859.集結!
ツバメの【斬鉄剣】によって斬り飛ばされた空の王は、その大きな翼を広げて神殿のガレキを吹き飛ばした。
残りHPは6割強。
「空に戻っていくわ……!」
再び空を舞い、咆哮と共に大量の羽を放つ。
今回は直接的な攻撃ではなく、雪のようにひらひらと舞い落ちてくる形だ。しかし。
一度空の王が翼を振るえば、巻き起こる嵐に羽が荒れ狂う。
「これは……っ! 【加速】【リブースト】!」
「【バンビステップ】【ラビットジャンプ】!」
嵐の中に、無数の刃が混ざるようなそのスキル。
吹きつける羽の嵐から、ツバメとメイは慌てて離れる。
すると今度は風を操り、まもりの方へ。
「【コンティニューガード】【地壁の盾】!」
激しい衝突音が響く中、まもりはしっかり羽刃の嵐を受ける。
通常の防御であれば、HPを削り続けるタイプの攻撃。
羽ばたき一つで風は向きを変え、今度はレンのもとへ羽刃の嵐を運ぶ。
「そうはいかないわ!」
レンはこれを【低空高速飛行】からの転がりで、かすめるにとどめた。
しかし舞い散る羽の中、見えたのは空の王の次撃モーション。
視界を塞ぐ羽によって、レンは気づくのが遅れた。
咆哮と共に放たれるのは、大型の十字空刃。
「きゃあっ!」
その速度はすさまじく、回避し切れなかったレンが背中を斬られて転がる。
一撃で3割を超えるダメージを受けたレンは、一気にHPが半分を切った。
ここで空の王は、レンに向けて降下を始める。
「【バンビステップ】!」
「【加速】!」
迎えたレンの窮地。
メイとツバメは走り出し、そこにまもりも続く。
滑空状態に入った空の王はそのまま、レンに向けて超加速。
しかしレンを攻撃することなく、まさかの急ブレーキ。
「あれっ!?」
「なっ!?」
「え、ええ!?」
攻撃の中止という予想外の展開に、驚く三人。
空の王は、その場で翼を広げて大回転。
巨大な翼による攻撃と共に、生まれた無数の空刃が付近一帯を切り刻む。
「あいたたっ!」
「くっ!」
メイが脚を斬られ、ツバメは肩を斬られて転がる。
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
慌てて起き上がったレンがすぐさまフォローの炎砲弾を放つが、これを空の王は風の壁を起こして相殺。
反撃とばかりに広げた翼。
開いたクチバシに収束するのは、強烈な緑の輝き。
放つのは、得意の暴風弾だ。
「【かばう】!」
それを見てまもりは大急ぎでレンの防御に向かうが、空の王の狙いはメイだった。
「わああああああああ――――っ」
一瞬で視界から消える。
そんな勢いで吹き飛ばされたメイは神殿を一つ、また一つと突き破り、冗談のような跳ね方をして石柱に叩きつけられた。
衝突ダメージにもかかわらず、メイから3割近いダメージを奪い取る威力は恐ろしい。
「ツバメ! お願いできる!?」
「はいっ! 【疾風迅雷】【加速】!」
メイへの追撃を抑えるため、ツバメは走り出す。
すると空の王は、滑空からの急加速突撃に入った。
「【加速】【加速】!」
ツバメはこれを二度の高速移動でかわす。
すぐさま振り返ると、そこには空中で一回転して再接近してくる空の王。
スクリュー回転か、爪による切り裂き、もしくはつかみ投げ。
ギリギリまで集中しての見定め。
空の王が選んだのは、急制動から翼による回転撃だった。
「【加速】!」
ツバメはここで何と前へ。
「この場所なら、その技は当たりませんっ! 【スライディング】!」
飛びかう風刃の嵐は、唯一空の王の脚元には届かない。
「【フレアストライク】!」
すぐさまレンが続く炎砲弾を放ち、時間を稼ぐ。
すると空の王は翼を広げ、巻き起こした嵐でツバメと炎をまとめて吹き飛ばした。
「くっ!」
接近でも、遠距離でも。
その高い火力を見せつける空の王は、やはり大物だ。
「あいたたたた……」
だがこの展開は、メイにとっては好都合だった。
瓦礫となった神殿に驚きながら立ち上がり、状況を確認。
空の王の強さをあらためて確認して、「よしっ」と気合を入れる。
ここでメイは、流れを変えにいく。
「【蓄食】」
近くの石柱にそっと隠れて、一気に【腕力】上げのバナナを10個使用。
