88.まさかの合流!?
「なるほど、そうくるわけね……」
【召喚】で海魔の王が呼び出したのは、長い触手を持つ海の魔物クラーケン。
「おそらく、あれに捕まったらキツイ一撃が待ってるんでしょうね。しかも……」
残りHPが半分ほどになった海魔の王は、全身の紋様を煌々と赤く輝かせている。
その場で力強く一回転すると、凝縮を始める海水の弾丸はその数を増していた。
「【バンビステップ】!」
怒涛の勢いで飛来する弾丸を、オトリになったメイが早いステップでかわしていく。
するとその紋様が、激しく点滅を始めた。
三人、同時に覚える違和感。
「…………身体が、引っ張られてるわね」
生まれた海流が【大渦】に変わり、猛烈な力でメイたちを引っ張り出した。
「ッ!?」
吸い込まれれば終わり。
見ればすぐに理解できる【大渦】を前に、必死に踏みこたえる。
そして、三人の移動速度が下がったところに――。
「ッ!!」
この隙を突いて伸びてきたクラーケンの触手が、ツバメの身体をつかんだ。
ここで海魔の王は槍角を輝かせると一転、ツバメに向けて特攻を仕掛ける。
「あぶなーいっ!」
メイがツバメを突き飛ばす。
角による刺突はかわしたものの、メイはその巨体に弾き飛ばされた。
「メイさん、大丈夫ですか……っ?」
慌てて駆けつけたツバメが手を差し出す。
「もちろんだよっ」
手を取り立ち上がったメイは、むしろツバメを見て「無事でよかったぁ」と息をついた。
「メイ、ダメージは?」
「三割かな?」
「衝突しただけで、メイのHPを三割も持っていくの……?」
大渦からの触手、そして海魔の王による突撃まで。
脱出のための猶予時間があるからなのか、最後まで喰らえば即リスポーン。
まさに、メイでなければ生き残れなかったであろう攻撃だ。
攻勢は止まらない。
クラーケンはその長い触手で、後方に立つレンを狙う。
「せめてクラーケンだけでも何とかできればいんだけど……これじゃ触手の相手で精一杯だわ……っ」
【魔力剣】で、必死に触手を弾くレン。
しかしそこへ、海魔の王の弾丸が飛来する。
「くっ!」
これもどうにか避けることに成功したものの、目の前には再び触手が迫っていた。
「しまった!!」
かわし切れない。
クラーケンの触手が、今度はレンをつかんだ。
そこへ迫る、凝縮海水の弾丸。
前衛二人からの距離を考えれば、ツバメの時のような救出を期待することはできない。
「マ……ズいっ」
被弾を覚悟するレン。
しかし次の瞬間、突然足から触手が離れた。
「ッ!?」
大慌てで身を伏せたレンは、ギリギリで弾丸を回避。
視線をあげる。
クラーケンの触手には、どこからか飛んできた槍が突き刺さっていた。
「おーい大丈夫かー!」
「あれ、あの子たちビーチバレーの……!」
「クラーケンの足止めは俺たちに任せろ!」
駆けつけて来たのは、ルルタン拠点のプレイヤーたち。
次々と攻撃を仕掛け、伸びる無数の触手を食い止めにかかる。
「【裂空一矢】!」
そんな中、弓術師の一撃が本体にダメージを与えた。
これを機に、ルルタンプレイヤーたちは攻勢をかけにいく。
「よーし、たたみ掛けるぞ! 【投擲】【風魔手裏剣】!」
勢いづく、中・遠距離の攻撃手段を持つ者たち。
しかし、海流の動きは変わり始めていた。
「マズい! 皆気をつけて!」
レンが叫ぶ。
だが、勢いづくルルタンプレイヤーたちは止まれない。
海魔の王が放った【大渦】に、巻き込まれていく。
「う、うおおおおおお――――ッ!?」
【大渦】は、ルルタンプレイヤーたちの大部分を飲み込んだ。
助かった者たちも続々と触手につかまり散っていく。しかし。
「ルルタンにもこんなすごいクエストがあったのかぁ。なんかうれしいわ」
むしろ楽しそうだ。
しかも最後にニヤッと、その頬に笑みを浮かべると――。
「……さあ今だ。出番だぞおおおおーっ!」
渦と触手の締め付け攻撃で、死にかけの盗賊が叫んだ。
「【ツインストライク】!」
応じるように、上方から聞こえてきた声。
そこには、急降下を仕掛けてくる黒竜の姿。
猛然と飛び込んで来た黒竜は、その鋭い爪でクラーケンを切り裂いた。
「はああああ――――っ!」
さらに時間差で落下してきた『白』の少女が、レイピアで放つ追撃。
まばゆい白光を放つ一撃が、クラーケンの巨体に突き刺さる。
残りHPが八割を下回った。
するとクラーケンは、戦場からの離脱を始めた。
どうやら一定のダメージを与えれば、逃げ去って行く仕様のようだ。
着地した『従魔士』九条院白夜は、レイピアを大きく一度振ると――。
「これで、この前の借りは返させていただきましたわ」
ふん、と鼻を鳴らしてみせた。
「か、かっこいいー!」
「何という展開……」
思わぬ命がけの助太刀に、目を輝かせるメイ。
「……ふ、不覚にも」
レンも思わず、杖を強く握り締める。
『白』と『黒』の共闘というまさかの展開に、うっかり興奮してしまう。
そして、クラーケンというやっかい者はもういない。
やって来た、反撃の時。
「……メイ。【装備変更】を使えば、海魔の王相手にも『隙』が作れたりしないかしら?」
不敵な笑みと共に問いかけると、メイは「なるほど!」と笑顔で振り返った。
「おまかせくださいっ!」
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