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896.仕掛け

 レンは【低空高速飛行】で、広い研究区画を進む。


「この辺りは何かありそうね」


 一度足を着いて魔法を解除し、すぐにまた発動することで角を曲がる。

 扉の数は少なく、どの紋様も途切れてしまっているため開かない。

 レンはひたすら道を進み、一つのホールにたどり着いた。

 放置された無数の水槽は、作成した兵器魚などを運ぶためのものか。

 乳白色の空間に大きな水槽が乱雑に並んでいる光景は、なんとも不思議な感じだ。

 しかしその最奥には、いくつかの紋様が並んでいる。

 そしてその一つにはめ込まれた、あからさまな宝珠の存在。


「……奪い合えってことみたいね」


 そこには、一人の黒仮面。

 振り返り、レンの姿を確認する。


「フローリスの冒険者どもか。何の用だ」

「ちょっと、世界を守ろうと思ってね」

「ならば、戦うべきは我らではない」

「でもフローリスを崩壊させた兵器を、これからも使うんでしょう?」

「当然だ。やがて我らが治める世界、どう使おうが自由だろう? 王たちの力など借りなくとも、世界を所有する者としての責務は果たしてみせよう」

「それならやっぱり、貴方たちは倒すべき相手よ」


 そう言ってレンは、杖を構える。


「……運がなかったな。魔導士では俺に勝つことなど不可能だ」


 黒仮面はそう言って、足を軽く鳴らす。

 するとブーツのカカトに搭載された緑の結晶が、輝きを灯した。

 黒仮面はヒザを曲げ、跳躍。

 先手を打ってきた。


「っ!!」


 風を用いたジャンプからブーストをかけて飛行し、コマのように一回転。


「【旋風回転蹴り】」


 緑の光を描きながら放たれる一撃に、レンは横っ飛びで対応。

 その場に転がり、急いで振り返る。

 間一髪のところで通り過ぎていった黒仮面に、レンは杖を向けるが――。

 ほんのわずかな差で、敵が先行を奪う。


「【風牙】」


 右手の手甲に付けた緑の結晶が輝き、風弾を飛ばす。

 レンはすぐさま魔法の使用を取りやめ、転がってこれを回避。

 すると黒仮面は、ブーツの結晶を再び輝かせた。


「【疾空】」


 地を滑る形での高速接近から放つは、シンプルな拳撃。

 慌てて立ち上がったレンは、右拳左拳の連打をかわすが、続く正拳突きに合わせて結晶が光ったのを見て、防御を選択。


「【空拳】」


 拳を受けた後に放たれる烈風という二段階の攻撃を、しっかりと受けて後退。

 ダメージは1割程度。


「確かに私には厳しい相手ね……でも!」

「【疾空】【上昇気竜】」


 接近から放つ掌底が、突き上げるような衝撃波を放つ。

 レンはこれを、後方へ倒れ込むようにして回避。

 風を利用した結晶攻撃は、その後の隙がやや大きい。


「【高速】【連続魔法】【フリーズボルト】」


 ヒットは二発のみだが、しっかりとHPを削ることに成功。


「チッ……【疾空】」


 すぐに体勢を立て直した黒仮面は、再び接近戦へ。

 高速移動で一気にレンへ迫る。


「【フリーズストライク】」


【魔剣の御柄】に氷結の魔力を込め、先行で振ることでこれをけん制。


「【低空高速飛行】!」


 そのまま接近して振り降ろし、振り上げと繋ぐ。

 しかし黒仮面も、見事な後方への回避でこれをかわす。


「【解放】!」


 そして放つ氷砲弾を、結晶による後方への大きな跳躍で回避。

 空中で一回転して着地した後、その拳を引く。


「【烈風正拳突き】」


 放つは、目にも止まらぬ速さで迫る拳の一撃。


「ッ!? きゃあっ!」


 慌てて防御してなお、大きく弾き飛ばされ転がる。


「【剛風牙】」


 さらに続く右腕からの風砲弾。

 レンはすぐさま横へ転がって回避し反撃。


「高速【連続魔法】【フリーズボルト】!」


 今回は三発。

 だができるのは少しずつの削り。

 やはり分は悪い。


「それなら! 【誘導弾】【フレアストライク】!」


 ここでレンは、優位を取るため先手を打った。

 しかしこの判断は失敗。


「【大回転踵落とし】」


 カカトを光らせて生まれる突風が、黒仮面に弧を描く形の高速跳躍を可能にする。

 それは一直線に飛来する魔法を、飛び越えて放つカカト落としだ。


「きゃあっ!」


 これを肩口に直撃を受けたレンは、続く回し蹴りに弾き飛ばされ、そのまま壁に激突した。

