845.王城を抜けて
謎のアサシン集団に、あっという間に倒された一部の追従プレイヤー。
それを見たメイたちは、最上層にある城の内部へ。
乳白色のブロックで造られたホールから、そのままつながった謁見の間に踏み込む。
波紋のような形で造られた緩い円形の階段を三つほど上がると、玉座の天井部には結晶で描かれた、大きなステンドグラス風の絵画。
そこには、三体の巨獣が描かれている。
「……あれ、王都に出てきた獣の王に似てない?」
「あっ、本当だ!」
「確かにそう見えますね」
「は、はひっ! 私も王都のメイさんたちの活躍、広報誌で見ましたっ」
そのまま玉座の前に着くと、その数歩前の足元に円形の紋様が三つ。
「あれれーっ、この紋様はさっきペンギンちゃん追走劇の時に、踏んだら光った仕掛けのやつだよね?」
そういってバニーは、右側の翼を丸くデザインしたような紋様を踏んでみる。
「部族の村にあった転移方陣にも似てるわね」
先ほどは踏んでわずかに遅れての魔力噴出だったため、しばらくそのまま足を乗せていると、紋様が光り出した。
すると玉座の横から正方形のブロックが持ち上がり、そのまま『H』字型に割れる。
中には、黄色の宝玉が収められていた。
「それを持って進めということだな」
「きっとそうだね」
夜琉の言葉に、うなずくアーリィ。
少し変わった造りになっているこの城は、長いホールの中央に玉座があり、その後方もホールと出入り口につながる形だ。
そして玉座の背面側には、下り階段。
こっちはそのまま、内部区画へ潜っていく形になっている。
下りていくと、たどり着いたのは灰色のブロックを積んで作られた、縦に長く広い空間。
「こっちは全然趣が違うのね」
「足がすくむ高さだにゃん」
アクションゲームで言えば、縦型の『落ちながら進む』ステージといったところか。
正方形の乳白色ブロックが各所に浮かび、それを足場にして進めということなのだろう。
「このシステムはラプラタと同じ。今度は下りなのね」
「距離感を間違えて落下すれば、即死ですか」
「こういう広い空間での下りは、どうしても距離感がおかしく感じるな」
「まずは私が先行するわね」
レンが【浮遊】で先行して、移動するブロックをどう乗り移っていくか確認。
最初の中継地点を選び、レンの居る場所を目指して進む形をとる。
三次元の跳躍移動は、なかなか難しい。
それが動くブロックとなれば、なおさらだ。
最初のブロックに乗るとゆっくりと移動が始まり、その先にあったブロックにつながる。
ここで隣接したブロックに移動。
最初のブロックは、元の位置に戻って行った。
すると乗り換えたブロックの斜め下に、新たなブロックがやって来る。
このブロックは『止まらず通り過ぎる』ため、距離感を間違えれば即死の飛び降りとなる。
いきなり走り出す緊張感。
「……今です!」
ツバメを先頭に、一気に降りていく。
【敏捷】型の面々は問題なく、これをクリア。
「っ!」
しかし最後に跳んだ灰猫は少し短く、ギリギリ届かなそうだ。
「はいっ」
「ありがとにゃん」
ここはメイが手を引きフォロー、灰猫は安堵の息をつく。
7人が飛び乗ったブロックは、そのまま進んで停止。
「次は一時的にブロックが一列に並ぶから、そのタイミングで駆け抜ける形ね」
離れ小島のように点在する、12のブロック。
その高さは全て同じ。
左右への移動中、一時的に並んで一本道を作るという仕掛けのようだ。
「少しずつ止まって進むと……ブロックが一度プロペラ回転するんだね」
一本道になった時に、しっかり駆け抜ければ問題なし。
だが一度道の途中で立ち止まった場合、ブロックは離れた先で回転してまた近づく。
回転時にタイミングを合わせて垂直ジャンプができなければ落下というのは、なかなか難しそうだ。
「ならば灰猫は【爆歩】で連れて行こう」
「よろしくにゃん」
「まもりちゃんは、わたしが背負いますっ」
「は、はひっ。よろしくお願いしますっ」
8人は、レンの待つ『三つブロックが隣接する中継地点』を目指してタイミングを待つ。
そして12のブロックが、直線の道を作り出した瞬間。
「【加速】【リブースト】!」
「【リトルウィング】【エアダッシュ】!」
先行してツバメとアーリィがスタート。
「【爆歩】! もう一度【爆歩】!」
続けて灰猫を背負った夜琉が、二度の高速低空跳躍で駆け抜ける。
「【装備変更】【バンビステップ】!」
そして最後はメイ。
「大丈夫か?」
すでにジグザグになっているブロックに、思わず夜琉が心配の声をあげる。
しかしメイはまもりを抱えたまま、離れていくブロックを見事な足運びで駆け抜ける。
「おお、これは見事だ!」
「【ラビットジャンプ】からの【アクロバット】!」
最後は華麗な回転跳躍で、難なく着地。
思わず拍手する夜琉に、「やりました!」と笑うメイ。
離れていくジグザグな道を、まもりを背負って駆けた。
普通に考えればかなりの難題だが、メイには問題なかったようだ。
「これだけ隙間ができちゃうと厳しいわね。バニーは次の回で――」
そうレンが言うと、バニーは「ちっちっちっ」と指を振る。
「このくらい、バニーちゃんには余裕だよっ! 【因幡ステップ】!」」
走り出すバニーは、さらに離れていくブロックを飛び跳ねながら進むという、離れ技を見せる。
「それ! それっそれっそれっ! はいっ!」
そのままメイたちを跳び越えて、一つ先のブロックに着地したバニーは、くるっと可愛く振り返る。
「おおーっ!」
余裕の決めポーズ。
メイが送る拍手に、気持ちよさそうにする。
「バニー、横! 横!」
「ん……? え、ちょっと待って!」
アーリィが慌てて指をさす。
バニーの横側から接近していたブロックは、今足場にしているブロックと隣接するのかと思いきや、一段分高い。
気付いた時には、もう目の前。
バニーはそのまま、横からきたブロックに押し出される。
「ふぎゃああああーっ」
「バニーちゃん!」
メイは背負っていたまもりを下ろすと、落ちたバニーを追ってそのままダイブ。
伸ばした左手でバニーの腕をつかんだ。
「まもりちゃん! お願いしますっ!」
「はひっ!」
「【ターザンロープ】!」
空中で身体を反転させたメイは、右手で【ターザンロープ】を放る。
その狙いはまもりだ。
【腕力】と【耐久】のあるまもりは、腰にかかったロープをつかんでその場に座り込む。
そしてすぐに、レンとツバメ、アーリィがまもりにしがみついた。
こうなれば後は、ロープを引き上げるだけでいい。
夜琉の【腕力】なら、二人の少女を持ち上げるくらい問題なしだ。
「……ちょーしに乗って、申し訳ありませんでした」
目を白黒させながら、ブロックの上で土下座するバニー。
「こういうミスは、なかなかないから新鮮ね」
「バニーはメイちゃんたちと一緒になってから、いつも以上に元気だよね」
最近は集合時にスキップで現れるバニーを思い出して、アーリィは苦笑い。
「あっ」
すると、バニーの乗ったブロックが動き出した。
バニーはそのまま、土下座しながら遠ざかっていく。
「あははははは!」
シュールな状況に、皆うっかり笑ってしまう。
「でも、バニーが調子に乗るのも分かるね」
「事実、メイたちと進む冒険は楽しいからな」
「まったくだにゃん」
夜琉たちは、そう言いながらバニーを優しく見送るのだった。
「手を振るなーっ!」
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