874.進めナイトメア海賊団!
目的は仲間たちとの再会。
そう告げると、骸骨船員たちは船体の横っ腹から突き出たオールで舟をこぎ出した。
どうやら、ガレー船としての一面もあるようだ。
「なんだか、船内が騒がしくなってきたわね」
しかし風が出てきたら、船の進行は帆に任せてしまう。
船内ロビーに集まってきた骸骨船員たちは、楽器を持ち出し鳴らし始めた。
乾杯を繰り返している船員の木製ジョッキは、中身が空。
そんな賑やかな光景に、レンも楽しそうに手をあげてみる。
すると船員たちが、それに合わせてジョッキを掲げた。
「あはははは、なによこれっ」
海賊らしい陽気さで、進む船。
レンも空のジョッキを取り、骸骨船員たちの音楽を楽しむ。
すると突然、一人の骸骨船員がロビーに駆け込んできた。
「どうしたの?」
船員は大慌てで、甲板の方を指さした。
念のため、【常闇の眼帯】だけ装備。
急な緊張感に背中を押されるようにして、レンは甲板に出る。
そこにいたのは大型の海獣、大ダイオウイカ。
ここで船と船員にHPゲージが現れた。
霧の海の中、高々と上がった触手が振り下ろされる。
「っ!」
レンはこれを回避。
すると叩かれた船が揺れて、骸骨船員たちが体勢を崩した。
さらに船のHPが、1割ほど減少。
「やっかいな距離からの攻撃ね、でも! 【魔砲術】【誘導弾】【フレアストライク】!」
先手は打たれたが、先制したのはレン。
炎砲弾は大ダイオウイカに直撃して炎を上げる。
HPは2割弱ほど減少。
やはり、炎には弱いようだ。
すると反撃は、触手の三連打。
叩きつける攻撃を、レンはしっかり引き付けて回避する。
この間も船のゲージはさらに1割ほど減り、ゆっくり戦っている暇がないことを理解する。
さらにここで甲板に飛び上がってきたのは、体長1メートル弱ほどの電気クラゲたち。
「小型の相手はお願いっ!」
船員たちはしっかり、船長レンの命令に合わせて動く。
手にした剣で、電気クラゲたちに攻撃を仕掛ける。
「くるっ!」
レンは大ダイオウイカの【放水鉄砲】をかわして杖を構える。
「【魔砲術】【誘導弾】【フレアストライク】!」
直撃し、上がる炎。
「今よ! 続いて!」
すぐに指示を出す。
すると骸骨砲撃手が、大砲を使っての追撃に成功。
大ダイオウイカのHPを、6割近くのところまで持っていくことに成功した。
「そこ、任せて! 【悪魔の腕】!」
飛び掛かる電気クラゲたちの【電撃体当たり】に、押される骸骨船員。
すぐさま魔法で叩き潰し、攻撃を受けようとしていた骸骨船員をフォローしてみせる。
すると大ダイオウイカが、突然海に沈んだ。
そこから力強く海面に上がると、起きた波が船を大きく揺らす。
「ッ!!」
これにはレンもさすがに体勢を崩し、ヒザを突いた。
生まれた隙、大ダイオウイカは当然攻撃に入る。
「触手の払い……っ!」
【浮遊】でかわせば、レンにダメージはないだろう。
だが間違いなく船員たちは高いダメージを受け、中には海に落ちる者も出るはずだ。
「そうはさせないわ! 【誘導弾】【フリーズストライク】!」
ここでレンは、回避を捨てた。
敵本体ではなく、あえて触手を狙って攻撃を放つ。
外せば骸骨船員共々、海に弾き落とされる可能性もある危険な賭けだ。しかし。
「やった!」
レンはこの難しい魔法攻撃を、見事に的中させる。
触手の進路を変え、払いの一撃をそらすことに成功。
これによって甲板上の骸骨船員たちは優位を取り、電気クラゲたちを片付けていく。
「……くるっ!」
しかしそこに迫るのは、同時に放たれた六本の触手。
