815.まずは新たな帝国へ!
「左右ともに異常なし……」
まもりはまず、付近の建物の壁に隠れて辺りを見回す。
そして『メイちゃんパーティに突然現れた日陰者を討伐する隊』の姿がないことを確認して、待ち合わせ場所へ向かう。
元々そんなものはないのだが、ネガティブ盾少女は気を抜かない。
「まもりちゃんっ」
「はひぃぃぃぃっ!」
突然背中に飛びつかれて、ビクリと硬直するまもり。
振り返るとそこにはメイの姿。
「あ、えええええっと!」
満面の笑顔のメイに「ずっとこのままだったらいいのに」のまもりと、「誰かに見られたら殺される」のまもりがせめぎ合う。
「メ、メイさん早いですね。まだ待ち合わせには30分ほどありますよ……っ」
猫耳をぴょこぴょこさせているメイに、まもりは必死に体裁を取り繕いながら問う。
「実は【原始肉】を焼く時に、香辛料を使うこともできるって聞いたんだ!」
「……ほう」
食べ物の話になった途端、ギラリと目を輝かせるまもり。
さっそく興味津々で、メイの肉焼き作業を見守ることにする。
人目にあまりつかないよう、民家の陰で骨付き肉を焼く少女は不思議な光景だ。
「おいしそうーっ!」
焼き上がった肉には赤や緑の香辛料が乗り、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
「もう一本焼くから一緒に食べてみようよ!」
「い、いいのですか!?」
それならば誰にも邪魔はさせないと、まもりは二つの盾を構えてメイを徹底防御。
民家の陰で防衛されながら肉を焼くという奇怪な少女二人は、そのまま【原始肉】を焼き上げた。
「そ、それでは」
「いただきますっ!」
見事に焼き上がった【原始肉】を頬張りながら、二人は待ち合わせ場所へ。
「おいしいーっ!」
「【原始肉】……侮れませんっ!」
思った以上の出来の良さに思わず顔を見合わせた二人は、すでに待っていたレンのもとへ。
「また豪快な食べ歩きね」
「ちゃんと隠れて焼いたから大丈夫ですっ!」
「はい! 私もしっかりと見守らせていただきました!」
ちょっと得意げなメイとまもり。
「その大きさの骨付き肉を食べ歩いてたら、あまり隠れた意味がないと思うけど」
「た、たしかにっ……!」
「えらいこっちゃー!」
そのうっかりを冷静に指摘されて、思わず頭を抱えるのだった。
「さて、後はツバメだけだけど……」
「お待たせいたしました」
「おおーっ!」
そう言って突然、三人の前に現れたのはヒヨコちゃん。
するとその背後から、ツバメが現れた。
「やはり【隠密】からのヒヨコ登場は、インパクトありですね」
どうやらツバメはこれをやりたいがために、【隠密】で姿を隠したまま「今か今か」と待っていたようだ。
「ツバメも相変わらずねぇ……それじゃ、まずはいつも通り帝国から見に行きましょうか」
「りょうかいですっ!」
四人はポータルを使って、ラフテリアからガルデラ帝国へ。
建国祭が終われば、街の光景は元通り。
レンガの建物が並び、各所にビールを飲める店がたくさんある石造りの街。
しかし旧市街へ向かうと、ここは少し雰囲気が変わっていた。
「待っていたよ」
そこにいたのは、レジスタンスのリーダーだった青年スタン。
「以前とは旧市街の雰囲気も違うだろう? 不当に利益を奪われていた者はその権利を取り戻し、貴族たちの独占も崩れた。それによって人も戻ってきたんだ」
商人や職人の姿も見え、活気が戻ってきた旧市街はどこか古き良き趣を感じさせる。
「君たちのおかげだな。帝国はもう、以前とは違うんだ」
そう言ってスタンが感慨深そうに見上げる王城が、えげつない密林になっているという状況にちょっと笑ってしまうレン。
「たしかに、かつてとは別物ね」
これにはメイも「てへへ」と苦笑い。