 まさに魔導士殺しと言えるスキルで、受けたダメージは3割近い。

 レンは床に手を突き、そのまま壁を支えにするような形で立ち上がる。

 残りHPは5割と7割。

 やはりこの戦いは、分が悪い。


「【連風牙】」

「っ!」


 風の攻撃の連射を、レンは左右への回避行動で対応。


「【剛風牙】」


 回避後を狙った風の一撃を、足を開き、左手を床に突くような形のしゃがみで続けて回避。

 反撃のため、すぐに杖を上げたところで――。


「【大回転踵落とし】」

「ッ!!」


 即座に取りやめて、そのまま横に転がる。

 直後、床を打った緑光の踵落としが、強い風を吹かせた。

 その勢いに、また床を転がる。


「必死の魔導士って、本当に格好悪いわね……っ!」

「空を駆ける格闘術に、魔導士では太刀打ち不可能だ。大人しくここで散るがいい」


 すると黒仮面は、笑みを含んだ口調でそう告げた。


「【疾空】」


 追撃は接近からの連撃。

 繰り出される拳打をどうにかかわして【低空高速飛行】で下がる。


「【旋空回転蹴り】」


 すると黒仮面は宙を舞い、高速の接近攻撃で迫り来る。


「っ!」


 レンはこれをギリギリのところで回避するが、黒仮面は振り返りと同時に拳を引いた。


「【烈風正拳突き】」


 回転蹴りは隙のある技だが、この位置関係では敵の方が早いことはすでに承知済み。

 レンは集中し、これを横っ飛びで回避。

 拳が肩口をかすめ、思わず息を飲む。


「でもっ! 【超高速魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」


 その魔法は、瞬きすら許さない。

 すれ違って行った黒仮面が炎を視認した次の瞬間には、すでにその額を撃ち抜いていた。

 弾けた炎弾によって、大きくノックバック。

 そして、その先にあったのは。


「機は熟したわ。ここからは――――狩りの時間よ」


 静かに笑うレンの声に合わせて、黒仮面の足元の魔法陣が輝く。


「発動!」


 直後、【設置魔法】が氷嵐を豪快に噴き上げた。


「くっ!」


 これを喰らい、後方へ吹き飛ばされた黒仮面は空中で後方回転。

 すぐさま体勢を整え着地した。

 しかしその足もとには、二つ目の設置魔法。


「発動!」

「ぐうっ!」


 吹き上がる猛烈な爆炎が、黒仮面を再び吹き飛ばす。

 そして壁に強く背を打ったところで、レンは即座に命ずる。


「まだまだっ! 凍りなさいっ!」


 すると足元と壁に刻まれていたルーンが発動し、一斉に氷刃を突き立てた。


「ぐ、ああああっ!」


 砕け散り、キラキラと消えていく氷片。

 ヒザから崩れ落ちる黒仮面は、残りHPもわずか。

 しかしこれでもまだ、レンの連携は終わらない。

 ゆっくりと持ち上げた手、それを黒仮面に向けた後。


「これで終わり――――燃え尽きなさい」


 指をパチンと鳴らすと、【燃焼のルーン】が発動。

 ごうごうと燃え盛る火炎が、HPゲージごと黒仮面を焼き尽くしていく。


「相手が魔導士なら、一気に畳みかけるべきだったわね」


 仕掛け型の魔法を四連発、見事に全弾叩き込んでみせたレン。

 思いつきは、最初に壁に叩きつけられた瞬間だった。

 壁と床に【氷結のルーン】を使用しつつ、連携の流れを計算。

 そこから敵に『押される』展開は全て、『位置取り』のための準備に過ぎなかった。


「ふふ。単純な武闘派なんて、小賢しい魔導士には格好の獲物なんだから…………はっ!」


 そう言って少し悪い笑みを浮かべて見た自分に、慌てて頬をパンパンと叩く。


「戦いに熱くなると、こういうことを言い出しちゃうのは悪い癖だわ……」


 そう言ってちょっと恥ずかしそうにしながら、宝珠に手を伸ばす。


「……ヒビが入ってる。ここはハズレかしらね」


 そして手にした宝珠を使えないと判断すると、わずかに赤くなった頬のまま、メイたちのもとに帰還するのだった。

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[一言] このシーン確実に使われるな。
[良い点] きゃーレンちゃんかっこいーーー! [気になる点] さて運営諸君、この戦いの最初から最後までちゃんと納めてるかな? [一言] やはり罠とルーンの連続コンボは素晴らしい。 これで魔剣とダークフ…
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