734.パーティ分けをします!
「ビルダさんを助ける方法、聞かせてくださいっ」
衰弱し、眠ったままのビルダ老人。
テントの下で、メイはエンリケに問いかける。
このまま毒を排して街を復興しても、毒の蓄積で倒れたビルダ老人はそれを見届けながら息を引き取る。
それがレンの予想する、街を守るクエストだけを達成した場合の展開だ。
だがこのミッションを成功させれば、ビルダ老人も救うことが可能となるだろう。
本来四人でどうにかできる設計ではない厳しい状況だが、なんとしても成功させたい。
「曖昧な話だぞ。それでも行ってくれるか?」
「もちろんですっ!」
「ブラッジヤという街に、毒による病を視る医者がいると聞いたことがある。錬金術の修行中に耳にしたのだが……定かな話ではないんだ」
「なるほどね。やっぱりパーティを二つに分けるしかないわ」
「そうなりそうですね」
「間違いなく、この後『兵器』とやらを回収するために黒の一団がまたやってくる。その時までにピンクの毒を片付けないと面倒なことになる」
「そして制限時間内に、ビルダさんを助ける手段を持ってくる必要があるのですね」
「問題は、パーティをどう分けるかね」
レンは悩む。
より厳しいであろう救命ミッションに挑むのは、メイで間違いない。
そうなるとメイ個人の方がいいのか、二人ずつがいいのか。
そして二人ずつに分けるのであれば、どういう組み合わせにするべきなのか。
「……私とツバメ、メイとまもりがいいかしら」
【かばうⅢ】による移動はもちろん、いざとなればまもりを抱えて走れるメイ。
唯一怖い『一人では単純に手が足りない』ような状況でも、まもりがいれば問題ないだろう。
まもりとレンで組んでしまうと、移動の遅さと物理火力のなさに怖さがある。
「私たちはピンクの毒を持って王都に向かうわ」
「わたしたちがお医者さん探しに向かう形だね!」
「は、はひっ」
真っ直ぐな目を向けられて思わず盾に隠れてしまうまもりだが、「がんばりましょう!」とほほ笑むメイに、確かにうなずく。
「ビルダじいさんの世話は任せてくれ。俺がしっかり面倒を見る。幸い君たちが倒してくれたおかげでモンスターの数も少ないし、修復した家で安静にしていれば大丈夫だろう」
エンリケはそう言って、移動の準備を始める。
「どうせなら、元気になったビルダさんに復活した街を見てもらおうね!」
「もちろんよ」
「はいっ」
「は、はひっ!」
四人、自然と円陣の並びになってうなずき合う。
ここからは、二つのクエスト攻略を目指して別行動だ。
「行きましょうか」
「はい、メイさんまもりさん。またここで」
駆け出していくツバメとレンに、大きく手を振るメイ。
「ふ、ふふ、二人ずつだと大変ですね……」
大好きな拠点の街の復活に加えて、ビルダ老人の命までかかるミッション。
それを二人ずつで乗り越えるのは、当然難しい。
緊張で自然と、まもりは盾の裏に隠れる。
「大丈夫だよっ。ツバメちゃんとレンちゃんなら!」
そう言って笑うメイに、まもりは思わず目を取られ――。
「それに今度は、まもりちゃんもいるからねっ」
向けられた視線に、射抜かれて顔を赤くする。
「あ、あの…………が、ががががんばりますっ」
「うんっ!」
こうしてメイたちも、医者を連れ帰るため走り出した。
◆
ツバメとレンは、ポータルの乗り継ぎで王都ロマリアへ。
メイがいないためしがみついてくることはないが、興味深そうに寄ってくる猫を横目に植物学者トミーのもとへ。
「おや、今度はどうしました?」
「この毒の浄化方法を探しているの」
レンがビンに入れたピンクの毒を見せると、トミーは興味深そうに眺める。
「見たことのない毒素ですね……少なくとも、僕が知る植物や動物由来のものではない」
そう言ってデスクの上で様々な確認作業を行い、一通り確認を終えて振り返る。
「この毒は酷くやっかいだし、そもそもよく分からない。調べてみたところ有効な成分はありますが、それを得るのはとても難しいでしょう。ただ、研究者なら思い当たります。今は大図書館の一端にて研究を行っているはずです」
「大図書館ね」
「本当にこのクエストは、西に東に移動が多いのですね」
「学術都市レイルクーゼンにある図書館ですが、普通に行っても利用範囲は大きく限定され、取次も容易ではありません。紹介の手紙を書きますので持って行ってください」
そう言ってトミーは、図書館あての親書をしたためた。
「助かります」
「行きましょう。大図書館は聞いたことしかなかったけど、どうなるかしら」
ツバメとレンはすぐにラボを出て、そのままポータルへ。
学術都市レイルクーゼンに移動。
「ここが学術都市ですか」
「さすがにまた雰囲気が違うわね」
並ぶ石造りの建物は、どれも西洋の古い校舎を思わせる。
規則正しく並んでいるが、どこかほかの街と違うのは、その並びが各研究棟を結ぶことを前提にしているからだろう。
街行く人も分かりやすくモノクルや学帽をかぶった者がいて、雰囲気を醸し出している。
「まずは大図書館ね」
「この街の一つのランドマークですし、すぐに見つかりましたね」
二人の視線の先には、中央部付近に立つ大型の西洋建築。
広い階段を登って中に入る造りは、やはり欧米の美術館のような雰囲気がある。
「……さて、どんなクエストが出てくるのかしら」
左右に置かれたガーゴイル像が抱える本。
学術都市の『知の殿堂』に、ツバメとレンは踏み込んでいく。
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