ステータスを上げる。
そしてピョンピョンと二度の小さな跳躍で、感覚を確かめると――。
「いきますっ!」
クラウチングスタートの姿勢から、弾丸のように飛び出す。
「【裸足の女神】!」
空の王目がけて一直線。
すさまじい速度で迫るメイに気づいた空の王は、羽を飛ばして応戦。
もはや壁と呼べる量の羽刃が、一斉にメイに迫る。しかし。
「がおおおおおおおお――――っ!!」
放つ強烈な【雄たけび】は、メイを狙う大量の羽をまとめて吹き飛ばす。
「やああああ――っ!!」
そのまま接近し、叩き込む振り降ろし。
そこから大きく踏み込み、放つ振り上げ。
「【フルスイング】!」
さらに続けて放つ、豪快な振り降ろし。
3割近いHPを削る連撃を喰らった空の王は、すぐさま退避に動く。
わずか一度の羽ばたきで大きく空に舞い上がり、そのまま距離を取りにかかる。
「逃がしませんっ! 【ターザンロープ】!」
しかしメイが投じたロープが、その足に絡みつく。
空へ登ろうと、全力で羽ばたく空の王。
「「「っ!!」」」
それによって猛烈な風が吹き荒れ、レンやツバメは身体を低くして転倒を防ぐ。
まもりも盾に隠れ、始まるメイと空の王の力比べに視線を集中させる。
王と王の力比べ。
その均衡を破ったのはメイだった。
「ゴ……【ゴリラアーム】だああああ――――っ!!」
スキルの発動と共に均衡が崩れ、メイは巨大な空の王を強引に引き戻す。
そしてそのまま、豪快に振り回し始めた。
「う、嘘だろ……大ボス中の大ボスだぞ!?」
「あの大きさの敵を、ぶん回すのか!?」
旅客機を振り回すかのような凄まじい光景に、さすがにあがる驚嘆の声。
誰もがそのすさまじさに驚愕する中、メイはロープを全力で振り下ろす。
「せーのっ! それええええええ――――っ!!」
豪快な回転からそのまま地面に叩きつけられた空の王は、大きく跳ね上がった。
「【装備変更】!」
メイはここで【猫耳】を【狼耳】へ。
「――――それでは、よろしくお願いいたしますっ! おいでくださいませ、クマさん、狼さんっ!」
【群れ狩り】による同時登場は、白狼に乗った巨グマ。
広がる冷気の中、クマ模様の部族衣装を着こんだ族長クマを、乗せた白狼が走り出す。
まずは白狼が喰らいつき、振り回すように一回転。
そのまま獲物を振り上げると、口内に広がった白煙が炸裂して空の王を凍結させた。
すると巨クマはバク宙の要領で白狼から降り、手を伸ばす。
それから片ヒザを突いた子グマが差し出した黒曜石製の槍を取り、そのまま豪快に跳躍。
空中でバトンのようにグルグルと回転し、高らかに掲げてから放り出す。
そして凍結状態の空の王に、【グレート・ベアクロー】を叩き込んだ。
巨狼が喰らい付き、巨クマが叩きつけ、跳ね飛ぶ巨鳥。
化物決戦の様相に唖然としながらも、レンはこの隙を逃さない。
「【魔眼開放】」
その右目が、煌々と黄金に輝く。
向けられる銀の杖。
大きくなびく長髪に、噴き出す魔力が大きく揺らめく。
「震天せよ。空舞う王は、昏き炎に焼かれ堕つ。遺されし慟哭は、軌跡となりて葬を成す――――」
「――――【ダークフレア】!」
集結する闇の炎が炸裂し、空の王を焼き尽くす。
舞い散る紫色の火の粉は、天空遺跡に妖しい輝きを灯らせた。
「詠唱の中に『天空遺跡』を忍ばせなくていいから……っ!」
思わずツバメにツッコミを入れるレン。
これで残りHPは、3割強というところまできた。
「さすが使徒長っ。お見事です……!」
巨大な空の王を焼く黒炎。
その光景に、思わず歓喜の声を上げる黒少女。
ここで再び戦いの優位を取ったメイたち。しかし。
「おい、向こうがマズいぞ!」
マウント氏の目は、もう一体の重騎士型のガーゴイルに向けられている。
剣と盾の大型ガーゴイルは、今にもプレイヤー戦線を突き抜けようとしていた。
「「「くっ!!」」」
大きくプレイヤーを後退させる一撃が、前衛組を弾き飛ばす。
そこへさらに衝撃波の振り降ろしを続けて、しっかりHPを削っていく。
「このガーゴイル、下手なクエストの大ボスより強いぽよ!」
「このままでは、メイさんたちの戦いに支障が出る確率は88%ですね」
