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910.意外な展開です!

「せっかくの連休。こうやって集まったんだし、何かしたいわね」

「いいと思いますっ!」

「はひっ」

「そうですね。またどこかに寄っていきますか?」


 地元の幹線駅まで戻ってきた四人は、そんなことを話しながら駅構内を進む。


「これまでは連休といえば、合宿が多かったわね」

「そうだねぇ」


 始まるのは、お互いの家でした合宿の話。

 ならば流れ的に、次は自分ではないかと考えるまもり。

 しかし、そんな提案をできるはずがない。

 そもそも誰かを何かに誘うという経験自体が、今まであったかどうかも思い出せない。

 ただ、メイたちと一緒に合宿をするのは間違いなく楽しいだろう。

 できるのであれば、してみたい。

 ただ自分がそれを発案していいのかどうか。

 まもりはあわあわしてしまい、言葉を出せずじまいでいる。


「まもり……?」


 そんな状態の中、駆けられた声。


「お、お姉ちゃんっ!?」


 そこにやってきたのは、まもりの姉だった。

 年齢は20歳前後。

 まもりとは違い、朗らかな表情とキリッとした眉が特徴。

 短い髪からも、その活発さが垣間見える。


「まもりが人の多い時間帯に外出。そして見知らぬ同年代の少女が三人……これは、まさか!」


 まもり姉はそう言って、手をパンと叩いた。


「カツアゲ……っ!」

「違うよお姉ちゃんっ!」

「カツアゲでもいい、たくましく育ってほしい」

「違うってば!」

「青山さつきですっ! まもりちゃんとは同じゲームで出会ったパーティ仲間ですっ!」

「ということは、まもりが友達と外出を……?」

「はい、お世話になっております」


 変わらず丁寧なつばめと、猫かぶりモードの可憐。


「そうなんだぁ……! それなら連休だし、ウチにおいでよ!」

「ッ!?」


 出会って10秒で自宅に招く姉のパワーに、驚愕するまもり。


「何だったら泊っていってよ!」

「ッ!?」


 姉の恐ろしい距離の詰め方に、気を失いそうになる。


「いいの?」

「は、はひ……」


 可憐の問いに、まもりは短く応えた。

 それから、あらためて言い直す。


「が、合宿、ぜひ一緒にさせてくださいっ」

「やったー!」

「この連休も楽しくなりそうね!」

「さっそく、自宅に連絡を入れておきます」

「それなら私は先に帰って伝えておくよ! まったねー!」


 そう言って手を振り駆けていく姉に、手を振り返すのはさつき。

 姉の走る速度は、もはやステップ系のスキルでも使っているのかというレベルだ。


「なんか、元気なお姉さんね」

「はひぃ……お姉ちゃんとお母さんが我が家の元気を、全部持って行ってる感じなんです」

「なるほど……」


 自分とタイプの違う兄がいるつばめ、感慨深そうにうなずく。


「さて、それなら急な合宿だし色々と買い物が必要ね。お仕事後だから余裕もあるし、いつも通り買い出しから行きましょうか」

「りょうかいですっ!」

「買い出しですか?」

「せっかくだし、食べ物とか飲み物から探しましょうか。大きな駅まで出て来たわけだし」

「そ、それならこっちです! お菓子などは県内最大数を数える店舗がありますっ!」


 一転まもりは先頭を行く。

 そして大きな店舗に踏み込むや否や、両手にカゴを取った。

 そのままお菓子売り場目がけて一直線。


「あっ、マリーに新しい味が出てるーっ」


 見つけた期間限定クッキーに、歓喜の声を上げるさつき。


「このクッキーシリーズがお好きですか! さすがメイさんお目が高いっ! 今回はパティシエの方とのコラボで作られた形なのですが、非常に美味しいです! アールグレイの風味と、この軽い食感の組み合わせが最高なんです! そして本来マーガリンを使う部分に、バターを使うことで味わいも豊かに!」


 そう言って、とりあえずの感じで8箱カゴに入れる


「8個もいくの?」

「期間限定品はその時食べないとなくなってしまいます! そしてたくさん売れれば定番化や復刻の可能性もあるので! 全力応援ですっ!」


 ふん! と鼻を鳴らすまもりに、圧倒される可憐。


「ツバメさん……キャベツ太郎がお好きですか?」

「はい。つい大袋で買ってしまいます」

「100円ショップでよく見かけますね! この歯ごたえとサクサク感、そしてソースの味付けはコーラなどによく合うんですよね!」

「さすがまもりさん、まさにその通りです」


 なぜか握手をする二人。

 まもりは4袋ほどカゴへ。

 さらに気軽に食べれるチョコパイなどはもちろん、大きなスーパーならではの商品は迷わずカゴへ投入。

 目を輝かせながら店内を突き進む。そして。


「ふあっ!?」

「どうしたの?」


 まもりは生菓子のコーナーへたどり着き、突然足を止めた。

 そこには餡をカステラのような生地で挟んだ長方形の菓子、シベリアのパック。


「一時期こればかり食べていたら、スーパーの店員さんにシベリアちゃんと呼ばれるようになりまして……」

「あだ名がついたのね」

「それからはもう、ずっと……」

「食べられなくなっちゃったのー?」

「お姉ちゃんに買ってきてもらうようになりました」

「全然諦めてない……!」


 それでもたくましく食べていたというまもりに、思わず笑う可憐。

 気が付けば、二つのカゴは一杯になっていた。


「両手のカゴが、いっぱいになってしまいましたね」

「四人であれば、これくらいはなければいけませんっ」

「少し多めだけど、たまにはありね」

「うんうんっ!」

「はい! では見ていきましょう! ――――2日目のお菓子を!」

「「「えっ!?」」」


 まさかの発言に、耳を疑うさつきたち。


「皆さんと一緒、しかも新発売のお菓子も一緒……最高です!」


 しかしカゴを両手に抱えたまもりは、誕生日プレゼント持って帰る子供のような、満面の笑みを浮かべていた。

誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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[良い点] 恒例のお泊まり会が始まった [気になる点] 過干渉っぽいのに妹のやってるゲームのことは知らんのだな [一言] ツバメちゃんの【隠密】みたいに行動によるスキル習得で、まもりちゃんは【畜食】…
[良い点] まもりちゃんが食レポに・・・! そういえば作る方はどうなんだろ・・・? [気になる点] カツアゲで逞しく育つのは不良方向だw わんぱくまもりちゃんとかちょっと見たいがw [一言] まも…
[一言] カゴ2つ一杯の菓子の大量買いはやり過ぎな気がする
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