762.再びフローリスへ!
「…………きれい」
結木まもりは、思わずつぶやく。
フローリスの復活劇は、『星屑』初の偉業にふさわしい美しさ。
そして偶然見かけた新CMの冒頭に、目を奪われてしまった。
運営から来た連絡は、『この綺麗な光景をCMにしたい』という打診だった。
これまでの事を考えればメイが主役でレンがいて、ツバメがそこそこ見切れている感じになる。
日陰者の自分なんかは、手にした盾に隠れてほとんど映らないだろう。
そう考えて『私のような日陰者でよろしければ――』と返信。その結果。
「ひゅええええええええ――――あびゅあぼろべあっ!?」
続く映像は、メイがまもりに花の冠を乗せる瞬間。
エフェクトの効果もあって、なんかもうファンタジー世界のロマンス的瞬間に見える。
メイたちが中心になるはずのCMで、自分は端の方に映っているかどうかくらいだろうと思っていたまもり。
まさかのダブル主演のような状況を見て、白目をむいて気を失う。
「痛っ」
余りの衝撃に、フラフラしながら机に腰をぶつける。
そこにあったのは、大判の封筒。
それは今回もメイたちが見られると思って注文した、雑誌版の広報誌だ。
CMのショックを忘れようと、封筒を開いて中身を確認。
「ふぇえええっ!?」
またも意識を失いかける。
なんと今回の表紙は、メイに花冠を乗せてもらった瞬間のまもりだった。
「…………」
絶句する。
中身も思った以上に自分が出ている上に、メイと一緒のアップとかもある。
それは文句のつけようがない最高の一冊で、もちろん評判も良い。
メイが載るようになってから、高い評価を受け続けている広報誌。
その中にあっても見劣りをしないほどだ。しかし。
「……こ、殺されちゃう……っ!」
まもりはガタガタ震えながら、頭を抱える。
最近の広報誌はずっと、メイが可愛さと野性味を見せる表紙の流れが続いていた。
それが自分になるなんて、ありえない。
「今頃、メイさんが表紙の広報誌を楽しみにしていたプレイヤーさんたちが、各地で剣を手に『結木まもりを殺せ!』と叫びながら行進している可能性もあります……っ!」
そんな恐ろしい光景を思い、ハッと顔を上げる。
「さ、最悪の場合、すでにフローリスが取り囲まれている可能性もっ!」
想像すると恐ろしくて、ログインできない。
「ででででも、フローリスの報酬は一緒にもらいに行こうって約束してるし……っ」
集合時間までは、あまり時間もない。
何よりメイたちは、基本的に早く集まる。
自分もまたメイたちと会うのが楽しみで早く用意を済ませていたし、何より遅れてしまうわけにはいかない。
「……は、入ってすぐに身を隠して装備を換えれば、やり過ごせるはず!」
何度か深呼吸をして、「大丈夫」と自分に言い聞かせてから『星屑』の世界にログインする。
気分は、銃弾飛び交う戦地へ特攻する兵士のようだ。
とにかく緊張感が凄まじい。
「何より私のような日陰者を、プレイヤーさんたちが覚えているはずがありません……っ」
もう一度祈るように口にして、フローリスへ。
「あ、メイちゃんと一緒だった子だ」
「ひいいいいいい――――っ!」
ログイン即、目の前には新フローリスを見に来たプレイヤーたち。
「ご、ごめんなさいいいいい――――っ!!」
盾を手に、大慌てで走り出す。
突然集まった視線は、さすがにまもりも防御し切れなかったようだ。
「――――と、いうことがありまして」
『本来は』モコモコのファー付きフード、白地にグレーの鎧。
そして手には、緑が鮮やかな紋章入りの盾。
淡い金の髪を頭の左右で大きなお団子にした少女、結木まもりはため息を吐く。
「あはははは、それは考え過ぎよ」
「はい。日陰者が斬られてしまうのなら、私は毎日凄惨な死に戻り劇場をお見せしなくてはなりません」
「わ、笑いながら、とんでもないこと言ってるわね」
薄いほほ笑みを浮かべたまま言うツバメに、レンは思わず苦笑い。
「それで覆面姿なんだねっ」
「は、はひっ。大急ぎで装備を初期装備に変えて、覆面をしました」
「でもそれ、バレてると思うけど」
「なぜですか!?」
「そりゃ、盾だけはそのまま二枚持ってるからよ」
「ふあっ!?」
「あははははっ!」
慌てふためくまもりの背中を楽しそうに押すメイに、ちょっと羨ましそうにしているツバメを見るレン。
四人は楽しそうに花の都を進み、教会へ。
黄色い花に包まれた教会の扉を開くと、そこにはフローリスをともに復興させたビルダ老人とエンリケの姿があった。
ミッションが達成できていなければ、ここはエンリケと孫の少女NPCだけになっていたはずだ。
「見てくれ! 冒険者さんたち!」
こちらに気づいたエンリケはさっそく、内壁に飾り付けた大判の銅版画を指さした。
そこには復興クエスト達成パーティである、メイたち四人の姿が描かれていた。
「ま……間に合わなかったー!」
「野生児と中二病魔導士と、アサシンと盾二枚……すごい絵になってるわね……」
銅版画にはしっかり、【野生開放】姿のメイと【眼帯・包帯姿】のレン。
この美しい街に残されることになった野生児伝説に、二人は白目をむきながら頭を抱える。
「ほ、本当に今日は、大変な事ばかりです……」
銅版画に残された自分の姿を見て「こ、これでまた『結木まもり』暗殺隊の魔の手が……」と、息を飲むまもり。
「どうだ? 最高のできだろう?」
一方満足げなエンリケの姿に、今回も少し見切れているツバメは、思わず笑いをこぼすのだった。
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