「この防衛線を抜かれたとあっては、マウントが取れない……!」
二体の重騎士型ガーゴイル。
見事な連携を見せるスライム兵団は、このまま戦えばランスの重騎士型を打倒できるだろう。
しかしこの優位な状況を捨ててもう剣の重騎士を止めなくては、メイたちの戦いにガーゴイルが飛び込むことになる。
「うわあああああ――――っ!」
ここで剣の重騎士ガーゴイルの中心になっていたパーティが、弾き飛ばされた。
ついに重騎士ガーゴイルがメイたち目がけて動き出し、スライム兵団が分断を決意したその瞬間。
剣の重騎士ガーゴイルは、立ちふさがったプレイヤーを前に動きを止めた。
石柱の上に現れたのは、一人の少女。
「――――こーのタイミングに間に合っちゃうのが、バニーちゃんなんだよねーっ!」
普段着モードにしっかり戻しての登場は、もちろんこの瞬間を見越してのもの。
「【早換え】! バニーちゃんドレスアップ!」
燕尾服の裾のような形をしたスカートを巻いた、白のバニースーツ姿に変身。
「さあさあ、一気にいっちゃうよー! 【因幡ステップ】!」
柱から華麗に着地して、そのまま重騎士型の前へと駆けつける。
そして振り下ろされる剣を難なくかわすと、二刀の包丁を輝かせた。
「【三枚おろし】!」
左右の包丁で計六本の斬撃を決め、反撃の振り上げをかわしてさらにもう一撃。
続く盾の振り回しをしゃがんでかわし、振り上げでもう一発。
見事に騎士型ガーゴイルを翻弄しながら、プレイヤー陣立て直しの時間を稼ぐ。
「あぶないっ!」
聞こえた声は、重騎士型による召喚を教えるもの。
呼び出された小型ガーゴイルが、一斉にバニーを狙って飛ぶ。
「【千切り】!」
しかし振り返りと同時に放つ大きな振りは、一撃で8本の軌跡を描く水平斬撃。
迫る5体同時の攻撃を、斬り飛ばして余裕のポージング。
「さあおいでガーゴイルちゃんたち! 才色兼備の白うさぎが、めーった切りにしてあげる!」
すると重騎士型は再召喚。
迫る小型ガーゴイルの数は、一気に40体。
エサを見つけた鳥の群れのように、一斉に飛び立ち襲い掛かる。
「……お、思ったより、多いかも」
威勢よく声を上げたものの、予想より多いガーゴイルの数にビビりながら、バニーは二本の包丁で立ち向かう。
描かれる三本の斬撃が先行してきたガーゴイルを斬り飛ばし、左の斬撃で続く二体同時の突撃を弾き返す。
「【うさぎ跳び】からの【千切り】っ!」
そして二方向から同時に回り込むように迫ってきた個体の【火炎放射】を両足跳びでかわして、空中で縦回転しながら包丁を振るう。
着地したところに迫る5体の突撃も、8本同時斬撃で斬り飛ばした。
「気をつけるぽよっ!」
聞こえた注意喚起に振り返る。
そこには左右から迫る小型ガーゴイルと、その中心になって猛スピードで飛来する重騎士型。
剣の重騎士は、高速の滑空から手にした剣を振り払う。
「やっばー!」
豪速の斬り抜けを、しっかりとしゃがみで回避するバニー。
「きゃあっ!」
しかし吹き荒れる豪風に、思わず転がされた。
この隙を逃さず、迫る小型の群れ。
敵に集るハチのように、一斉にバニーに群がりに来たところで――。
「【浄化紋】!」
足元の魔法陣から上がる白炎が天を衝き、小型ガーゴイルの群れを吹き飛ばした。
一方速いターンから、再び滑空を始める重騎士型。
その剣を振り降ろしにくるところに、真正面から飛び込んで行くのは夜琉。
「【爆歩】【月狩り】!」
響き渡る金属音。
その一撃はなんと、重騎士型の剣とぶつかり合ってなお止まることはない。
豪快な斬り飛ばしで、敵を石柱に直撃させた。
「今の私たちの状況だと、このガーゴイルたちを止めるのが最善かな」
バニーに手を伸ばしながら、アーリィがほほ笑む。
「テラ・レックス戦でリベンジさせてもらった、お礼をしなければならないからな」
4人はすでに満身創痍。
「メイたちと一緒に、このクエストの結末を見たいにゃん」
「今度は誰も、欠けることなくね」
それでもメイたちと共に、天空遺跡のクエストを達成したい。
その一心で生き延びた者たちが、ここにもう一度集結した。
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