94.帰ってきました
サン・ルルタンの冒険を終えた三人は、今日も港町ラフテリアで待ち合わせをしていた。
「なんだかこの港町にも慣れてきたわね。帰ってくるとちょっと落ち着くわ」
装備品も通常のものに戻り、もうすっかりいつも通りだ。
「私も早く来がちだけど……ツバメは本当に早いわねぇ」
待ち合わせ場所から少し離れたところにいる、ツバメを発見。
ツバメは手にしたばかりの短剣【グランブルー】を、うれしそうにじっと見つめている。
おもむろに立ち上がると、斬り上げ、振り下ろしからの回転斬り。
水しぶき舞う中をジャンプ。
大きな斬り下ろしへと続けて最後は――。
「【アクアエッジ】」
剣筋を追うように生まれる水の刃を放つ。
一通り演武を終えたツバメは、満足そうに息をつき――。
「はうッ!?」
ジッと自分を見つめていたレンに気づいて、ビクッと身体を震わせた。
その顔を羞恥で赤く染める。
「別におかしくないわよ。武器の素振りをしてたんでしょう?」
青の宝石飾りが綺麗な【グランブルー】は、見た目にもかっこいい。
ついつい手に取って振り回したくなるのも分かるというものだ。
「……で、ですが」
「大丈夫。自作の決め台詞を言いながらやってないだけ、全然健全よ」
白目をむきながら、ツバメの肩をそっと叩くレン。
「レンちゃーん! ツバメちゃーん!」
するとそこに、メイがやって来た。
二人を見つけてうれしそうに駆けてくる。
「メイ、新しい広報誌の表紙見た?」
「表紙? 見てないよー?」
首と尻尾を傾げるメイに、レンは広報誌を差し出す。
「ま、また表紙になってるー!?」
そこには、ウミガメとコミュニケーションを取るメイの姿。
「…………でも、ちょっといい写真だね」
動物は友だち。
少し野性的な一瞬ではあるが、レンとツバメも一緒に写ってる。
その画は、とても楽しそうだ。
「まともに友達と一緒に写れている写真は、初めてです」
「どういうこと?」
「いつも見切れているか、そもそも画角に入れていないので」
「それは筋金入りね……」
ツバメにありがちなのは、まだ自分が来ていない事を気づかれずに撮られてしまう集合写真。
そして一番多いのは、踏み台がないのに後列になり、背の低さゆえに何も写っていないパターンだ。
「なので、リアルでの保存用に百冊買っておきます」
相変わらずの無表情も、うれしいのか明らかに緩んでいた。
「この表紙、評判いいみたいよ」
「えへへ、みんな一緒なのが好評だとうれしいね」
「ちなみにこれは、その一つ前の号」
「こっちは野生だー!」
ジャングルから戻ってきた直後の表紙『野生児・凱旋』に、メイは頭を抱える。
「さて、ルルタンの旅も終わったし、ここで一度ステータスの確認でもしておきましょうか」
こうして一段落つけたところで、レンがステータスを開示する。
「クラーケン狩りでもらったスキルブックは、私が使ってもいい? 【誘導弾】って魔法のスキルなのよ」
「もちろん」
「異存はありません」
【名前:メイ】
【クラス:野生児】
Lv:203
HP:14990/14990
MP:346/346
腕力:691(+32)
耐久:525(+50)
敏捷:440(+30)
技量:404(+20)
知力:10
幸運:10
武器:【王蜥蜴の剣】攻撃32
防具:【白花の鎧】耐久30 腕力15
:【白花のブーツ】耐久20 敏捷10
装飾:【猫耳・尻尾】敏捷20 技量20(【鹿角・尻尾】)
:【召喚の指輪Ⅱ】
スキル:【ソードバッシュ】【投石】【装備変更】
:【ラビットジャンプ】【バンビステップ】【モンキークライム】【四足歩行】【裸足の女神】【野生回帰】(【アクロバット】)(【突撃】)
:【アメンボステップ】【ドルフィンスイム】
:【遠視】【聴覚向上】【嗅覚向上】【夜目】【雄たけび】
:【自然の友達】【密林の巫女】
:【クマ召喚】【クジラ召喚】
【名前:聖城レン・ナイトメア】
【クラス:魔導師】
Lv:63
HP:2120/2120
MP:718/718
腕力:10(+8)
耐久:10(+66)
敏捷:111(+12)
技量:103(+15)
知力:416(+30)
幸運:10(+1)
武器:【銀閃の杖】攻撃8 知力15(【ワンド・オブ・ダークシャーマン】)
防具:【夜空の冠】防御5 知力10
:【夜空の黒衣】防御30 知力5
:【夜空のブーツ】防御15 敏捷12
装飾:【銀の腕】防御15 技量15
:【真っ赤なリボン】防御1 幸運1
スキル:【スタッフストライク】【吸魔】【浮遊】
:【ファイアボルト】【フリーズボルト】【ファイアウォール】【ブリザード】
:【フレアアロー】【フレアストライク】【フリーズストライク】【フレアバースト】【フリーズブラスト】
:【魔眼開放】【連続魔法Ⅲ】【魔力剣】【魔砲術】【コンセントレイトⅠ】【誘導弾】
:【クイックキャストⅠ】【クールタイム減少Ⅰ】【MP向上】
【名前:ツバメ】
【クラス:アサシン】
Lv:49
HP:2905/2905
MP:98/98
腕力:114(+49)(+45)
耐久:10(+48)
敏捷:293(+38)
技量:73(+10)
知力:10
幸運:10
武器:【グランブルー】攻撃50
:【ダインシュテル】攻撃45
防具:【ミスリルベスト】防御15 敏捷5
:【紺碧のローブ】防御16 敏捷18
:【疾風のブーツ】防御12 敏捷15
装飾:【シルクグローブ】防御5 技量10
スキル:【加速】【跳躍】【隠密】(【スティール】)
:【スラッシュ】【投擲】【電光石火】【アサシンピアス】【紫電】【ヴェノム・エンチャント】
:【二刀流】【ダブルアタック】
:【アクアエッジ】
「レ、レベル203ですか……」
「ついに……200を超えたのね」
トッププレイヤーたちが、ようやく100に届こうかという話で盛り上がる中。
なぜか運営が上限を250にしたのは、完全にメイのためだ。
そしてその事実を知るプレイヤーは、レンとツバメのみ。
まだまだ情報に疎いメイ本人は、その事実に気づいてもいない。
「一応【腕力】中心に上げてみましたっ」
「いいじゃない。何と言ってもメイの攻撃力は私たちの戦闘の要だもの」
「私は【知力】でツバメは【敏捷】中心。しばらくはこれで問題ないでしょうね」
「レンちゃん、今日は何するのっ?」
尻尾をブンブンさせながら、目を輝かせるメイ。
早くも、次の冒険にワクワクが止まらない。
「近々割と大きなイベントがあるんだけど、参加不参加は別にして一度遊びに行ってみるっていうのはどう?」
「なるほど、イベント前の雰囲気を見て回るというのも面白そうです」
「大きなイベントかぁ……楽しそうだねぇ」
「一年に一度定期的に行われる、街を丸ごと使った大戦イベントです」
「すごーい! 場所はどこなのっ!?」
「古い日本風の景観が続く街――――『ヤマト』よ」
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