930.夕食パーティです!
「うわーっ! すごーい!」
メイが歓喜の声を上げる。
テーブルには、たくさんの料理が並んでいた。
お誕生日会のような飾り付けがされたダイニングで、夕食の時間が始まる。
まもり姉が勢いに任せて持ち出したクリスマスツリーが、ピカピカしているのがとても愉快だ。
「お、思っていた以上に豪華です……っ」
「今日は誕生日より、お正月よりめでたい日なんだから当然でしょう!」
「そうそう! まもりが友達を連れてくるなんてびっくりしたよ! 駅で見た時は絶対にカツアゲだと思ったもん!」
早くも興奮気味な母と姉。
「はい、さつきちゃんにもパーティーサングラス」
「ありがとうございますっ!」
「いいねーっ! 似合うじゃん!」
「えへへ」
友達のような距離感を取る姉に、ビクビクするまもり。
そしてさつき、似合う。
「あれ、でも今日って仕事があるって言ってなかった? さつきちゃんたちはその関係の友達なの?」
「ていうか、仕事って具体的には何をしてんの?」
不思議そうにしている母と姉。
「ええと、そう言えば前の動画がウェブCMに使われてたわね……これがその動画です」
可憐はそう言って、手元のスマホを見せる。
「……ま、まもりだ!」
「本当だ……!」
広告動画に出ている妹を見て、娘を見て驚く母娘。
「まもりが、CMに!?」
「すごっ!! 【星屑】ってよく大きな広告とかが出てるゲームだよ……! 駅地下の壁全面使ってるヤツ見たことあるし!」
そう言って、画像検索を始めるまもり姉。
「ほらこれがその広告って……さつきちゃんたちじゃん!」
その検索で出てきた広告がさつきたちで、さらに驚く。
「前にまもりが「こんなすごいことが私に起きるはずない……」って言いながらビクビクしたけど、こういうことだったんだ!」
カフェのお客さんからパーティメンバーになり、広報誌にまで載り始めた頃、まもりは「詐欺にかかっているのでは」と思っていた。
その後は「メイさんのファンから刺されるのでは……」と、物音一つに驚いていた。
そんな姿を見ていた姉、ようやく挙動不審の理由を理解する。
「でも、どうしてまもりがそんなことに……?」
まもり母は不思議そうにする。
「まもりさんには、度々助けていただいております。そのプレイレベルの高さに、注目が集まった感じでしょうか」
「まもりちゃん、すごいんですっ!」
「い、いえいえそんな……っ」
さつきたちの返答に、思わず謙遜してしまうまもり。
「そういうことだったのね。最近のまもり、楽しそうだったものねぇ……どうかしてるくらい」
「この前なんて、まもりがスキップしながら帰ってきたのを見て、眼科に行こうかと思ったもんね!」
「み、見られてたの……っ!?」
ウキウキスキップを見られて、赤面するまもり。
新発売のお菓子を買って帰宅。
食べて準備して、飲食システムが本格化した星屑を開始。
そこにはメイたちがいる。
この流れはまもりにとって、至福以外の何物でもない。
「それまでは、ただただ静かに食べてゲームしての生活を繰り返してる感じだったのに」
「本当に良かったねぇ」
深々とうなずく母と姉。
「ま、まさか合宿に参加させていただけるなんて……そろそろ、私を恨む組織に刺されるんだと思います……」
「合宿しただけで刺されるのは、釣り合い悪くない……?」
「げ、現実でも、盾を持ち歩く必要があるのかもしれません……っ」
「完全防御を現実で成功させる姿は、ちょっとだけ見てみたいです」
私服に盾を持って出歩くまもりを想像して、可憐とつばめは笑ってしまう。
「って、まもりもう結構食べてるわね! 私たちもいただきましょう!」
「りょうかいですっ」
「いただきます」
「それじゃーあらためて! まもりに友だちができたことに乾杯!」
「乾杯!」
なぜか飲み物にシャンメリーを用意していた、母と姉。
景気づけに蓋をポンポン飛ばす。
「おおーっ!」
こうして賑やかな夕食は、いつまでも続くのだった。
◆
「お腹いっぱいだねぇ」
「はい」
賑やかな夕食を終え、部屋に戻ってきた四人。
さつきとつばめはベッドの側面に背中を預け、並んで座る。
ちょっと眠たくなってきたさつきは、そのままつばめの肩に頭を乗せた。
「ッ!?」
「それじゃあ一息ついたら、今夜は軽く京歩きでもしてみる?」
「う、動けません……っ!」
つばめ、さつきの寄りかかりで動けない。動きたくない。
「……うぇへへ」
一方まもりも、覚悟を決めて奮発した母と姉に負けじと食べ続けて満腹。
満足そうな笑顔で、ベッドにゴロゴロしている。
「まずは一息つくのが先ね」
「……レ、レンさん」
「ん?」
「街歩きではもう少し、京のスイーツを探してみたいです」
「その状態で、まだいく気なの!?」
「デ、デザートは別腹というやつでしょうか……」
四人とも完全な満腹状態。
それでもすでに、新たな食を求めてキラキラ輝く目。
とにかく楽しそうなまもりに、苦笑いするしかない可憐だった。
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