876.vs海賊団
「アタシたちは、この大亀の上で移動しながら暮らしてるんです」
「おおーっ! なんだか楽しそうっ!」
少しずつ南下することで、常に温かな気候で日々を過ごす。
そんな亀の島を想像して、ほんわかするメイ。
「でも、この島に雨を降らせたり、風を吹かせたりする『宝珠』の存在を、海賊に知られちゃったみたいで……」
「先日この島に流れついた男が、どうやら海賊だったらしくてな……『宝珠』を奪われたらこの島は終わりだ。我らはまだしも、動物たちには逃げられないものもいるだろう……」
村長らしき者は、ため息を吐く。
「この島にとんでもない数の海賊が来るんですよ! こっそりイルカで見に行ったら、港から出てくるたくさんの海賊船が見えて!」
海を指さしながら、怯える少女。
「……来やがったぞ! 船が、船がこっちに向かってきてやがる!」
すると樹上から監視を続けていた男が、慌てた声を上げた。
「どうか、どうか島を守ってくだされ! 大地の……いや野生の王よ!」
「「「おねがいします!」」」
「そんなに頭を下げないでくださいっ! もちろん、がんばらせていただきますっ! でも……野生の王はやめてくださーいっ!」
「お願いします、王よ!」
「「「野生の王よ!」」」
村長に続いて、数十人の住民が一斉にヒザを突き頭を下げる光景。
メイはブンブン手を振りながら「やめてくださーい!」と叫ぶ。
「ヤツらが、島に接岸したぞ!」
いよいよやって来た海賊船。
メイは踵を返し、「よしっ」と気合を入れた。
「いってきます! 【バンビステップ】!」
肩に乗ったいーちゃんと共に、メイは海賊船の乗りつけてきた浜辺へと向かう。
そこにはすでに、五隻に及ぶ海賊艦隊が接岸していた。
「「「行けえええええええ――――ッ!!」」」
浜にハシゴを下ろし、一気に島に乗り込んでくる海賊たち。
その数は、前衛の先行部隊だけでも500人を超える。
盛大な掛け声と共に、駆けてくる剣の男たち。
もちろん一人で相手にするには厳しい数だ。
だがまとめて駆けてくる海賊たちは、メイには格好の獲物となる。
「【ソードバッシュ】!」
「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」
あいさつ代わりに放つ衝撃波が、いきなり前衛の海賊たちを吹き飛ばした。
するとその隙を突いて二手に分かれた前衛海賊隊が、一気に距離を詰めてくる。
その数は、左右合わせて300体にも及ぶ。
高速移動でメイのもとまで来た海賊Aの曲剣をかわし、海賊Bの【連続突き】をバク転で回避。
海賊Cの振り降ろしを小さなサイドステップ避けて、海賊Dの振り払いをしゃがんでかわし、剣を握り直す。
「【フルスイング】!」
詰めてきていた海賊8体と一緒に、まとめて12体を一撃で斬り飛ばす。
白砂を巻き上げて転がっていく海賊たちの隙間から投擲された投げナイフを、首の傾けでかわしたところに、3体の海賊が連携を仕掛ける。
剣の振り上げをかわすと、続く海賊が跳躍からの振り降ろし。
これをバックステップで避けた瞬間、海賊の頭上を越えるように飛来したのは、紅色の飛竜。
三人目はどうやら、従魔タイプだったようだ。
接近しながら放つ猛烈なブレスが、容赦なくメイに迫る。
「そういうことなら! 【装備変更】っ!」
しかしメイは動じない。
【王者のマント】を羽織り仁王立ちのメイを前に、放たれた豪炎は霧散。
これだけでは止まらない。
「い、いきますっ! 【ゴリラアーム】!」
なんと通り過ぎ際の飛竜の尾を、つかんで捕獲。
そのまま一回転して3体の海賊を弾き飛ばすと、さらにスキルを発動。
「【大旋風】だーっ!」
飛竜を振り回しながら、迫る海賊の大軍に真正面から接近。
「それそれそれそれーっ!」
「「「うおおおおおお――――っ!?」」」
荒れ狂う台風のようなメイの回転攻撃が、次々に海賊を吹き飛ばしていく。
「せーのっ、それええええー!」
投じた飛竜はそのまま後衛隊に直撃し、海賊たちは海面をバウンドして落水。
「ふう」と息をつくメイ。
すると残った後衛の海賊たちが、一斉に矢を放った。
「はい、いーちゃんっ!」
しかし飛んできた矢はまとめて、海賊たち共々暴風に弾き飛ばされ海へ。
「ありがとーっ!」
メイは肩のいーちゃんの小さな頭を、人差し指でなでてほほ笑む。
一気にその勢力を失った海賊団。
