徳天皇を呼び出す。その代わり、開いた冥界と現世の間に『鍵の青年』を隠そうって魂胆かしら」

「確かにその感覚はヤマトならではですね。ある意味別世界ですし、何かを隠すには最高の場所です」

「帝の座を狙う公家と、冥界に『鍵の青年』を隠したい組織。両者の利害が一致したというわけね」

「す、すごい話です……っ」

「おおーっ! それはびっくりしちゃうね!」


 驚くメイとまもり。


「ようやく月が頂上にきました。さあ、神事の続きを始めましょう」


 真非等がそう言うと、足元に大きな方陣が描かれる。

 京の裏鬼門に当たるこの場所。

 増幅された負の力によって輝く大きな魔法陣は、神々しさを感じるほどにまばゆい。

 呼び出されるのは、暗徳天皇。

 青白い光柱の中から現れたのは、まだ年端もいかない少年だ。

 その手には確かに、一本の刀が握られている。


「ようやく会えました」


 真非等は進み、暗徳の前へ。


「新たな帝誕生へ向けて、神器の受け渡しが始まります。記念すべき瞬間を、とくとご覧ください!」


 暗徳はそっと【天叢雲剣】を握る。

 真非等は片ヒザを突き、うやうやしく手を伸ばす。

 そして真非等がその手に【天叢雲剣】をつかんだ、その瞬間。


「なっ……!?」


【天叢雲剣】が、真非等を斬り裂いていた。


「――――我が剣はもう、誰にも奪わせぬ」


 聞こえてきた声と共に、暗徳はその姿を大きく変えていく。

 巨大化する身体、生える濃緑色の鱗。

 どこまでも伸びる、長い長い尾。

 暗徳天皇は、巨大な八首の化物へと変貌した。


「八つの頭部を持った蛇龍の化物……神器となる前の【天叢雲剣】を、その体内に宿していたという八岐大蛇か! どうやら海に沈んだ古き天皇というのは、剣を取り戻しに来た八岐大蛇の転生体だったようじゃの!」

「よくぞ我を冥界から呼び戻した。今度こそヤマトの人間どもを、喰らい尽くしてくれる!」


 身体が震えるほどの咆哮をあげる、八岐大蛇。

 丘が踏みつぶされ、神社が崩れ落ちてる。

 すぐさま退がるアサシンたち。

 たまちゃんは慌てて、親王たちを避難させる。


「そ、それにしても……少し大きすぎませんか?」

「すごーい……」

「び、びっくりしました」

「これまでで最大の大きさかもしれないわ……このボス」


 京の町に現れた八岐大蛇。

 その長い八本の首は、見渡すこともできないほどの大きさだった。

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