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83.トラップです!

 濁流の水路を抜けた三人は、舗装された石畳の路へと歩を進めていく。


「ここは何かしら」


 たどり着いた先の扉を開くと、そこはブロックがしっかりと積まれた部屋だった。

 何かの仕掛けを動かすのであろうレバーが何本も並んでいる。


「めずらしいですね。こんなに厚いガラスは初めて見ました」


 分厚いガラスで仕切られた隣の部屋は、同じくブロックで作られた密室。

 何か変わったものはないかと、メイは踏み込んでいく。


「何かのカギ……?」


 するとそこには、小さなカギが落ちていた。

 メイがそれをひろい上げると――。

 バーン! と大きな音を立てて、二つの部屋を分断する鉄扉が落ちてきた。


「ちょっと、なによこれ!?」


 レンは慌てて駆け寄るが、閉じられた鉄扉はビクともしない。


「わ、わ、わあ!」


 そしてメイのいる部屋に、大量の水が流れ込んでくる。


「なるほど、そういうギミックね!」


 ものすごい速度で溜まっていく水は一気に、メイのいる部屋を埋め尽くしていく。


「このレバーを使って水を抜けばいいんでしょ!」


 すぐさまレバーの前に駆け付けるレンとツバメ。

 消えかかっている壁面の図解を見ると、レバーをすべて下ろせば水を抜けることが分かる。

 レンとツバメは、同時にレバーを下げにかかるが――。


「こっちを下げると、あっちが上がります」

「下ろす順序が決まってるんだわ! と、とにかく順番にやっていきましょう……っ!!」


 しかし焦るレンとツバメは、同時にレバーを倒して失敗。

 全てのレバーが元の位置に戻ってしまう。


「と、とにかくできるだけ冷静に。でも急いで!」


 水の勢い、そして水流の巻き起こす大きな音が、否が応にも二人を焦らせていく。

 大きく息をついて、必死に自分を落ち着かせるレン。


「すぐに開けるから待ってて!」


 ガラス越しに声をかける。

 まさかの窮地に、メイは――。


「慌てなくて大丈夫だよ! 落ち着いてねレンちゃん!」


 すでに水の中だというのに両手をグッと握り、笑顔でレンたちを応援していた。


「……そんなに慌てなくても大丈夫ね」


 レンは、メイの【耐久】と呼吸ゲージの長さを思い出す。


「考えてみれば、メイが水攻めくらいでどうにかなるんだったらここまで来られてないわ」

「冷静になると、特に難しいパズルでもないです」


 仲間の命がかかるトラップ。

 だからこそ慌てることでミスをして、そのミスがさらにプレイヤーを慌てさせる。

 そんな恐ろしい怖い仕掛けも、水中から「がんばれー!」と応援されてしまえばもう怖くもなんともない。

 レンたちは淡々とレバーを下げ、あっさりクリアしてみせた。

 この仕掛けをこれだけ冷静に解くプレイヤーは、今後もそう現れないだろう。


「ありがとー!」


 開いた扉から飛び出して来たメイは、うれしそうに二人に抱き着いた。


「ゲージは大丈夫だった?」

「うん、まだ九割くらい残ってたよ! 二人のおかげだねっ」

「なんだったら、一度家に帰ってコーヒーを飲んでからでも間に合いそうね」

「わ、私は大したことは……っ」


 ツバメはむしろ、メイに真正面から抱き着かれていることにあわあわしてしまうのだった。

 こうして水攻めの仕掛けをクリアした三人は、レバーの部屋を出て先へと進む。

 身体をブルブル振って水を飛ばすメイに笑いながら歩いていると、そこには海中へと続く下り階段があった。


「ここを降りると長い路があって、向こう側の遺跡につながってるみたい」


 ぷはっと、海中をのぞき込んでいたメイが顔を上げる。


「メイさんしかたどり着けませんね」

「そこはまた、宝珠を点けて進むんでしょうね」


 階段の近くにある台座。

 触れると宝珠が輝きだし、海中を続く路に光が灯った。


「……これだけ? ここまでは呼吸の長い仲間が一人いれば一緒に進める仕掛けだったのに。これだと私たちは足止めね」


 首を傾げながらも、レンは一応海中へ。

 そして、気づく。


「なるほどね。呼吸ゲージは要らないみたい」

「どういうことですか?」

「この遺跡の特性なんでしょうね。光る路の上は『落水』にならないみたい。普通に海の中を歩けるわ」


 そう言って、海中へ下りて行くレン。

 その動きは確かに、水の影響を受けていない。

 三人は階段を降りて海中へ。


「きれいねぇ」

「うん……」

「幻想的です」


 夜の海は意外にも明るく、青い輝きの中にあった。

 建物の方へと続く路に並んだ石柱も、まばゆい光を放っている。

 だが何より海中を明るく照らし出しているのは、鮮やかに輝くクラゲたち。


「海底遺跡特有の、大掛かりな特性か……」


 初めて体験するそのシステムに、レンはつぶやきながら杖を握り直す。


「念のため、魔法の使用感を試しておこうかしら」


 こんな神秘的な場所にいても、注意は怠らない。

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お読みいただきありがとうございます。

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