最後に控えるのは、羽付き海賊帽をかぶった船長だ。
「【波越え】」
船の舳先を強く蹴り、長く速い跳躍で迫る。
「【スラッシュウェーブ】!」
斬り下ろす曲剣が、地面から水刃を天高く突きあげる。
「ッ!! 【アクロバット】!」
駆け抜けていく水刃を、側転でかわす。
すると船長はすぐさま砂を蹴り上げ接近。
「わっ! わわっ!」
払い斬りから放たれる水刃を、メイはバク転でかわす。
続く返しの払いは、そのまま伏せることで回避。
尻尾の先をかすめていく飛沫に、思わず「ひゃっ」と背筋を伸ばす。
「よいしょっと!」
反撃は、両手に力を込めての起き上がるのと同時に放つ【尾撃】
すると頭をはたかれた船長はわずかに体勢を崩した後、思わぬ反撃に出た。
「【フックショット】!」
「うわーっと!?」
コートの袖から飛び出した【ロープフック】がメイを捉え、そのままグルグル巻きにする。
船長は大きなバックステップで距離を取り、向けるは海賊映画で見かけるような銀細工付きの銃。
「【烈火高速射撃】ィィィィ――――ッ!!」
気合の叫びと共に放たれる、銃弾のごとき速度の炎弾。
相手を捕縛したうえで放つ、必殺の連射スキルが猛烈な火を噴く。
「やあっ!」
しかしこのスキル、【腕力】次第で解除の時間が変わってくる仕様。
メイはロープを一瞬でちぎって飛ばし、スキルを発動。
「【装備変更】っ!」
手にした【魔断の棍棒】を構え、スイングを開始する。
「それっそれっ! それそれそれそれっ!」
船長の猛烈な銃撃は、銃身から火花を散らすほどに苛烈。
しかしメイの弾き飛ばしは、見事に全弾を弾き飛ばしていく。
そして最後の一撃。
放たれるは、超高速の炎砲弾。
「【フルスイング】だああああ――――っ!!」
これに対してメイも、全力スイングで対抗。
打ち返した炎砲弾は船長の肩に直撃して、爆炎を巻き上げた。
「いきますっ!」
吹き飛ばされ、倒れ込む船長に向けて駆け出すメイ。
「【バンビステップ】からの【ターザンロープ】!」
投じた【ターザンロープ】は、倒れ込む船長を捕らえた。
メイはそのままその場で全力回転。
「せえええーのっ! それええええええ――――っ!!」
勢いのままに、海賊船長を海へぶん投げた。
「……あっ」
船長は遠く遠くの海面に落下。
メイ、ここで気づく。
「こういう時って、どうなるんだろう……」
ボス戦のはずなのに、突然訪れた静寂に戸惑うメイ。
クエストのボス格を遠く海に放り投げて、HPが残ったまま戻って来られない場合、どうなってしまうのか。
このまま戻って来ずに、クエストが進まないなんて言うパターンもあったりするのかもと思って、ちょっと慌てる。しかし。
「帰ってきたー!」
船長は律儀に、平泳ぎで現場に戻ってきた。
メイは歓喜にピョンピョンと飛び跳ねた後、船長が砂浜に上がってきたところで、剣を掲げてスタンバイ。
「いきますっ! 【ソードバッシュ】だああああ――――っ!」
「うおおおおおお――――っ!!」
駆ける衝撃波。
ようやく戻ってきた船長は海面を何度も跳ねて、再び遠く海に消えた。
「た、退却だ! 退却だぁぁぁぁ――――ッ!!」
すると海賊船団は、一斉に退却を開始。
「おおっ……! 海賊共が引き上げていくぞ!」
戦いを見守っていた村長たちが、動物たちが大喜びで駆けてくる。
「うわわわわー!」
まず猛禽が肩と頭にとまり、猪親子が突撃。
猿が飛びつき、ウサギも特攻。
その勢いには、いーちゃんもタジタジ。
動物たちの熱烈な歓待に、メイは思わず尻もちをつく。さらに。
「やはり! やはり言い伝えは本当だったんだ!」
「ありがとうございます!」
「いえいえーっ」
「助かりました! 本当に助かりましたっ!」
「いえいえーっ」
「その類まれなる力、危機に現れる動物たちの美しき王! やはりあなたこそ伝承の――――野生の王様だ!」
「野生の王ではございませーんっ!」
歓喜の声を上げながら、メイのもとに駆けてくる村人たち。
村長はそんなメイの姿を見て、気合を入れる。
「さあ準備を始めるぞ! 我らを救うためにやって来た王のため、できる限りの歓待をさせていただくんだ!」
「「「はいっ!!」」」
村人たちの元気な声が、砂浜に鳴り響いた。
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