924.冥界と鬼門と陰陽師
「こっちじゃ。ついてまいれ」
嵐山郷温泉でのクエストを乗り越えたメイたちは、狐娘たまちゃんの後に続いて京の町を進む。
すると赤いアーチ橋の上に、白の袴を身に着けた渋い男性NPCが待っていた。
「さいおう!」
たまちゃんが呼びかけると、男はゆっくりと振り返る。
そしてメイたちの姿を見て、どこか優雅に頭を下げた。
「私は葛葉紫扇、陰陽師ですぞ。そしてこちらが――」
よく見れば葛葉の足元には、一頭の柴犬がごろりと横たわっている。
「犬神ですな」
犬神はこちらをちらりと見て、「あ、どうも」的な感じでワンと鳴く。
「狐と葛葉は親交があっての。今回の異変について調査を任せておったのじゃ」
「こちらの犬神さんは、のんびり屋さんのようです」
「前回のブラック陰陽師とは、また関係性が違う感じね」
そのやる気のなさに、思わず笑うレンとツバメ。
それでもメイがなでると尻尾が揺れ出す辺り、意外と愛嬌はありそうだ。
「この者たちは、わらわが声をかけた冒険者たちじゃ。嵐山郷温泉では女将にも認められた豪傑じゃぞ」
「あの女将にも……! これは頼もしいですな」
「して、現状はどうなっておる?」
「それなのですが……なっ!?」
「……こ、これは!」
美しい満月が幽鬼のように青白く染まり、葛葉とたまちゃんは驚きの声を上げた。
「冥界が現世とつながったのか!? 一体誰が、なぜこのような事を!?」
「早くも北東、鬼門の方に強い怪異の気配がありますぞ!」
「感じていた異変は、この兆候じゃったか……」
「京の町と怪異、ちょっとワクワクするわね……!」
「うんうん、本当だねっ」
「……わん」
するとやる気なさげな犬神がひと鳴き、のそのそと歩き出した。
「さっそく怪異が京に入り込んできた模様ですな。急いで調伏に参りましょうぞ。冒険者殿、ぜひその力をお貸しください!」
「りょうかいですっ!」
のそのそ走り出した犬神と共に、四人は鬼門である北東を目指すことにした。
賑やかな京の町も、北東の橋の方へ向かえば自然と静かになっていく。
灯篭の数も減り、落ち着いた雰囲気を見せる街並み。
「っ!」
メイは突然、その場に急停止。
視線を上げると、そこには満月に照らされる一本の刀が浮いていた。
高速で飛来。
そのまま足の前に、深々と突き刺さった。
メイは刀の持ち主を探して付近を見回すが、人らしき者の姿はなし。
「気を付けるのじゃ! そいつは主を失った武器が、付喪神と化した状態じゃ!」
たまちゃんがそう叫んだ直後。
付喪神刀が暴れ出す。
そのまま地面を切り裂きメイに突進、大きな斬り上げを放つ。
「【アクロバット】!」
メイはこれをバク転で回避。
すると付喪神刀は、そのまま大きな払いで後を追う。
さらにメイがこれをしゃがんでかわすと、そのまま軌道を変更。
真上からの斬り下ろしを仕掛けてきた。
「【装備変更】! とっつげきー!」
しかしメイ、初見の敵でも当たり前のようにパリィを決める。
「「「ッ!?」」」
接敵4発目で決めたパリィには、さすがに驚く三人。
「こ、高速【誘導弾】【ファイアボルト】!」
それでも、すぐさまレンが追撃を入れる。
すると炎弾に弾かれた付喪神刀は、そのまま石畳を一度バウンドした。
「ゆくぞ!」
そこに駆け込んでいくのは葛葉。
バラまいた五枚の札が刃となり、付喪神刀を斬り飛ばす。
すると刀は、慌てて飛び下がっていく。
「まだまだっ!」
続けて放つ札が、さらに付喪神刀を弾いて飛ばす。
「頼もしい仲間がこれだけいれば、戦いにも余裕が生まれるというもの!」
葛葉は、トドメとばかりに札を取り出し笑う。
「わっはっは! さあトドメだ付喪神! 我らにかかれば恐れるものなど…………」
そして、ピタリとその足が止まる。
付喪神刀を追い詰めたところで見えたのは、夜空に浮かんでくる大量の武器。
刀に槍、薙刀に短刀、そして鎌。
付喪神武器たちの数、百はくだらない。
「恐れるものなど……あ、あんまりございませんな。うっはああああああ――――っ!!」
両手を上げて、逃げてくる葛葉。
次々にその足もとに突き刺さる武器たちに、「ひいいいっ!」と必死の形相を見せる。
