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903.海の王Ⅲ

「すごーい……!」

「カ、カッコ良かったです!」

「……忘れて。ほら、まだ終わったわけじゃないわよ!」


 新魔法【ナイトメア】の圧倒的な演出に、思わず手を握り合って声を上げるメイとまもり。

 レンは顔を赤くしながら、戦闘態勢に戻る。

 海の王のHPは、いよいよ4割ほどとなった。


「――――――ォォォォォ!!」


 すると空へ戻った海の王は、長角を煌々と輝かせる。


「いよいよ、勝負の瞬間がきましたね……!」


 放たれるのは、これまで以上に激しい水魚たちの突撃。


「【電光石火】【瞬剣殺】!」

「【ブリザード】! 【魔力剣】!」

「【シールドバッシュ】!」


 水魚たちの特攻はすさまじい勢いを誇るが、回避に攻撃を加えることで、メイたちはしっかりと振り払う。


「高速【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」


 そして水魚たちの隙を突いて放つ魔法がヒット。

 レンは海の王への攻撃を挟むほどの余裕を見せ始めた。


「まだまだいくわよ――――ッ!?」


 しかし再び杖と視線を上げたところで、見えた光景に唖然とする。


「自分まで、水でコピーできるの……?」


 海の王のそばに控えるのは、水によって作られた四体のコピー。

 油のように表面をきらめかせる、巨体のシルエット。

 従える姿はまさに、海の王だ。


「くるっ!」


 その迫力はもちろん、攻撃方法も火力も変わらない。


「きゃあっ!」


 特攻してきた海の王コピーの尻尾払いが、まもりの盾を打って大量の飛沫を巻き上げる。

 その隙を突いて潜り込んできた熱帯魚型は、衝突と同時に炸裂。

 まもりのHPを削っていく。

 二体目の海の王コピーはツバメを狙って直進し、【回転特攻】を狙う。


「【加速】【スライディング】!」


 ヒレによる斬撃をすべり込んでかわすが、そこに迫るのは三体のイルカ。


「【瞬剣殺】!」


 当たれば爆発するイルカを、早めの対処で打倒する。


「くっ!」


 しかしここに上方から飛び込んできたトビウオが、ツバメの肩を弾いた。

 海の王コピーの登場で、いよいよ回避や防御が間に合わなくなっていく。


「うわわっ!」


 一方メイの前に突撃してきた三体目の海の王コピーは、飛沫を上げて跳躍。

 そのまま空中で一回転し、全力で尾を叩きつける。


「【アクロバット】!」


 高く上がる水柱の強烈さに、メイも驚きながらの回避となった。

 さらにこの隙を狙い迫るトビウオ型をかわし、熱帯魚型を避け、喰らいつきに来たサメ型に剣を振るう。


「【フルスイング】!」


 飛び散る飛沫。

 まさに怒涛の攻勢の中、海の王は煌々と長角を輝かせた。

 すると海の王コピーたちは同時に空中に登り、一斉攻撃を敢行。

 始まる【四次元攻撃】の狙いは、まもりだ。


「四体一斉攻撃……!? まもり、気をつけて!」

「は、はひぃっ! 【不動】【天雲の盾】!」


 一体目の豪快な【体当たり】を、まもりは正面から防御。

 続く二体目は、直前まで完全に体当たりの挙動で来て突然停止。


「えっ?」


 尾の振り払いに攻撃を変更してきた。


「て……【天雲の盾】ーっ!」


 それでもしっかり一拍置いて、防御をしっかり合わせる。


「まもりさん、上ですっ!」

「ッ!?」


 すると三体目は二体目を飛び越える形で飛び上がり、尾を叩きつけにくる。さらに。


「四体目……っ!!」


 四体目の攻撃は、ツバメのHPを大きく減らした【エレメンタルスピア】

 まもりは二枚の盾を手に防御に集中する。


「【クイックガード】天雲の……ッ!」


 しかしここで以前メイが【魔断の棍棒】で、水魚を打ち返していたことを思い出した。

 まもりは三体目の海の王コピーの尾を引き付け、慌てて思考を守りから攻めに切り替える。


「マ、【マジックイーター】!」


 祈るように突き出す盾。

 巨大な尾がまもりの盾を打った瞬間、三体目の海の王コピーはそのまま吸い込まれた。

 まもりは盾を、その長い角で刺突に迫る四体目に向ける。


「お返ししますっ!」


 盾から飛び出した海の王コピーは尾を四体目に叩きつけ、同時に角による刺突を受けた。

 ぶつかり合った二体の海の王コピーは、大量の飛沫を巻き上げ消え去る。


「本当にこのパーティにいると、驚きに困ることはないわね……!」

「まもりちゃん! まだだよーっ!」


 感嘆するレンだが、攻撃はまだ終わっていなかった。

 大きく後方から回り込むようにして迫っていた五体目。

 海の王本体が、まもり目がけて特攻。


「きゃあっ!」


 振り返り際の防御は成功するが、弾き飛ばされ派手に転がった。

 すると海の王は狙いをツバメに変え、残ったコピー二体と共に飛び掛かる。


「【加速】!」


