746.フローリスを賭けた戦い
「――――潰せ」
「「「オオオオオオオオ――――ッ!!」」」
黒仮面のリーダーは、薄く嘲笑の混じった冷たい口ぶりで言い放った。
その言葉に合わせて、濃灰色装備の兵士たちが叫びをあげる。
統制の取れた動きで先行するのは、大盾にランスを構えた前線部隊だ。
「【魔砲術】【フレアバースト】!」
これに反応したのはレン。
距離を詰めてくる兵士たちに向けて放つ爆炎は、見事に炸裂して炎を上げた。
「まあ、そうよね」
しかし機動隊のようにガッチリ盾を前面に置いた進行を、止めることはできない。
ザッザッと規則正しい足音を立てながら、手にしたランスを引くと――――。
「撃て――――っ!!」
「「「【烈風破】!」」」
「「「ッ!!」」」
同時に放つ衝撃波が、続々と迫り来る。
「【バンビステップ】!」
「【加速】」
メイとツバメの二人は、その隙間を当然のように縫ってかわす。
「続け!」
だが敵陣営は、この前衛の衝撃波によってメイたちの足を止めるのが狙い。
後部にいた弓術部隊が一斉に、山なりの軌道で矢を放つ。
その輝きを見て、それが状態異常攻撃であることに気づく。
「まもりちゃんっ!」
「まもりさんっ!」
「まもりっ!」
「はははははひっ! 【地壁の盾】!」
降り注ぐ矢の雨。
炸裂と同時にまき散らされる無数の輝きは、状態異常を引き起こす魔性の光。
状態異常攻撃を範囲で放つという恐ろしい攻撃だが、まもりの背後に隠れれば問題なし。
「ありがとー!」
「さすがね」
「お見事です」
「い、いえいえいえっ」
いきなりプレイヤーに、状態異常の不利を負わせる。
この戦い最初の難関を、まもりはあっさり打ち崩してみせた。
「反撃、いかせてもらうわ! 【コンセントレイト】【氷塊落とし】!」
矢を放つため、敵前衛隊は足を止めていた。
レンはそこを逃さず、頭上からの攻撃を選択。
まもりの陰で溜めていた魔力を発動し、大きな氷塊を突き落す。
「「「ウアアアアアアアア――――ッ!!」」」
大盾を持つ前衛に、穴が開く。
「【加速】【リブースト】!」
この隙を逃さず走り出したツバメは、一気に敵前衛部隊の目前へ。
「【振り払い】!」
「【スライディング】!」
接近してきたプレイヤーから距離を取るための一撃を、ツバメは潜り抜けて前衛ランス部隊の内部へ。
「【アクアエッジ】【瞬剣殺】!」
水渦が外へ弾けるような形で飛ぶ水刃が、容赦なく敵を切り裂く。
「【フレアバースト】!」
隙間ができてしまえば、盾部隊による防御も崩れる。
最前の盾ランス部隊は、爆炎で早くも半壊。
「進め――!」
するとそんな状況の変化に、剣士部隊が走り出す。
武骨な片手剣を持ち、襲い掛かってくる者たちの狙いはメイだ。
一人目の剣士が放つ大きな振り降ろしを右斜めへの移動でかわし、二人目の剣士の振り払い斬りを転がってかわす。
「【突き抜け】!」
剣の切っ先を向け、地を滑るような形で迫る『刺突』の一撃。
「【アクロバット】!」
三人目の剣士の刺突を伸身宙返りで跳び越えると、その目に見えたのは剣を担ぐように構え、『溜める』剣士。
敵の攻撃は全て、一つの連携になっていた。
統制の取れた兵士たちらしい、見事な攻勢だ。
「【剣技の三・唐竹割り】!」
大きなテイクバックから、剣道の『面』のような形で放つ全力の振り降ろし。
「【裸足の女神】【カンガルーキック】!」
「なっ!?」
しかし最速の走行から放つ前蹴りがヒット、スキルを放つ前に弾き飛ばして流れを止めた。
そのまま【蒼樹の白剣】を手にしたメイは、【密林の巫女】を発動。
「大きくなーれっ! からの【フルスイング】!」
「「「グアアアアアア――――ッ!!」」」
