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87.海魔の王

 船着き場を出たメイたちは、淡い輝きを放つ石畳の路へと戻る。

 そのまま進んでいくと、遺跡の本殿らしき建物へとたどり着いた。

 海の青い輝きの中にある遺跡内部は、綺麗な石造りをしている。


「ここは特に、アイテムとかクエストの類はなさそうね」


 一通り内部を見て回ったところで、レンがつぶやいた。

 三人は神殿を思わせる本殿を出て、前庭へと足を伸ばす。

 広い前庭には、淡く輝くブロックが放射状に敷かれている。

 ここでも地上のような挙動が可能で、呼吸ゲージの心配もないようだ。

 メイたち以外にプレイヤーの姿はなく、崩れかけの石柱が立っているだけの光景は神秘的。

 そしてそんな何もない場所だからこそ、レンは注意深く辺りを見回す。すると。


「レンちゃん、あれって……」


 メイの【遠視】が、早くもその姿を捉えた。


「あの白い輝きは、この前のイルカでしょうか」


 予想通り、始まったイベント。

 やって来たのは、マッドシャークとの戦いの際に出会った白イルカ。

 後を追ってきたのは『海魔の王』

 巨大化したシャチの頭部に長い角を生やした、イッカクのような姿の魔物だ。

 その紺色の全身には、赤く光る文様が刻まれている。

 長く禍々しい巻角は、槍のように鋭い。


「あぶないっ!」


 一直線に白イルカを狙う海魔の王。

 白イルカの放つプリズムのような輝きに、その身を焼かれる。

 しかしその一撃では、ダメージは軽微。

 海魔の王は、海中で大きく一回転。

 その長い槍角で、突撃をしかけにいく。


「あっ! あぶないよーっ!」


 思わず叫び声をあげるメイ。

 白イルカはこれをかわすも、海魔の王の長く鋭利なヒレに切り裂かれた。

 退避しようと距離を取る白イルカだが、受けたダメージのためかその速度は目に見えて遅い。

 まるでゆっくりと墜落するように、白イルカは石畳の端に不時着した。


「レンちゃん、あの子がルルタンの海を守ってきたんだよね?」

「そういうことね」

「助けよう!」

「いきましょう」


 レンは白イルカにHPゲージがない事を確認。

 防衛クエストでないことを把握して杖を取った。


「ルルタンの冒険の、集大成ってわけね」


 白イルカの前に立ちふさがるメイ。

 表示される海魔の王のHPゲージ。

 その鋭い目が、目標をメイに切り替えた。

 海中に強烈な衝撃波を起こし、高速で迫ってくる。


「おっと!」


 猛烈な喰らいつきを、横へのステップ一つでかわすメイ。

 すると海魔の王はそのまま真横を通り過ぎていった。


「【バンビステップ】!」


 追って来たメイに対して、くるりと一回転。

 全身の紋様を輝かせる。


「ッ!?」


 付近の水が大きくブレる。

 放たれた音波が、メイの動きを止めた。


「【ヴェノム・エンチャント】【電光石火】」


 そこに飛び込んで来たのはツバメ。

 高速の二連撃をくらった海魔の王は、上昇して距離を取る。


「ありがとう! ツバメちゃん!」

「まさか敵に【雄たけび】を使われるとは……ッ!?」


 安堵の息もつかの間。

 海魔の王がプロペラのように一回転すると、その付近に海水が凝縮。

 生まれた数十発の水の弾丸が、三人に襲い掛かる。


「【バンビステップ】!」


 【野生回帰】で【敏捷】が向上しているメイは、これを余裕で回避する。


「【加速】【跳躍】!」


 ツバメもわずかに掠ったものの、微量のダメージで済んだ。


「弾道に軽く誘導がかかってるの!? まずっ!!」


 しかし距離を取っていたレンは、誘導によって被弾。


「一つ当たっただけで4割!? さすがに防具なしは厳しいわね……っ」


 一気にHPを減らされ、悔しそうにうめく。


「メイ、『釣り』はできそう?」

「うん! おまかせくださいっ!」


 そう言ってメイは最前列へ。

 再びの突撃を、しっかり引き付けて回避する。

 すると海魔の王はその場で身体を翻し、今度は尾びれを叩きつけにきた。


「【アクロバット】!」


 これを後方への跳躍でかわす。


「さすがメイね! 【フリーズブラスト】!」


 【銀閃の杖】から放たれた、輝く強烈な冷気が海魔の王に直撃。

 薄くではあるが『凍結』を引き起こした。


「今よ!」

「【電光石火】」


 先行したのはツバメ。

 早い二連撃で斬り抜け相手の後方に回ると、そこから通常の攻撃を三発。

 海魔の王が、凍結から復帰し始めたところで――。


「【紫電】」


 放つ電撃で、再びその動きを止める。


「やああああーっ!」


 そこへ飛び込んで来たのはメイ。


「【ソードバッシュ】! からの……【ソードバッシュ】だー!」


 斬り返しの【ソードバッシュ】まで、きっちりと叩き込む。


「これはオマケよ【連続魔法】【フリーズボルト】!」


 逃げる海魔の王を追う、氷の弾丸。

 その最後の一発がまさにオマケとばかりに、薄くゲージを削った。

 見事な連携。

 中でも【野生回帰】メイの【ソードバッシュ】が大きく、一気に三割強ものHPゲージを削り取ってみせた。

 だが、これだけでは終わらない。

 イチかバチかなら、失敗してもいいこのタイミングは絶好。


「足元の悪い場所ではございますが、よろしくお願いいたしますっ!」


 メイが右手を突き上げる。

 魔法陣から現れたのは、ゴーグルにシュノーケル姿の巨大グマ。

 三人から距離を取る海魔の王に、グレート・ベアクローを叩き込んだ。


「やったあ! こんなところまでありがとーっ!」


 追撃は見事成功。

 怒涛の攻勢で、一気に追い込んでいく。

 しかし海魔の王はここで紋様を光らせると、ぐるりと一回転。

 すると海中に、『お返し』とばかりに魔法陣が現れた。

 ゆっくりとその姿を現す、新たな魔物。


「そうくるわけね……これはやっかいだわ」


 帰っていく巨大グマと入れ替わるようにして現れたのは、クラーケンだった。

誤字脱字報告ありがとうございます! 適用させていただきました!


お読みいただきありがとうございます。

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