そんな中、一歩前に出たのはレン。
「緊迫感があるんだかないんだか微妙な状況だけど、これ……使わせてもらおうかしら!」
そう言って【魔導経典】を手に取ると、しっかりと身体を敵に向けて半身の姿勢を取る。
右手一つでページを開き、左手で魔法名を指差し、妖しい笑みと共に敵へ視線を向ける。
開かれたページに載っている魔法が放たれるという、不思議なアイテム。
そこに書かれていたのは――。
「【ケラウノス】!」
まさかの上位上級魔法。
夜空を降る猛烈な白雷が、付喪神たちをまとめて一瞬で消し飛ばした。
「……すごいです。アイテムで使える魔法のレベルではありませんね」
「すっごーい! レンちゃんカッコいい!」
「は、はひっ。驚きました……」
バチバチと音を鳴らし、地面を駆けて行く余波に思わずメイたちが息を飲む。
満月の下、ローブを揺らしながら使えば雰囲気は完璧だ。
「一発目、大当たりね」
大きく数を減らした付喪神たちに、満足げにうなずくレン。
「でも、どうせなら【栞】が見つかってから出てきて欲しかったわね」
それが気に入った魔法なら、今後も一発でそのページを開けるようになる【栞】を思って、わずかに苦笑い。
こうしてメイたちは、怪異の打破に成功。
いつも通り、ハイタッチしながら勝利を喜び合っていると――。
「たまちゃん、あぶなーい!」
異変に気付いたメイが叫ぶ。
この隙を突くように飛んできた一本の大太刀が、たまちゃんの腹部に突き刺さった。
「「「「ッ!?」」」」
まさかの事態に、驚愕するメイたち。
しかし、たまちゃんは慌てない。
「……問題ない。それは幻覚じゃ」
そう言って、串刺したまちゃんの後ろから出てきた第二のたまちゃんが、右手で忍者のような『印』を作ると――。
幻覚たまちゃんが大きく燃え上がり、巻き起こった青い炎によって、大太刀は焼かれて消えた。
「無事でよかったです」
「す、すごい能力でした……」
ツバメとまもりが安堵の息をつく。
「このくらいは当然じゃ。伊達に宇迦之御魂を名乗っておらぬぞ」
「……え? たまちゃんって、ウカノミタマから取った愛称なの?」
その正体を知り、驚いたようにするレンとツバメ。
「ウカノミタマちゃん、略してたまちゃんじゃ」
その名前を聞いても首を傾げているメイとまもりに、ツバメが説明する。
「全国にある稲荷神社の、総本山みたいな偉いお方です」
「おおーっ! すごーい!」
「むふふ」と得意げにするたまちゃんと、驚きの声を上げるメイ。
「ちなみに、食物の神様でもあります」
「い、いつもお世話になっております――っ!!」
さらに、それを聞いてすぐさま土下座するまもり。
夜の京の町外れ。
始まった新たなクエストは、怪異の絡む妖しい雰囲気……のはずが、そんなまもりたちの姿に、思わず笑ってしまうレンとツバメだった。
【名前:メイ】
【クラス:野生児】
Lv:346
HP:34008/34008
MP:564/564
腕力:1450(+58)
耐久:1005(+78)
敏捷:580(+30)
技量:455(+20)
知力:10
幸運:10
武器:【蒼樹の白剣】攻撃43(【大蜥蜴の剣】)(【魔断の棍棒】)(【大地の石斧】)(【王樹のブーメラン】)(【海皇の槍】)
防具:【白花の鎧】耐久30 腕力15(【王者のマント】)
:【白花のブーツ】耐久20 敏捷10
装飾:【猫耳・尻尾】敏捷20 技量20(【鹿角・尻尾】)(【狐耳・尻尾】)(【狼耳・尻尾】)(【狸耳・尻尾】)
:【召喚の指輪Ⅴ】【友達バングル】
スキル:【ソードバッシュ】【投石】【装備変更】【キャットパンチ】【虎爪拳】【フルスイングⅢ】【大旋風】
:【ラビットジャンプ】【バンビステップ】【モンキークライム】【ゴリラアーム】【カンガルーキック】【四足歩行】【裸足の女神】【野生回帰】【ドラミングⅡ】
:(【アクロバット】)(【突撃】)(【狐火】)(【幻影】)(【トカゲの尻尾切り】)(【魔弾リフレクト】)(【地列撃】)(【グレート・キャニオン】)(【遠吠え】)(【群れ狩りⅠ】)(【まやかし】)
:【アメンボステップ】【ドルフィンスイム】
:【遠視】【聴覚向上】【嗅覚向上】【夜目】【雄たけび】【尾撃】