原状復帰が済むまでは、世界樹と緑の城を眺めてビールを飲む街になるのだろう。
そんな街の変わり様に、まだ二度目の大型クエスト攻略のまもりは感嘆する。
「さて、ルティア皇帝に挨拶に行こうか。君たちに会いたがっていたよ」
スタンに連れられ、今度は城へ。
千年前の遺跡と言われても信じてしまう木々と草花の前庭を進み、植物に飲まれた建物区画を抜ける。
そして世界樹の根で道らしい道のない中庭を進み、狼コンビと戯れながら王城へ。
すっかり古代王国の探検隊の気分になってきた頃、ようやく城内へと入ることになった。
ホールにあったのは、新皇帝ルティアの姿。
「お待ちしていました。帝国の英雄たちよ」
そう言ってルティアはお辞儀をすると、語り出す。
「君たちのおかげで、帝国は大きく変わり出した。貴族たちには持ち過ぎた力を返還させ、旧市街民の生活もすでに上向き出している」
その言葉に大きくうなずくスタン。
「貴族たちはかなりの美術品や収集品などを懐にしまい込んでいてね。それを売買して城壁や旧市街などの修復に回しているところなんだが……その中には、冒険者向けの物もある」
ルティアがそう言って手を上げると、兵士たちが宝箱を四つほど持ってやって来た。
「ありがとう、メイ、レン、ツバメ、まもり。これは我々からの礼だ。ぜひとも持って行ってくれ」
まずはまもりが宝箱を開く。
【獅子霊の盾】:盾に封じられた獅子霊が噛みつき、敵を捕らえる。盾スキルとの併用も可能。
「これはなかなか見ない装備品ね……盾から表面に掘られた獅子の顔が出てきて喰らいつく感じかしら」
「初めて見たら皆「ええーっ!?」ってなりそうだね!」
「併用も可能。【不動】との連携が面白そうです」
さっそく盛り上がる報酬時間。
続けてレンが宝箱を開く。
【増幅のルーン】:個数や時間など、数値の決まっているスキルの効果を一度だけ増加する。
「これは自分含め、味方向けに使うスキルかしら。私の場合【連続魔法】の数が増えるって感じかしらね。いいじゃない」
「ということは、【連続投擲】の数も増やせるのでしょうか」
そんなことを言いながら、ツバメも宝箱を開く。
【跳弾投擲】:投擲した武器が壁などにぶつかり角度を変える。
「さっそく後で、【増幅のルーン】と一緒に使ってみましょうか」
「はい。せっかくなので、新大陸から別の属性ブレードも持ってきたいです」
早くも、組み合わせでの使用を想定してワクワクする二人。
最後はメイの番だ。
四人で身を寄せ合って、宝箱を開く。
【大旋風】:モンスター、プレイヤー、一部オブジェクトなどをつかんで回転しながら移動攻撃が可能。一定以上の回転で風を巻き起こす。対象の重量は【腕力】に依存する。
「おおーっ! なんだかすごそうっ!」
「これはまた、派手な光景が見られそうなスキルね……!」
「早く見てみたいです」
「はひっ! 私もです……っ!」
大型の魔物をつかんで敵陣に回転しながら突っ込んでいくメイを想像して、早くも笑みがこぼれるレン。
ツバメたちも、想像がふくらんでいるようだ。
「……これから帝国は生まれ変わり、良き国家になっていくだろう。これも全て君たち英雄のおかげだ。その行く先に、輝かしい未来があらんことを」
報酬の授与が終わり、ルティアが手を上げた。
すると先日の戦いを盛り上げた演奏家たちが、ファンファーレをなり響かせる。
「おおーっ!」
「なんだか気分があがるわね」
「素晴らしい演出です」
「は、はひっ」
こうして、花やかな音楽に背中を押されるようにエンディングを迎えたメイたち。
楽しそうに進む四人は、気づかなかった。
上階のパーティルームには、慌てて変な格好になっている四人の肖像画が飾られていることを。
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