878.集結します!
「皆さん、色々あり過ぎですね」
「ふふ、本当ね」
海に散らばった各自が、クエストを乗り越えた先にたどり着いたのは、動く島。
いよいよ豪華な家具まで乗せた、二階建ての『イカダクルーザー』を降りたツバメが、最初に出会ったのはまもりだった。
もはや『クエストを達成してもらった側』かというくらい、人魚にお礼を言ってたところに合流。
そこから幽霊船でやって来たレンに、驚愕するという流れだった。
「それしても、不思議なところね」
「大きな亀の上に木々が生えているというのは、面白いです」
「う、海を移動しながら生きているのでしょうか」
集まった四人は、メイを探して森を行く。
「レンさんは、すっかり海賊船長ですね」
「なんだかんだ気に入っちゃったみたい。こういうのも楽しいかなって」
「よ、よく似合っています」
「それに、私はあの子たちの船長だから……」
羽付きの船長帽に、曲剣を提げた状態で立つ黒水着のレン。
その女船長ぶりに、まもりもうなずく。
「あ、あ、あのっ! すみません。お邪魔しちゃって!」
そんな三人に囲まれて、迷子ちゃんは申し訳なさそうにする。
「いえ、迷子ちゃんさんのおかげで私もここまで来られました」
「広い海の上。一緒にクエストを進められる仲間がいたのは良かったわね」
「はい。迷子ちゃんさんとは、メイさんの話題で盛り上がりました」
「っ! わ、私も参加したかったです……っ!」
ツバメと迷子ちゃんの話を聞いて、まもりも羨ましそうにする。
「ありがとうございますっ、そのうえ手までつないでいただいて……」
迷子ちゃんの特性を聞いて、レンとツバメの二人に手を引かれる形になった迷子ちゃんは、恥ずかしそうにしながら歩を進める。
「早くメイとも再会したいわね」
「「「はいっ」」」
「流れ的に、もうすぐだと思うけど……」
「メイさんに直接会えるなんて、ドキドキしますっ!」
再会の瞬間を楽しみにしながら、森を進む四人。
「あれはなんでしょう……?」
ツバメが指さした先に感じる、人の気配。
なぜか動物たちの姿も見られ、少し賑やかな雰囲気だ。
「……何かありそうね」
「念のため、そっと進みましょう【隠密】【忍び足】」
「は、はひっ」
「わかりました……!」
杖を手にした船長レンを先頭、ツバメは姿と足音を消す。
まもりも盾に隠れて、そーっと前進。
南国特有の、大きな葉の草をかき分け歩く。
その先にいたのは、ヒザをつき頭を下ろす島民らしき人間たちと、大きな葉っぱを扇ぐ少女。
集まった動物たちと、貢物のように置かれた果物の数々。そして――。
毛皮のマントに棍棒を携えたメイが、木製の豪華な椅子に鎮座していた。
「つ、ついにメイが、野生の島の王様になってしまったわ――――っ!!」
「わああああーっ! これは違うんです――――っ!!」
どこからどう見ても大亀の島の王様になっているメイ王に、驚愕する海賊船長レン。
その光景に、感嘆するまもりと迷子ちゃん。
そんな中ツバメは集まる島民と動物たちの間を進み、スッと静かに片ひざを突いた。
「……王よ、ついにその時が来たのですね」
「その時ってどんな時なの――――っ!?」
メイ王の叫び声は、島の空へと消えていった。
◆
「なるほど、そういうクエストだったのね。てっきり私はメイが全てを受け入れて、野生の王になったんだとばかり」
「いいえっ! わたしは何もあきらめておりませんっ!」
メイは首と尻尾をブンブン振って否定する。
今回のクエストはこういう形で歓待を受け、仲間の到着を待つという形になっていたようだ。
「メ、メイさんだ……」
「メイですっ」
一方この距離で初めて見るメイに、あたふたする迷子ちゃん。
「遺跡の時は、お世話になりましたっ!」
「実は帝国でも、隠し扉を見つけたのは迷子ちゃんさんだったのです」
「おおーっ! すごーい! ありがとうございますっ!」
「いえいえ! あの時は、急にいなくなってしまって申し訳ありませんっ!」
頭を下げる迷子ちゃん。
「ここで集合したってことは、この島から次のクエストに進むことになるんでしょうけど……今日は時間も遅いし、これまでのことでも話しながら過ごしましょうか」
するとレンが、そんな提案をした。
見れば時間は夕暮れ時。
南国特有の桃色の混ざった夕焼けの中、村の建物にも炎が灯る。
「いいと思いますっ」
「そ、それならお菓子ありますっ」
やはり、焦って進むわけではないメイたち。
余裕を持った行程に感嘆する迷子ちゃんは、思い出したように動き出す。
「お茶、用意させていただきますよ!」
そう言って取り出したのは、ティーセット。
ポットとカップと紅茶。
そしてケトルに水筒から水を入れ、小型のたき火台のような物の上に乗せた。
「【着火】!」
指先から出た炎が【たき火台】に灯り、お湯が沸く。
あとはポットからカップへと注げば、紅茶の完成だ。
「すごい……飲食システムって本当に、外で色々できるようになってきてるのね」
「迷子ちゃんさんは、メイドなのだそうです」
「はいっ、メイさんたちがカフェでメイドをしていたのを見て、思わず転職しちゃいました!」
「それでメイド服姿だったのね」
「さすがに今回の遭難で、ボロボロになってしまいましたけど」
装備品は壊れたりしないが、使い続けると破れたり穴が開いたりする。
それを『味』として楽しむことも、修繕することもできるのだが、今回はちょうどそのタイミングが遭難中におとずれてしまったようだ。
冒険中に入れる紅茶は、メイたちが「いつかできたら」と思っていたこと。
歓喜しながらさっそく、まもりの買ってきたココナッツ菓子と一緒に頂く。
「おいしいーっ」
「うん、おいしいわね」
「これは素晴らしいスキルですね」
「はひっ! お菓子がよりおいしくなる最高のスキルですっ!」
「よかったですっ!」
メイの笑顔に、歓喜する迷子ちゃん。
「しかも、ステータスにも若干の向上が見られるわ。メイドってなかなか面白い職業になってそうね」
どうやらメニューによって、一時的な変化も起きるようだ。
こうしてメイたちは漂流後のクエストの話や、迷子ちゃんの迷子エピソードを楽しみながら、南国の夕焼けを楽しむのだった。
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