900.ナディカの門
黒仮面たちは去っていった。
ナディカから新たな結晶と、『鍵』の情報を得て。
「黒仮面もパワーアップしながら、『鍵』の入手を目指してるのね」
「彼らは本や手記で、私たちはゼティアの門で。鍵と思われる青年の情報を得るという流れのようです」
「ア、アサシンさんたちは、赤月の夜を防ぐために戦っているのでしょうか」
「そうなると、アサシンは世界を守るために戦ってたことになる。だから攻略組はアサシンになるクエスト受けたんでしょうね。あの有無を言わせない感じは一見悪役なんだけど、背景は世界を守るためっていうのは、ダークヒーロー感あるわね……」
「なるほどー、これからはアサシンの人たちを応援すればいいのかな?」
「そこはまだ何とも言えないわね……黒い仮面のヤツらも、何気に世界を守るためみたいなことを言ってたし」
「エルラトで見たホログラム。あの青年は組織に追われる身だと言っていましたが……どうなったのでしょうか」
ゼティアの門に行けば、自分を『鍵』だと言う謎の青年の情報が手に入る。
そこだけは間違いないだろう。
「私たちは『王』に力を認められることでゼティアの門にたどり着いて、そこで情報をもらうことになるのね」
「大変なことになってるんですね……」
メインルートの展開に、驚く迷子ちゃん。
五人はそのままホールを抜け、続く廊下へ。
白のブロック造りの空間の左右には、開けっぱなしのドアの数々。
どこも分かりやすく中が荒らされており、黒仮面たちがやったのであろうことがうかがえる。
そこから先は、ゼティアの門への最後のストローク。
「すごーい……」
水族館を思わせる『青』の空間を進む。
水中トンネルから見えるのは、そびえ立つゼティアの門。
乳白色の双塔は、天空遺跡で見たものと相違ない。
付近を泳ぐ魚の群れやウミガメ、クジラなどたちは天然のものか。
神秘的な光景に、思わず息を飲む。
「この塔、どこかで見たことあるような……」
つぶやく迷子ちゃん。
たどり着いた水中トンネルの最奥には、ナディカを象徴する紋様が刻まれている。
うなずき合い、メイが中央の宝珠に足を乗せる。
すると白い輝きに照らされたゼティアの門が、そのまま光に包まれ消えていく。
遅れてメイたちの足元にある紋様も輝きを灯し、メイたちは白光にのみ込まれた。
「ここは、どこかな……?」
光が収まると、そこは広い石畳の空間。
前方に見えるのは、並んだ石柱とゼティアの門。
一面の青い空は、海水と日光が生み出すものだ。
「最初にたどり着いた場所を海底遺跡の正門とするなら、ここは裏側に当たる部分じゃないかしら」
後方に見えるのは、メイたちが人魚に出会った神殿。
どうやらその裏側は、ゼティアの門による『ゲート開放』を行うための空間になっているようだ。
神殿の背部から続く長い下り階段。
そこに広がる舞台のような造りの、この場所。
さらに100メートルも進めば、そこにゼティアの門がある。
「ただ歩くだけの時間って……」
「はい。気分や雰囲気を高めるための時間ですね」
「おおっ、そうなんだー」
「た、たしかに雰囲気でますね」
「転送の時点で迷子にならなかった……」
静かな海底遺跡の背面区画。
五人は並んで進み、舞台の中央へ。
すると、足元の石畳の上に大きな影がかかった。
五人が顔を上げると、そこには上方から華麗な泳ぎで降りてくる一角獣。
ダイヤのような長い角を付けた、乳灰色のクジラといった感じか。
その巨大さに、美しい角が神々しくすらある姿はまさに――。
「これぞ大物って感じね」
「かっこいいーっ!」
「あ、あの大きな一角クジラは……っ! 前に追いかけ回された……!」
かつてこの遺跡に迷い込んだ際に、偶然エンカウントした大物。
クエストを踏まずに出会った場合は、仮に戦い続けてもHPを1/4ほど減らしたところで去ってしまう仕様になっている。
「まさかこんな形で再会するとは……」
迷子ちゃんは思わず息を飲む。
海の王は、そのままゼティアの門を一回転。
揺れる陽光の輝きの中、五人の前に立ち塞がる。
「ようやくここまで来たわね」
「王様に認められるため、そして『鍵』の情報を得るためには、この戦いの勝利が必須なのですね」
「き、緊張しますっ」
「がんばりましょうっ!」
「はいっ」
五人は自然と武器を構え、ゆっくりと降りてくる海の王に備える。そして――。
「――――――ゥゥゥゥ!」
イルカの鳴き声を思わせる不思議な咆哮と共に、戦いが始まった。
大きく一回その場で縦回転。
長い角を輝かせると、海の王はものすごい勢いで突撃を仕掛けてくる。
攻撃は連続の【喰らいつき】
しかも各人を順に狙うという、変わった形の全体攻撃だ。
「【アクロバット】!」
メイはこれを高めのバク宙で回避。
「【加速】【スライディング】!」
ツバメはその巨体の下を潜り抜ける。
「【低空高速飛行】!」
「【シールドバッシュ】!」
レンは飛行からの飛び込みで難を逃れ、まもりは衝撃波を先に置くことでけん制。
すると海の王は予想を裏切り、高めの跳躍を見せた。
まもりの頭上を飛び越え、狙いを迷子ちゃんに定める。
「私ですかっ!? ロックアー……【スリップ・フット】!」
反撃しようとして心変わり、慌てて回避行動に入るが間に合わない。
海の王の【喰らいつき】は、そのまま迷子ちゃんに直撃した。
「……あれ?」
ここで予想外の展開。
迷子ちゃんの姿が消えた。
「ええええええ――――っ!? 迷子ちゃんが食べられちゃった――――っ!」
基本【喰らいつき】は、喰われた後に放り出される形で戦線に復帰することになる。
しかし迷子ちゃんは、海の王に飲まれたまま一向に戻ってこない。
これには、さすがに驚愕するメイたち。
「この伝言を聞いているということは――」
「それは前に聞いたわよっ! こういう『強制離脱攻撃』は、戦闘中に戻ってくる可能性が高いわ。とにかく今は戦いに集中しましょう!」
「りょうかいですっ!」
「はいっ!」
「はひっ!」
こうしていきなり戦闘中に行方不明になった迷子ちゃんの貫禄に驚きながら、海の王との戦いが再開した。
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