船を貫きに来たその一撃に、レンは即座に【ヘクセンナハト】に持ち替え対応。
「【フリーズブラスト】!」
杖の効果で範囲を広げた氷嵐が、迫る触手を押しとどめた。
「このまま、攻め切る――っ!!」
HPを3割強まで減少させ、触手を押し返したレン。しかし。
「ッ!!」
ここに迫るのは、電気クラゲの親玉個体。
流れを断ち切る登場に、レンが唇を嚙んだところで――。
リーダー骸骨船員が、【連続突き】で大型クラゲを斬り飛ばした。
レンが骸骨船員たちを守ったことでやはり、戦いに余裕が生まれていたようだ。
「よくやってくれたわ! 最後は少しオマケさせてもらうわよ! ――――【魔眼開放】っ!」
深い霧に包まれた船の上でも、その黄金の瞳は煌々と輝く。
「これで終わり! 【フレアバースト】!」
魔力を上昇させ、さらに【色炎のお守り】を使用して放つ爆炎は、紫色の業火を巻き上げ敵を焼き尽くす。
紫の火花を散らしながら、沈んでいく大ダイオウイカ。
「ふー、なんとかなったわね」
レンは杖を、バトンのように回転させながら下ろす。
船にもHPゲージがあるため、実はなかなか厳しいこのクエスト。
見事な連携で、船どころか骸骨船員たちも欠けさせることなく完全勝利。
早くも歓喜の演奏を始める海賊たちと、喜びのハイタッチ。
楽しい音楽を響かせながら、幽霊海賊船は海を進んでいく。
「どうしよう。このクエスト、すっごく楽しいんだけど……っ!」
◆
「「「…………」」」
たどり着いた島には、すでにツバメとまもり、そして迷子ちゃんがやって来ていた。
現れた船の威容に、三人は言葉を失う。
ボロボロの幽霊船から出てきたのはなんと――――レンだった。
「「レンさん!?」」
その風体に、思わず声が重なるツバメとまもり。
羽付き海賊帽に眼帯、そして曲剣を水着に提げる姿は、どう見てもやり手の海賊船長。
しかも骸骨の船員たちを、引き連れる形で降りてきた。
「お待たせ。メイはまだなのね」
別れた時と雰囲気が違い過ぎて、反応に困るツバメたち。
「紹介するわ、海賊船の仲間たちよ」
ツバメたちのところまで進んだところで、レンは振り返って船員たちを紹介する。
「……どうしたの?」
しかし仲間たちと再会したレンを見て、骸骨船員たちは足を止めて敬礼。
そのまま船に戻って行く。
「ちょっと、どうしたのよ!?」
「……お別れのあいさつではないでしょうか」
何となく察したツバメがそう言うと、レンは驚きとともに振り返る。
「え!? い、嫌よ! 私はこの船の船長なんだから!」
しかし骸骨船員リーダーは深く一度頭を下げると、そのまま船員たちと共に船に乗り込んでしまった。
そして、出航。
「待って! 私はこのまま海賊団を旗揚げするって決めたの!」
レンは、去っていく幽霊船を追いかけ走り出す。
「ツバメとまもり、メイがいれば世界の海を制覇できるわ! デフォルメしたメイの顔をマークにした海賊旗だってイメージできてるの! 待って! 待ってー!!」
「レンさん! 無理やりついて行ったらどうなるのか気になりますが、このクエストはこれで終わりなんです……っ!」
「お、おちついてください……っ」
去っていく幽霊船を追いかけようとするレンの腰に、飛びついて止めるツバメとまもり。
意外な展開に驚く迷子ちゃん。
ホラー展開が予想された、幽霊船クエスト。
意外な形で、出会いと別れを満喫したレンなのだった。
「私の……私の海賊団がああああ――――っ!!」
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