大きな払いの一撃で、付近の剣士部隊をまとめて弾き飛ばした。
「目標、敵アサシン!」
一方、二つ目の部隊はツバメを狙う。
「【スライドピアス】!」
速い直線移動突きを、斜め後方へのバックステップでかわす。
すると即座に、二人目の槍使いが飛び込んできた。
速い降り下ろしをかわすと、そのまま突きを繰り出してくる。
「【槍術の二・苛烈突き】!」
放たれる怒涛の連続突き。
これを細かなステップで避けると、突然槍使いがその場にしゃがみ込んだ。
「ッ!?」
背後には、今まさに槍を投擲しようとしている兵士の姿。
やはり敵兵士たちは、連携を取る形で戦うようだ。
「【槍術の五・破岩飛槍】!」
ドン! という爆音と共に放たれた武骨な造りの槍に、ツバメは即座に反応。
「【スライディング】!」
なんと飛んでくる槍の下を滑って、逆に距離を縮めにいく。
すると左右から挟み込むように、残りの槍部隊が接近。
「距離が近いのは助かります【紫電】!」
「「「グアアアアアア――――ッ!!」」」
駆け抜ける電撃が通電を続け、気持ちいいほどの人数がまとめて硬直した。
「お願いしますっ! 【跳躍】!」
「任せて! 【フリーズブラスト】!」
吹き荒れる氷嵐が、硬直したままの槍兵たちに直撃。
こちらも見事に、敵兵たちを打倒してみせた。
「レンちゃん!」
見事な戦いぶりで、戦況を優位に進めている四人。
急なメイの声に、慌てて視線を上げる。
見えたのは魔法の輝き。
離れたフローリス高台の一角に配置された、魔導士の姿は伏兵。
「狙いは!?」
「レンちゃんだよっ!」
【遠視】によって危機を察知したメイは、その狙いがレンであることにも気づいた。
放たれる魔法弾は大きく、その範囲はレンの速度で回避が間に合うようには思えない。
行動に、迷うレン。
「【かばう】」
しかしその声が聞こえた瞬間、流れが変わる。
「【天雲の盾】!」
直後、炸裂する盛大な魔法の輝きと広がる砂煙。
「ありがとうまもり! しゃがんで!」
「はひっ」
煙が晴れると、レンはその手に【ワンド・オブ・ダークシャーマン】を持ち、照準を敵魔導士に向けていた。
「【コンセントレイト】【魔砲術】【超高速魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」
すでに『溜め』ができていたのは、まもりの防御への信頼がゆえ。
放たれた炎の弾丸は、フローリスの空を流星のように駆けていく。
光の尾を引き、目にも止まらぬ速さで敵魔導士のもとへ一直線。
もちろん敵魔導士にも回避能力はある。
しかし飛来する炎弾が速過ぎて、間に合わない。
魔導士を撃ち、そのまま背中から炎のラインが抜けていく。
「……HPは低めみたいね、助かったわ」
「カッコいいーっ!」
「痺れました」
杖を払うようにして下ろす癖は、ナイトメア時代の名残。
そして星屑世界でこれだけきれいなカウンタースナイプを見せたのは、レンが初めてだ。
その姿にメイとツバメは目を輝かせ、まもりは『片手を上げて待つレン』に、おっかなびっくりハイタッチ。
「なんだ……あれ」
「あ、あれが噂の盾の子だろ? メイちゃんたちと一緒に戦えてるじゃねえか……」
ここでやって来たのは、掲示板組の最速組。
メイの発見能力、まもりの防御、レンの見事なカウンタースナイプ。
完璧な連携に、来ていきなり驚愕を受ける。
「まだ来るみたいだよっ!」
そんな中でも、メイの【聴覚向上】は捉える。
伏兵は魔導士だけではない。
味方の危機に姿を現したのは、従魔と植物型を引きつれた兵士たちだった。
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