 直進による一体目の体当たりをかわす。

 すでに二体目は、空中から長い尾を叩きつける態勢を取っていた。


「【リブースト】!」


 これを超加速で潜り抜けた先に、迫り来る本体。


「【投擲】!」


 ツバメは慌てて【雷ブレード】で対抗するが、本体は急加速でこれを回避。

 身体を一回転させて、払いの尾撃を繰り出す。


「っ!」


 長いバックステップで、ギリギリかわしたツバメを前にもう一回転。

 さらに下がると、尾が鼻先をかすめていく。

 海の王は跳躍して回転。

 縦軌道の振り降ろしで、再び尾を叩きつけにくる。


「ツバメちゃん! 【ターザンロープ】!」


 すでにHPが3割を切っているツバメを、メイが強制脱出させる。

 高く上る水柱に、ツバメは思わず息を飲む。


「【ペネトレーション】【フレアバースト】!」


 ここですぐさまレンが反撃に入る。

 即座に張られたバリア。

 放った爆炎は水の膜を突き抜け爆発、海の王の体力を削り取った。


「これならいけるわ! 【ペネトレーション】【フリーズストライク】!」


 ようやく途切れた敵の攻勢。

 レンは続けざまに攻撃を仕掛けるが――。


「……三枚!?」


 海の王が張り直したバリアは、なんと三重。

 レンの放った貫通氷砲弾は、二枚目のバリアにぶつかり弾け散った。

 海の王が反撃に入る。

 残った水球バリアを、外から順に粉砕。

 水散弾が直撃し、カウンターを喰らったレンは1割ほどHPが減少した。

 さらに二枚目、三枚目を粉砕。

 レンは決死の防御で、どうにか生き残る。

 しかしバリア粉砕三連発は、メイたちの勢いを大きく削いでしまった。

 海の王はコピー二体を率い、まるで勝利を宣言するかのように潮を吹く。


「やってくれるわね……」


 キラキラと輝き飛沫が降り注ぐ中、悔し気に息をつくレン。


「ひゃああああああ…………!」

「……ん?」


 そんな中、聞こえてきた悲鳴に思わず四人は視線を上げる。


「あれは……迷子ちゃんさん!?」

「【喰らいつき】離脱した後って、こういう形で復帰するのね」


 落ちてきた、ボロボロのメイド服の迷子ちゃん。


「よいしょっ!」

「あ、ありがとうございますっ!」


 メイに受け止められて、思わずお姫様抱っこ状態のまま頭を下げる。


「海の王との戦い、まだ続いているんですね」


 付近を確認した迷子ちゃんは顔を赤くしながらも、すぐさま現状を把握。


「思った以上に大変な相手みたい。特攻とバリアを粉砕する水散弾には気をつけて。正直、かなり厳しい戦いになってるわ」

「了解しました!」


 そう言って迷子ちゃんが地面に足を着くと、海の王は再び動き出した。

 コピー体を引きつれ特攻を仕掛ける相手は、今回もまもりだ。


「【スリップ・フット】! 【ロックアーム】!」


 まもりの背後に回り込んできた迷子ちゃんは、すぐさま錬金術で床石製の碗を作成。

 これによって先行していたコピー体が左右に分かれ、初撃が海の王本体になる。

 上方から降りてくる【体当たり】に対し、まもりは真っすぐ盾を構えた。


「【不動】【天雲の盾】!」


 これを防御した瞬間、迷子ちゃんは後方からまもりに声をかける。


「後ろ、いますっ!」

「はひっ! 【獅子霊の盾】!」


 まもりの盾から首を出した巨獅子が、突撃直後の海の王のヒレに喰らいつく。


「【ジェット・ナックル】!」


 すかさず水蒸気を噴出して特攻、放つ拳が海の王を捉える。

 その一撃に大きく弾き飛ばされたところに、すぐさま詰めていくのはツバメ。


「【加速】【リブースト】【投擲】!」


 投じた【雷ブレード】が海の王に刺さり、感電を奪う。

 そのときすでに、迷子ちゃんも動き出していた。


「【スリップ・フット】【バスターゲイザー】!」


 砂煙をあげながら突進し、続くド派手なエフェクトのアッパーが海の王を撃ち上げる。


「【超高速魔法】【ファイアボルト】!」


 続けて天に向けて放たれた炎弾が直撃。


 「――――――ォォォォォォォォ!!」


 迷子ちゃんから始まった見事な連携が、戦いの流れを奪い返す。

 こうして残りHPが3割を切った海の王は、再び咆哮を上げた。

メモ残りのご指摘、ご感想ありがとうございます! 修正させていただきました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 論理クイズの最後のヒント 『ダー』『ヤー』のどちらが「はい」でどちらが「いいえ」なのかは、特定しなくてよい
[良い点] 【悲報】海の王、あれで倒れて無かった。 【朗報】まさかコピー体がまもりちゃんの盾に喰われた!? [気になる点] 迷子ちゃんどっから降ってきたwww [一言] 変則的な手数が多い迷子ちゃんサ…
[一言] あっ、迷子ちゃん戻ってきた。
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