843.加熱する戦い
ツバメとレンを融合したコピー体。
その烈火のごとき攻撃に、四人は大きく振り回されていた。
「【ていくうこうそくひこう】【せんかいひこう】【ゆうどうだん】【れんぞくまほう】【ふぁいあぼると】」
今度は旋回しながら放つ炎弾が、弧を描いて飛来。
これを必死にかわして、反撃に入るレン。
「【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】!」
「【かそく】【りぶーすと】」
「ッ!?」
すると突然足を着き、飛行から走行へ変更。
レン目がけて真っ直ぐ、高速移動で接近。
『防御崩し』の類でないことを祈りながら、レンは防御に入る。
「助かった!」
運良く通常攻撃を引き、ダメージは1割程度に収まった。
「【リトルウィング】【エアダッシュ】!」
「【ちょうやく】」
このタイミングで横から入ってきたのはアーリィ。
しかしコピー体は、後方への高いジャンプで剣の振り降ろしを回避した。
「ここだ!」
さらに生まれる着地の隙を狙い、夜琉が距離を詰めに行くが――。
「【れんぞくとうてき】」
「っ!」
放つ【雷ブレード】に、足止めを喰らう。
触れれば即『硬直』となるそのけん制に、夜琉はさすがにその場を動けない。
「初見での接近戦は厳しいでしょうし、スキルを知ってるツバメが相手をして、私が魔法で『回避』行動を取らせる。その直後を夜琉とアーリーが突く、この形でいきましょう!」
「はい! 【疾風迅雷】【加速】【加速】!」
ツバメが攻勢に出る。
【加速】の連続で、一気にコピー体の前へ。
放つ短剣による三連撃。
これをかわしたコピー体は反撃に入る。
「【ふれあすとらいく】」
突き出された手、ツバメがこれを伏せてかわしたところでレンが動く。
「【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】」
「【すらいでぃんぐ】」
「【爆歩】【大嵐祓い】!」
コピー体が地を滑ってかわしたところを狙い、夜琉が動き出す。
大きく速い跳躍で踏み込み放つ、豪快な大太刀の回転斬り。
「【ちょうやく】」
コピー体は迫る刀身を後方への跳躍でかわすが、巻き起こる暴風によって着地際に手とヒザを突いた。
「【エアダッシュ】――――【白鳥乱舞】」
そうなれば、天を駆けるようにしてやって来たアーリィの一撃は敵を逃さない。
その高速乱舞は、目前で出されてしまえば回避はほぼ不可能。
敵コピー体のHPを2割ほど削ることに成功し、ようやく攻撃の流れをつかむことに成功した。
「ツバメほどスキルを上手に使えてないわね。この辺りが限界なら、全力のツバメには到底及ばないわ!」
レンがそう言って、わずかに笑みを浮かべると――。
「【まりょくちょう】【ふれあぶらすと】」
魔力で作った四匹の蝶を、自身の周りに飛ばし始めた。
「気に障ったなら謝るわ。できればその蝶を引っ込めてもらえないかしら?」
レンは白目をむいて提案するが、もちろんコピー体には届かない。
「【かそく】」
速い移動で、ツバメを狙うコピー体。
二連の剣撃をかわすと、即座に【魔力蝶】が炎弾を放出。
「っ!」
「【でんこうせっか】」
炎をかわすと、即座に迫る斬り抜け。
慌ててしゃがみで回避し、すぐに顔を上げる。
すでに炎弾は目と鼻の先。
「くっ!」
二発の炎弾を喰らって、ツバメは大きくのけ反った。
「【クイックステップ】」
追撃を止めるため、駆け込んできたのはアーリィ。
だが先ほどの炎弾は、魔力蝶が放ったもの。
コピー体はまだ、動ける状態だ。
「【あくあえっじ】【しゅんけんさつ】」
「きゃあああっ!」
無数の水刃が飛び交うこの一撃に斬られ、大きく弾かれた。
この瞬間も、魔力蝶は止まらない。
「くっ!」
スキル使用後の隙を狙いに動いていた夜琉を炎弾で弾き、一方のコピー体は右手をレンに向ける。
「【ちょうこうそくまほう】【ふぁいあぼると】」
「ッ!!」
雷光のような速度で迫る炎弾は、レンの頬をかすめていった。
完全に場を支配した魔力蝶。
ここでエネルギーが切れ、粒子となって消えていく。
だがそれでも、コピー体の攻勢は止まらない。
消えた魔力蝶の代わりに、現れるのは――。
「【ぶんしん】」
三体の分身。
そして四体が同時に【ヘクセンナハト】を握る。
「「「「【ふれあばーすと】」」」」
「「「「ッ!!」」」」
魔法攻撃の範囲を広げるその杖で放つ爆炎は、三つが偽物だ。
しかし本物にしか見えない四つの爆炎が交じり合えば、類を見ない規模の範囲魔法にしか見えない。
視界を埋める炎と煙に、誰もが足を止め防御に回る。
運よくダメージはなし。
夜琉は安堵と同時に、付近に視線を走らせたところで――。
「【あさしんぴあす】」
