909.お仕事です!
「【クイックガード】【地壁の盾】盾盾っ!」
紅色のドラゴンが放った乱舞攻撃を、まもりが見事に防御する。
「【加速】【電光石火】」
するとその背後から駆けてきたツバメが、斬り抜けで隙を生む。
「【フリーズストライク】! メイ、お願いっ!」
「りょうかいですっ!」
氷砲弾での追撃に成功したところに、両手で剣を掲げたメイが登場。
「いきますっ! 必殺の【ソードバッシュ】だ――っ!!」
放つ一撃は衝撃波を巻き起こし、ドラゴンを粒子に変えた。
「「「「…………」」」」
「はい! オッケーです! お疲れさまでした!」
「続けてインタビューに入ります!」
メイたちは、星屑スタッフと共に『コラボ企画のCM映像』を作成中。
他社ゲームとの大型コラボということで、力が入っているようだ。
四人はコラボゲームの『狩り』をイメージさせる装備品で、そのゲームの顔的なモンスターと戦闘。
これがウェブはもちろん、テレビでも流れることになるようだ。
「それではこちらへどうぞー!」
スタッフに誘導され、森の中に作られたキャンプ地でインタビューを開始。
いつもの装備で、丸太の上に四人並んで座る。
「こういう形での撮影は初めてになりますが、いかがですか?」
「とっても楽しいですっ!」
メイは楽しそうに尻尾をブンブンさせて応える。
「皆さまにはこれまでも様々な企画に参加いただきました」
「はいっ」
「その中でもメイさんといえばカフェですが……何かこだわりなどはあるんですか?」
「っ!」
『大人のお姉さん感』を出せる、チャンスの到来。
メイは途端に張り切り出す。
「はい。やはりコーヒー……カフェオレにはこだわりがありますね」
話し方まで完璧に『素敵なお姉さん』を装い始める。
「なるほど、ではカフェオレのこだわりとは?」
そんな質問にメイは、待っていましたとばかりに応える。
「――――牛乳ですね」
「コーヒー豆の方にこだわってよ」
クールに決めたメイとレンのツッコミに、思わずスタッフが吹き出す。
「星屑最強の呼び声も高いメイさんたちですが、新メンバーのまもりさんにも注目が集まっています。その辺りはどう感じでいますか?」
「ひゃいっ!」
インタビュー開始後も、ずっと目の前に置かれた星屑新メニューに夢中だったまもり。
慌てて応える。
「わ、わ、私で良かったのでしょうかという感じです……っ!」
「その素晴らしい防御には、イージスという二つ名まで出てきておりますが、何か秘訣はあるのでしょうか」
「よ、よく食べることですっ!」
「盾にまつわる話をするべきところじゃない?」
そんなまもりの答えで、さらに空気は和やかなものになる。
場所が変わっても相変わらずのメイたちに、スタッフも笑いが止まらない様子だ。
「本当にメイさんたちは、いつでも楽しそうですねぇ」
「広報誌担当も、しょっちゅう「来たー!」とか叫んでますよ」
「今回もいいものができそうです! ありがとうございました!」
こうして明るい雰囲気のまま、メイたちの『お仕事』は無事に終了。
四人は帰路につくことになった。
「途中からツバメが、メイの写真を一緒に見始めたのには笑ったわ」
「スタッフさんにも、メイさん愛にあふれる方がおりました」
「楽しかったねぇ……! 星屑の会社に行くなんて思わなかったよー」
今回はコラボ先があることもあって、星屑運営の本社での撮影となった。
VRMMOでプレイヤーがゲームの顔になるという事態はとにかく稀有で、コラボ先企業から「ぜひメイたちで」と指名されての起用だった。
そしてせっかくだからと、インタビューを受けた形だ。
「セリフが別撮りだったりして、結構大変だったわね」
「はい。まさか別撮りで詠唱をするとは」
「ちょっと待って! 詠唱したの!? ……さっき個別で撮ったダークフレアのシーンに使う気なんだわ! やられた!」
今回はさすがに何もなかったと気を抜いていた可憐、まさかのオチに頭を抱える。
こうしてさつきたちが、本社一階にたどり着いたところで――。
「……あれ、メイちゃん!?」
「え、本物っ!?」
星屑の会社がある街は大きく、人通りも多い。
そして本社の一階では、常設でグッズ販売やデザイン画などの展示が行われているため、何かとプレイヤーが遊びに来ている。
「メイですっ!」
いよいよ普通に気付かれ出したさつき、本社見学に来ていた女の子パーティが集まり出す。
「きゃーっ! 可愛いー!」
さつきは普段と星屑内で、耳尻尾があるかどうかしか変わらない。
とはいえ、星屑外でもプレイヤーが普通に『メイ』に気づいて駆け寄ってくるという事態に、感嘆する可憐たち。
「なるほど……普段は高校生のフリをしているんですね!」
「はいっ! ……ん? 逆です! それは逆ですーっ!」
『本当は高校生だけど野生児のフリをしている』ではなく、『本当は野生児だけど高校生のフリをしている』という話の流れに、慌てて首をブンブンするさつき。
さっそく笑い出す可憐たち。
そんな中、一人の少女がハッとした。
「そちらはまさか! 星屑最凶の魔導士と名高い、闇の使徒長ナイトメアさんですか!?」
「……違います」
「ということは、この可憐で可愛い黒髪ロングは……神速のアサシンさん!」
「ヒヨコが本体です」
「そうなると必然的に、この方がイージスちゃん!?」
「わ、私なんかが一緒ですみませんっ!」
そう言って、慌てて可憐の背後に隠れるまもり。
四人はすっかり、星屑の顔として認識されている。
目を輝かせる少女たちに囲まれたさつきたちは、せっかくだからと展示品を一緒に見ていくことにした。
もちろんそこには、野生全開のメイや中二病全開のレン。
これまでのツバメのスティール失敗回数と、その歴史。
両腕に飲食品を抱えて満面の笑みを見せるまもりのスクリーンショットなどが大量に飾られていて、四人は気絶しそうになるのだった。
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