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927.2度目の鬼退治

「死ねェェェェ!!」


 人質作戦を見破られた女鬼、茨木童子。

 一見すれば美しい、長い亜麻色の髪を振り乱しながら、レン目がけて突進する。

 初撃は轟音を響かせる、剛腕の振り降ろし。


「あっぶな!」


 これをレンがスレスレで回避すると、茨木童子は即座にその姿を巨大な白虎に【変化】

【飛び掛かり】でレンを襲う。


「っ!」


 大慌てでその場に伏せると、白虎はそのまま頭上を通り過ぎていった。

 振り返った茨木童子はまたも【変化】して、その身体をヌエに変え一回転。

 レンは飛び下がって、どうにか蛇尾の払いを回避するが、そのまま尻もちを突く。


「さすがに変化ごとに攻撃方法、範囲、速度まで違うのは厳しいわね……っ!」


 茨木童子はヌエ姿のまま跳躍。

 その豪腕で、切り裂く一撃を放つ。

 尻もち状態のレンには、この一撃を避ける余裕はない。


「【裸足の女神】っ!」


 しかし茨木童子の攻撃は、一瞬でレンを抱えて駆け抜けたメイによってかわされる。


「間に合った!」

「あ、ありがと……」


 笑顔を見せるメイに、お姫様抱っこ状態のレンは恥ずかしそうに視線をそらす。

 しかし突然『持ち場』を離れたメイを、酒吞童子は見逃さない。


「【縮地】」


 即座に距離を詰め、振り下ろす真空刃での攻撃に入るが――。


「【電光石火】!」


 もちろんこの流れを予測していたツバメが、酒吞童子の攻撃をキャンセルさせた。

 レンの危機をメイが助け、生まれた隙間をツバメが埋める。

 見事な戦闘のコンビネーションだ。


「【縮地】」


 酒吞童子はターゲットをツバメに変更。

 一瞬で距離を詰め、刀を振り下ろす。


「【加速】【反転】【投擲】!」


 一方ツバメはこれを斜め前に出ることで真空刃に対応しつつ回避。

 すぐさま【雷ブレード】を投じて、隙を作りにいく。

 しかし酒吞童子もこれをかわし、速い移動でツバメのもとへ。

 大きな振り上げ。

 生まれる真空刃を横移動で避け、反撃に入るが――。


「ッ!!」


 攻撃は二段階。

 目前に出てきたひょうたんから噴き出した酒に、火が灯り大きく燃え上がる。


「っ!!」


 近距離で放たれるこのスキルは、相手の虚を突き動きを止める、ツバメの【紫電】と同じ効果を持つ。

 生まれる危機。


「【怨嗟斬り】!」


 紫黒のオーラを宿した刀が、振り下ろされる。


「【かばう】【地壁の盾】!」


 しかしこれを、飛び込んできたまもりが防御。


「【三日月】!」


 弾かれた酒吞童子の前にあらためて踏み込んだツバメは、【村雨】で斬り下ろしを叩き込む。


「チッ! 【呪怨斬り】!」

「【地壁の盾】!」


 すると再びツバメの前に出たまもりが、迫る紫黒の反撃を受け止める。


「【旋空】!」


 さらにツバメがまもりを追い抜き、放つ回転斬りが決まった。


「【喰い千切り】!」


 反撃は、凝縮した妖気が生み出した三つの鬼顔が迫る恐怖の一撃。


「【クイックガード】【天雲の盾】盾盾っ!」


 しかしこれも、まもりは右左右と二枚の盾を使ってしっかり防御。


「まだまだァ! 【悪鬼微塵斬り】だァァァァ!!」


 続く一撃は、12本の弧型の斬撃が高速で迫る必殺スキル。


「盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾ーっ!」


 それでもまもりは容赦なく、その全てを弾き返す。そして。


「【アサシンピアス】」


 その時すでにツバメは、【スライディング】で酒吞童子の背を取っていた。

 刺さる一撃が『人型』の弱点を貫き、酒吞童子が倒れる。

 ツバメが攻め、まもりが守る。

 交互の連携で見事な勝利。

 控えめな二人のハイタッチは、どこかほほ笑ましいものになった。


「【変化】!」


 一方茨木童子は、得意の変化で攻撃を仕掛ける。

 大型のサルである『狒々』に化けると、猛烈な飛び掛かりでひっかきを繰り出す。

 三連続の高速飛び掛かり爪攻撃は、意外にもエフェクトが大きい。


「右、右、左っ」


 これをメイは華麗なステップでかわし、飛び掛かりをしゃがんでやり過ごす。


「【変化】!」


 振り返ると、茨木童子はその姿を弁慶に変身。

 手にした薙刀を大きく三回転。


「【アクロバット】【アクロバット】【アクロバット】!」


 メイも負けじと三連続のバク転でこれをかわす。


