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940.首謀者を探せ!

「助かったぞ、礼を言う」


 危機を切り抜けた明光天皇は、いつもの凛々しい目でメイたちにそう言った。

 やはり京に起きている危機は、この少女に関わっているようだ。


「だが、首謀者はまだ隠れておるぞ」

「あの陰陽師は、術式から見て蘆屋の者でしょうな。あれだけの実力者を雇えるとなれば、公家で間違いありませんぞ」


 明光を狙った陰陽師の退散には成功。

 しかしその背後にはまだ、雇い主が控えている。


「体調もすっかり回復した。あらためて荒涼殿におもむき、職務への復帰を伝えておこうと思う」


 どうやら明光は、公家たちのもとにあらためて無事を伝えに行くようだ。


「汝らにもついて来てほしい。蘆屋を退散させるほどの腕前の者たちがいてくれれば、安心だ」

「それじゃ、犯人探しといきましょうか」

「はいっ」


 メイたちは、荒涼殿に向かう明光の後に続く。

 するとそこには、数人の公家がやって来ていた。


「明光様、すっかり体調が良くなられたようですね!」


 駆け寄ってきたのは、30歳ほどの公家。

 癖のある茶色い髪をした、穏やかな雰囲気の青年だ。


「藤原か。この度は手間をかけたな」

「いいえ、そのようなことはありません」


 安堵の息をつく青年。

 それを見て付近の公家たちも口々に「ご無事で何より」と、回復を喜ぶ。


「真非等、そこを退け」

「っ! 申し訳ございません……っ!」


 そこにやって来たのは、たてがみのような髪に屈強な体格をした男。

 青年を強引に押しのけ、明光のもとへ進む。


「ご無事で何よりです。今後はぜひ我が剣を頼ってください。全ての怪異を斬り捨ててみせましょう」

「ふむ、頼もしい限りだ。いざという時は頼むぞ――」

「天皇家の血を引く者として、命に代えても」


 強い笑みからも、感じられる自信。

 その圧にわずかに押されるように、明光が応える。


「兄上、明光様が気圧されておられます」


 そう言って明光と猛長親王の間に割って入ったのは、長い黒髪をしたクールな面持ちの男。

 猛長親王の弟、冷泉だ。


「とはいえ、貴方様に何かあれば一大事。問題があればすぐにでも、我らにご用命を」

「あ、ああ」

「フフフ。そのように兄弟でにらみ合っていては、明光様を困らせてしまいますよ」


 そんな二人から、馴れ馴れしく明光を引き離したのは、糸のように細い目をした妖しい女性。


「明光様にはこれからも頑張っていただきたいのです。くれぐれも怪しい者には気を付けてくださいね」


 そう言って、貼り付けたような顔で明光にほほ笑みかける。


「ぜ、全員怪しい……!」

「誰が裏切り者でも、説得力があります」

「そーなの?」

「そ、そうですね」


 各ゲームで散々プレイヤーを裏切ってきた『裏切り顔』の三人に、思わず感嘆するレンたち。

 経験のないメイは、興味深そうにする。


「ここに集まった公家たちの中に、昨夜の襲撃の首謀がいるのは、おそらく間違いない」

「明光さんを亡き者にして、帝の座を狙っているのですね」

「そ、そう考えると、怖いです……っ」


 陰陽師を使って明光を討とうとした、首謀者。

 今、当たり前のように明光の快気を祝っていると考えると、なかなかドキドキする状況だ。

 これにはメイも、尻尾をブルブルさせている。

 一通り挨拶を終えた明光は、荒涼殿を出る。

 メイたちも、その後に続く。


「まったく大きな苦難だ。早く乗り越えたいものだな。そしてまたカルタと温泉を楽しみたい」

「温泉好きなんだねっ」

「アカリと称してお忍びで嵐山郷へ行く。そして村田麻呂とカルタで遊ぶ。それが……唯一の楽しみなんだ」


 そう言って、わずかに年相応の表情を見せる明光。


「それでどうじゃ? 何か怪しい言動を見せる者はいたかの?」

「いや、いたって通常通りだ」


 たまちゃんが問いかけるも、明光はすげなく首を振る。


「狙いが帝の座であれば私を討つのが一番早いが、私を討ったとて『誰がなる』かで荒れるだろう。各親王の背後にいる者たちにしてみても、『皇家』の本流になりたいと願っているはずだ。どんな争いが始まってもおかしくない」

「ということは、よほど明光亡き後の戦いに自信があるのかの? もしくは少なくとも帝になる『ちゃんす』くらいは回ってくると考えておるのか……」

「一番有利な立場、『権利』みたいなものを持っているのは誰なの?」

「猛長親王だ。彼が一番我が血統に近く、年長だからな」

「それだと、基本的にはその人がそのままなりそうだけど」

「その通りだ。もし唯一、その正当な『権利の流れ』を覆すことができるとすれば――」

「すれば?」

「三種の神器の入手という手がある」

「三種の神器……!」


 思わぬ言葉に、レンは目を見開く。


「『八咫鏡』と『八尺瓊勾玉』はすでに奉納され、封がかけられている。奪い出すことなど不可能だ。だが失われた『天叢雲剣』を持ってきたとなれば、話は変わってくるだろう」

「『天叢雲剣』は、京にないのね」

「その通りだ。神器を持つということが『皇』たる証。失われて100年にもなろうという『皇の証』である『天叢雲剣』を持ち返ってきたとなれば、それだけでも継承の正当性は大きく増す。『受け継いだだけ』の私が斃れれば、いや、斃れなくとも「その者を帝に」という声が出てくるだろう」

「これぞヤマトの、京の物語って感じね」


 大きくうなずくレン。


「だが、やはりそれはありえない話だ。何代も前の御代になる。敵公家に命を狙われた若き天皇は、三種の神器と共に京から逃げ出した。そして追手から逃亡する最中に、『天叢雲剣』を手にしたまま海に落ちてしまった。その時、天皇の命と共に失われてしまったのだ」

「そうなるとやはり、猛長親王が本命でしょうか」


 やはり明光の生死がそのまま立場に関わる、猛長親王に注意が向いたその時。

 二頭の狐が駆け込んできた。

 どうやらたまちゃんの『狐ねっとわーく』が、情報を持ってきてくれたようだ。


「今夜も動くというのか……?」

「何があったの?」

「どうやら京の町で再び怪しい動きがあるようじゃ。ヤマトの者ではない黒づくめの者の姿も見られたとのこと……一体誰が何をしようとしているのじゃ?」

「きょ、京の者ではない黒づくめって……もしかして」

「アサシン組織と、公家や明光襲撃の流れがつながるの……?」


 もたらされた意外な情報。

 予期せぬ展開に、レンたちは驚くのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] とむすんくすさんの紹介するポケモンのファンアートはどれもクオリティが高くて、説得力があるから凄いんですよね、鎧や武器になったのは元のポケモンが分かるほど凄かったです。
[一言] 論理クイズは大正確ですね、前にもやったから早かっですね 模範解答と模範解法は 正解 犯人はB 内訳: Aは「いつも嘘つき」の幼女 Bは「正義の嘘つき」の幼女 解説 「正直者と嘘つき」…
[一言] 黒づくめだけだとアサシンたちか帝国連中かハッキリしないんじゃないかな? プレイヤーの使徒組や教団も有るし(笑) レクイエム「来たぞ」 ルナティック「来たよ」 レンちゃん「…………………
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