760.フローリスの少女
集まってきたプレイヤーたちは皆、見惚れていた。
復活のフローリスは、以前にも増して美しい。
ただメイの咲かせた花が思ったより育ったため、そこそこ住民が花に埋まっているのはご愛敬だ。
「これが、フローリス……?」
驚きに感嘆するのは、この街の状況を憂いていたプレイヤーたち。
どうやら話を聞きつけてやって来たようだ。
その中にはフローリス大型クエストに失敗し、気に病み続けていたパーティの姿もある。
「ありがたい、メイちゃんたちのおかげだ……」
「滅んだ町の復活か。すごいなぁ、本当に英雄みたい」
注目を向けられて、慌てて盾に隠れるまもり。
集まる視線と感謝の声から、二つの盾で貝のように身を隠す。
「ミッションに成功していないと、死にゆくビルダ老人が最後の光景として花の咲いたフローリスを見る形だったんでしょうね」
「それは寂しいエンディングですね」
「そういう意味では、最高の結果だったんじゃない?」
「うんっ」
メイとまもりのミッション攻略によって、最高のエンディングを迎えた大型クエスト。
街の住人たちも戻ってきた。
その中の一人の少女NPCに、まもりはそっと視線を向ける。
ビルダ老人の孫娘だという少女は、この街で唯一まもりが会話をしていた相手だ。
「ありがとうございます! またお会いできて良かったです!」
「っ」
どうやら少女も、まもりを覚えていたようだ。
「まさか貴方が街を救ってくれるなんて……またフローリスに帰ってくることができたのは、貴方たちのおかげですっ!」
歓喜に元気な笑顔を見せる少女。
対してまもりは――。
「……は、はひっ! あ、ああああの」
「はい」
「ひ、肥料ください」
少し時間が空いたことでしっかり、NPC見知りを再発させるのだった。
「少し離れて暮らしていた後、再会した飼い猫みたいね」
その絶妙な距離感に、メイたちも思わず笑みをこぼす。
「……皆さんと一緒だったら、一度はなくなっちゃった街も取り戻せるんですね」
長いプレイ期間。
受けた超難関の復興クエスト。
そして初めて組んだパーティは、広報誌で見かけて思わず惹かれたメイと一緒だった。
「こ、こんなに大きなクエスト達成したことがなかったので……うれしいです。な、なにより」
「なにより?」
「そ、それを一緒にできて、すごく楽しかったです」
「まあ、メイのパーティだもの」
「メイさんが中心にいますから、楽しくないはずがありません」
「こ、これが皆さんが言っている『元気、可愛い、野生的』なんですね」
「皆が言ってるの――!?」
これまでのメイの抵抗が、『野生』の前に惨敗している事実に悲鳴をあげる。
「でも、いいクエストになったわね」
「本当ですね」
「……パ、パーティで戦うのは初めてでしたが……ほ、本当に楽しかったです」
少しだけ、盾として役に立てたかもしれないと安心感もある。
「それじゃこれからは、パーティを組んでもいいかなって感じ?」
「そ、それは、少し考えつつ……」
「ノリと勢いで解決できる問題ではないのね」
「まもりちゃん、これからも一緒に遊びましょうっ!」
「え、えええええっ!? ダダダダメですよっ! 私がいたらメイさんパーティの輝かしい歴史に、泥を塗ってしまうことになります……っ!」
「輝かしい歴史なんてないと思うけど……」
「ないですね」
「闇深い歴史ならあるけど」
「本当ですね……」
「…………」
三人一様に、現在も進行している新たな歴史に若干目が虚ろになる。
「そもそも私は、メイたちと一緒だと楽しいから遊んでるのよ」
「たとえ失敗しても、いいんです」
「うんうんっ」
実はクエスト失敗で死に戻り、笑いながら反省会なんていうのもいいと思っているレン。
それはメイもツバメも同様だ。
ただクエストをやる以上は全力ということもあり、結果として上手くいっているだけ。
今回のような状況でもなければ、それほど攻略自体は目標にしていない。
少し意外だが、三人の楽しそうな姿を思い出してまもりは納得する。
「たとえば今回の件、あの兵士と黒仮面を追う話が出てきたらどう?」
「そ、それは気になります」
屈指の防御力を誇る両手盾の少女、結木まもり。
その引っ込み思案ぶりは、なかなか踏み出す行動をするのが難しいようだ。
「好きなタイミングでの参戦で構いませんよ」
「は、はひっ」
メイたちは何かと一緒にいるが、その都度必ず集まらなくてもいい。
その自由さに、少し肩の力が抜けるまもり。
そうなれば、最後は――。
「まもりちゃんも、一緒に行こうよ!」
「っ!!」
向けられるシンプルな言葉と、元気な笑み。
「ねっ?」
「…………は、はひ」
真正面からメイに誘われた結果、無事まもりの鉄壁の防御は突破された。
「よ、よ、よろしくおねがいしますっ」
「やったー!」
嬉しそうに、はしゃぐメイ。
星屑一美しい、花の都フローリスを取り戻す戦いは見事勝利。
超高難易度にして星屑史上初となる、大型クエストを達成。
あらためて、高台から見る光景に見惚れる。
眩しい陽光と風に揺れる花の中、振り返ったまもりは初めてできた仲間たちを見て――。
「皆さんとご一緒できて――――本当にうれしいです……っ」
そう言って、楽しそうに笑った。
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