「【変化】【変化】【変化】っ!」


 まだまだ茨木童子は止まらない。

 ムカデになっての飛び掛かりをメイがかわすと、そのまま高さ2メートルほどの蟹になる。


「うわわわわっ!」


 ハサミによる二連突き。

 急な変化に驚きながら、これも慌てて左右のステップでかわす。


「…………あれ?」


 視線を戻すと、化物は消えていた。

 目の前にあるのはただ、巨大な壁。

 意味不明の状況に、メイは首を傾げる。


「もしかしてそれ……ぬりかべ!?」


 三つ目はまさかの怪異。

 そのまま倒れ込んでくる重厚な石壁に、メイとレンは互いを見合った後、大慌てで下がって難を逃れる。

 姿を変えることに攻撃法が違うのは、やはりやっかいだ。


「【変化】!」

「え、ええええええええ――――っ!?」

「これは……っ!」


 さらに茨木童子は変化する。

 現れたのは、ぬりかべのさらに数倍はあろうかという巨大な狐。

 その尾は九本。

 放つ飛び掛かり飛び掛かりからの放つ、前腕の叩きつけ。

 しかしそれは通常の獣型の跳躍ではなく、【飛行】によって『飛行機の着陸時』のような軌道になっている。


「【裸足の女神】っ!」


 メイは慌ててレンの手を引き、二人そろって転がり出る。

 慌ただしい状況だが、巨大な九尾の前腕叩きつけをギリギリで回避。

 ひび割れた地面から上がる青い炎に、安堵の息をつく二人。


「ありがとうメイ! ところでこの【変化】ってスキル……今使ったら面白くなりそうじゃない?」

「そっか! そうだねっ!」


 レンの言葉を把握したメイは、すぐさま肩に使い魔を召喚。


「いーちゃんっ! 【いたちごっこ】!」


 肩から飛び出したいーちゃんは、新スキル【いたちごっこ】を発動。

 茨木童子の【変化】をマネして、姿を変える。


「おおおおおおおお――――っ!」

「いいじゃない! 迫力抜群ね!」

「いけいけ、いーちゃん!」


 メイが茨木童子を指さすと、現れたいーちゃん九尾はそのまま突進。

 巨大な前足を、今まさに鬼の姿に戻ったばかりの茨木童子に叩きつける。

 すると地面から吹き上がった青い炎が、続けて炸裂。


「おおーっ! いーちゃんないすーっ!」


 舞い散る青い火の粉に、思わずいーちゃんを抱きしめるメイ。

 強烈な一撃で弾き飛ばされたところにレンが、【低空高速飛行】で飛び込んでいく。


「【いたちごっこ】も、かなり面白いスキルになりそうね! はあっ!」


 そしてそのまま【フリーズブラスト】を込めた、【魔剣の御柄】で斬りつけた。


「――――解放」


 突き刺した氷の魔法剣が、氷嵐となって吹き抜ける。

 その一撃で、茨木童子の片腕が飛んだ。

 こうして、身体の一部を凍結させながら転がった茨木童子のHPゲージもゼロ。

 その場にヒザを突く。


「忌々しいヤツらめ……!」


 悔しそうにする酒呑童子。


「だが、鬼神魔王の復活には間に合ったようだな。黄泉にて待っているぞ、貴様らでは……奴にはかなわない」


 そう言い残して、粒子になって消えた。

 一方腕を斬り飛ばされた茨木童子も、黒い煙になって消えていく。


「きじんまおうって、なにかな?」

「三大悪鬼の一体を差してるんじゃないかしら。そう考えると、結構大きなクエストにつながってるみたいね」


 京の夜空に広がる不穏な雲に、レンはちょっとワクワクしながらつぶやく。


「……なるほどの」


 するとたまちゃんが、静かに夜空を見上げた。


「あの方向は土御門橋……かの場所も、この世とあの世をつなぐ特別な『境界』ですな」

「この空が曇っていく感じ、間違いないの――――大物じゃ」


 落ちたのは、京にいる者なら誰もが気付くほどの雷光。

 そして町に、恐ろしい悪鬼が蘇った。

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[気になる点] まだ【悪鬼微塵斬り】は様子見なんだ 今までの相手なら連続攻撃は【爆火盾】にしそうだが [一言] 「狐七化け、狸八化け、貂の九化け」っていうから普通にあとで【変化】は覚えそうなんだよなぁ…
[一言] 論理クイズは大正解ですね、模範解答と模範解法は。 正解 参加したのは11校 解説 まず最初に着目するのは幼女A。 彼女は、「参加者全員のちょうど真ん中の順位でゴール」しました。 とい…
[一言] コピーしたスキルストック出来るようになったらさらに強くなるかも。
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