コピー体に刺された。
とっさの回避行動でクリティカルだけは回避、ダメージを2割強に抑えたが、そのまま倒れる。
晴れていく煙の中で向けられた恐ろしい一撃に、夜琉は遅れてゾッとする。
「高速【誘導弾】【フレアアロー】!」
即座にレンが追撃を阻止。
これを引き付けてからの横移動で、回避するコピー体。
「【リトルウィング】【エアダッシュ】!」
「【かそく】【すらいでぃんぐ】」
続くアーリィの速い接近攻撃に対して、着地前にその足もとを抜けていく。
「本当に速いし上手い!」
アーリィは思わず、その回避能力に声をもらす。
「【敏捷】型の弱点はいつでも近距離からの範囲攻撃だ。一撃入れる隙をくれ……っ!」
立ち上がって、頼む夜琉。
「そういうことなら、隙を作ります!」
ツバメは応えて走り出す。
コピー体は、迫るツバメと一直線に並んだ瞬間に杖を向ける。
そして眼帯と包帯を、まとめて取り去った。
「【こんせんとれいと】【ふれあばーすと】」
「そう、きますか……っ!!」
包帯と眼帯の同時開放は、『溜め』上級魔法の五連射という脅威の攻撃。
「【疾風迅雷】【加速】! 【加速】【加速】【加速】【加速】!」
しかしツバメは迫る猛烈な爆炎を右斜めにかわし、さらに左斜め右斜めとジグザグに走ってかわす。
こうして見事な走りで、五連続魔法を切り抜けた。しかし。
「――――静天に、揺蕩う瑠璃は死出の花」
「「ッ!!」」
「「ッ!?」」
ツバメとレンは『詠唱』というこれまでの慣習までコピーしていることに驚き、アーリィと夜琉はそもそも詠唱を見るのが初めてで驚く。
「――――刻の静寂に、いのち散るらむ【だーくふれあ】」
杖から放たれた黒の粒子が小さく集束し、猛烈な勢いで炸裂する。
激しい黒輝の爆炎が生まれた、まさにその瞬間。
「【リブースト】【スライディング】!」
一気に急加速で距離を詰め、攻撃判定が生まれる前にコピー体の足下を潜る。
「【反転】【雷光閃火】!」
巻き起こる黒の爆炎を見事に掻い潜って放つ、反転からの刺突。
それはツバメにしてはめずらしく、わずかに始動が遅れた。
コピー体はこの刺突を防御で受ける。しかし。
「今です!」
狙い通り防御を選んだことで、止まった足。
「【爆歩】!」
この瞬間を狙って、夜琉が飛び出す。
その狙いは、『ツバメの退避を待たず』に斬ることだ。
こうなってしまえば、回避など不可能。
「――――【天地裂断】!」
その振り降ろしは、縦に長い剣閃を走らせる一撃。
生まれた大きな縦の斬撃エフェクトは、大地を斬り、空を斬る。
一瞬遅れて、空間が左右に一度ズレた。
防御を許さぬ豪快な斬撃にツバメとコピー体は斬り飛ばされ、床を派手に転がっていく。
残ったHPは、わずか数ドット。
「詰めます!」
それを見て駆け出す、本物のツバメ。
もちろん先ほど斬られたのは【残像】だ。
しかし大きく転がったコピー体までの距離は長く、体勢の立て直しが間に合ってしまう。
ツバメを迎え撃つように、走り出すコピー体。
「【かそく】【りぶーすと】」
「【加速】【リブースト】」
二人は正面から、高速でぶつかり合う。
コピー体の手には【境界死線】
HPが低いほど火力を上げるその武器に、レンは思わず息を飲む。
「【らいこうせんか】」
「【三日月】!」
勝負の瞬間。
敵の手に短剣があったことで、斬り抜けか刺突でくると確信していたツバメ。
装備を【村雨】に換え、跳躍回転斬りに賭けることを決断。
「「「ッ!!」」」
火花を散らして迫るコピー体の短剣は空を突き、ツバメの刀は敵の肩を切り裂いた。
伸身宙返りからの着地。
刀を鞘に納めると、コピー体はそのまま崩れるように倒れ伏す。
そして液体に戻ると、そのまま消えていった。
「……こ、今度はここで全滅かと思ったぞ」
「こんな緊張したの初めてだよ……」
これまでの苛烈な戦いが嘘のような、駆け引きによる勝敗。
夜琉とアーリィはその場にヒザを突き、そのまま力なく倒れ込む。
後半はどれが直撃しても即死みたいな地獄の状況からの解放に、大きく息をつく。
「これで中ボス扱いなの、納得いかないわねぇ……」
「本当ですね」
苦笑いのレンとツバメに、アーリィはこくこくとうなずく。
「ところで、ずっと考えていたのですが……」
「なに?」
ツバメの言葉に、まだ何かあるのかと息を飲む三人。
「さっきのコピーはレバメになるのでしょうか、それとツンになるのでしょうか」
「何を考えてるのよ!」
すぐさま声を上げるレンと、あの苛烈な戦いの中で『呼び名』を考えていたというツバメ。
予想もしない二人の掛け合いに、さすがに笑ってしまうアーリィたちなのだった。
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