:【自然の友達】【密林の巫女】【蓄食】【帰巣本能】【呼び寄せの号令】【お仕置き戦樹】【穴を掘る】【グリーンハンド】
:【クマ召喚】【クジラ召喚】【ケツァール召喚】【白狼召喚】【象召喚】(【ランダム召喚】)
:(【かまいたち】【突風】【烈風】【いたちごっこ】)
【名前:聖城レン・ナイトメア】
【クラス:魔導師】
Lv:162
HP:3550/3550
MP:2010/2010
腕力:10(+8)
耐久:10(+76)
敏捷:260(+12)
技量:204(+15)
知力:1156(+35)
幸運:10(+1)
武器:【銀閃の杖】攻撃8 知力15(【ワンド・オブ・ダークシャーマン】)(【魔剣の御柄】)(【ヘクセンナハト】)
防具:【夜空の冠】防御5 知力10
:【夜風のローブ】防御40 知力10
:【夜空のブーツ】防御15 敏捷12
装飾:【銀の腕】防御15 技量15(【宵闇の包帯】)(【常闇の眼帯】)(【色炎のお守り】)
:【真っ赤なリボン】防御1 幸運1
スキル:【スタッフストライク】【吸魔】【浮遊】【低空高速飛行】【旋回飛行】
:【ファイアボルト】【フリーズボルト】【ファイアウォール】【ブリザード】【フレアアロー】【氷塊落とし】【悪魔の腕】
:【フレアストライク】【フリーズストライク】【フレアバースト】【フリーズブラスト】
:【ダークフレア】【魔力蝶】【ナイトメア】
:【魔眼開放】【連続魔法Ⅲ】【連続魔法Ⅳ】【連続魔法・中級】【魔力剣】(【魔力剣・改】)【魔砲術】【コンセントレイトⅠ】
:【誘導弾】【設置魔法】【魔法速度変化】【ペネトレーション】【罠の心得】【超高速魔法】
:【燃焼のルーン】【氷結のルーン】【増幅のルーン】
:【クイックキャストⅠ】【クールタイム減少Ⅰ】【MP向上】
【名前:ツバメ】
【クラス:アサシン】
Lv:148
HP:5002/5002
MP:263/263
腕力:214(+50)(+75)
耐久:10(+48)
敏捷:1073(+38)
技量: 183(+10)
知力:10
幸運:10
武器:【グランブルー】攻撃50(【デッドライン】)(【境界死線】)(【村雨】)
:【致命の葬刃】攻撃75(【ダインシュテル】)
防具:【ミスリルベスト】防御15 敏捷5
:【紺碧のローブ】防御16 敏捷18
:【天駆のブーツ】防御18 敏捷20(暗転のブーツ)
装飾:【シルクグローブ】防御5 技量10(強奪のグローブ)
:【隠し腕】
スキル:【加速】【跳躍】【隠密】(【スティール】)【壁走り】(【天井走り】)【忍び足】【残像】【分身Ⅱ】(【暗転】)【リブースト】【疾風迅雷】【エアリアル】【スライディング】【反転】
:【スラッシュ】【投擲】【連続投擲】【跳弾投擲】【電光石火】【雷光閃火】【雷光双閃華】【アサシンピアス】【紫電】【不可視】
:【アクアエッジ】【ヴェノム・エンチャント】【四連剣舞】【剣舞の才】【瞬剣殺】
:【三日月】【旋空】【稲妻】【回天】【斬鉄剣】【水月】
:【二刀流】【ダブルアタック】【サクリファイス】
:【罠解除】【地図の知識】
【名前:結木まもり】
【クラス:重戦士】
Lv:130
HP:20805/20805
MP:194/194
腕力:260(+105)
耐久:785(+137)
敏捷:85(+8)
技量:120
知力:10
幸運:10(+50)
武器:【魔神の大剣】攻撃105
防具:【白銀の鎧】耐久55
:【緑紋のスカート】耐久12 幸運5
:【騎兵のブーツ】耐久15 敏捷8
:【獅子霊の盾】耐久50(【碧樹の盾】)(【太陽の紋章盾】)(【青銅の大盾】)
装飾:【永遠の花冠】耐久3 幸運25
:【祝福のストール】耐久5 幸運20
スキル:【シールドバッシュ】【ローリングシールド】【ストライクシールド】
:【地壁の盾】【天雲の盾】【爆火盾】【マジックイーター】
:【クイックガード】【コンティニューガード】【不動】【かばう】【チャリオット】【水球の守り】
:【防御クールタイム減少Ⅱ】
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