73.漁の始まりです!
「ここが今サザンガニの被害にあっている海域だ! さあ仕掛けを一気に引き上げていくぞ!」
サンゴを荒らすサザンガニたちを捕らえるための漁。
漁師たちに交じって、プレイヤーたちもあらかじめ仕掛けられた綱を引いていく。
海底に下ろしてあるのは、網を張った鉄カゴの仕掛けだ。
「またずいぶんと重いわね……こんなのを何十個も引き上げないといけないの?」
「これはなかなか大変そうです」
カゴ一つにつき、かける人数は四人ほど。
どうやらプレイヤーの腕力値の合計で、引き上げにかかる時間などが決まってくるようだ。
思っていたより本格的な作りのシステム。
そんな中、一際気合が入っているのは白夜だ。
引き上げた網カゴを抱え、せっせと生簀へと運んでいく。
綱を引く黒レースのレンもなかなか面白いが、白レースでカニ入りのカゴを運ぶ白夜も、かなりおかしな光景になっている。
しっかり腰を落として、足はがに股。
どうやら白夜は、見た目のわりに仕事は張り切るタイプのようだ。
「そこ、足を止めずにお願いしますわ!」
額の汗を拭うようにしながら、まごつくプレイヤーたちに指示を出す白夜。
「ふふ、どうですかわたくしの有能ぶりは?」
なぜか、勝ち誇った笑みをレンに向けてくる。
「……カニ漁、やってた?」
「やっておりませんわ!」
たとえカニでも、できれば直にさわりたくないレンは若干引き気味だ。
「まったく、闇の使徒はずいぶんと軟弱なようですわねぇ」
前回の敗戦がよほど悔しかったのか、白夜は得意げにそう言った。
「別に私は軟弱でいいのよ。うちにはメイがいるからね」
「あら、早くも負けを認めます……の……?」
白夜の目が、船の上を駆け回るメイに向けられる。
「よいしょおっ!」
そこには元気なかけ声と共に、一人で海中から箱を引き上げてみせるメイの姿。
【野生回帰】とインナー装備によってむしろ【腕力】が上がっているメイは、仕掛けを軽々と持ち上げる。
白夜が一つでもやっとの箱を三つも同時に抱え、軽い足取りで生簀へと運んでいく。
「あ、あなた……腕力どうなってますの?」
「え? あはは、ジャングル暮らしが長かったもので」
「ジャ、ジャングル……?」
ちょっと恥ずかしそうにするメイの言葉がまるで分からない白夜は、ただただ唖然とするのだった。
「よし、今回はこんなところだな」
「いやぁ今回は早く終わったなぁ。ご苦労さん」
漁師たちが漁の終わりを告げる。
メイが次々に仕掛けの鉄カゴを引き上げては運んだことで、かつてない早さでサザンガニの引き上げは終了。
「あれ……?」
ここで異変をいち早く『聞きつけた』メイが、空を見上げる。
「来やがった! オオウミドリだ! 冒険者の皆、ここは頼むぞ!」
漁師たちは、慌てて引き下がる。
「まあ、当然ここまでが一つのクエストよね……っ」
白い翼の巨鳥オオウミドリが、漁を終えたばかりの船目がけて滑降してくる。
鋭い爪を持つ前足で、仕掛けてくる攻撃。
メイはまず、敵を十分に引き付けてから――。
「がおおおおーっ!」
【雄たけび】で、巨鳥の動きを止める。
「【跳躍】」
すかさず跳んだツバメが、右左の短剣で連撃を叩き込む。
「【フレアストライク】!」
続く炎の砲弾が、オオウミドリを燃え上がらせた。
見事な連携で、早くもモンスターを粒子に変える。
「うおおっ!?」
あがる叫び声。
もう一匹のオオウミドリの相手は、てこずっているようだ。
「おいどうした! もっと踏み込んで攻撃しろよ!」
「防御力が心もとねえから、怖えんだって!」
踏み込めずにいるプレイヤーたち。
「お、おおおーっ!!」
振るう翼が、巻き起こす大風。
船上に吹き荒れる風がプレイヤーたちを足止めをする。
「しまった!」
オオウミドリは滑降で迫り、戸惑っていた剣士に鋭利な爪で襲い掛かる。
「出番のようですわね!」
そこへ飛び込んで来たのは白夜。
「【エーテルジャベリン】!」
六連発の光の槍は二本が直撃。さらに。
「【エーテルライズ】!」
足元から光の柱が噴き上がる。
中空で大きくのけ反ったオオウミドリに向け、踏み込んでいく白夜。
レイピアを手にすると、そのまま一直線に飛び掛かる。
「【ライトニングスラスト】!」
とどめは高速の突き。
白夜はもう一体のオオウミドリを、ほとんど一人で倒してみせた。
華麗なポーズで着地を決めると、くるりと一回転。
これ見よがしに振り返る。
「いかがでした? これが光の使徒の本来の能力ですわ。この程度のモンスター、わたくしがいれば敵ではありませんのよ」
「…………?」
「ふふ、どうやら驚きで声も出ないようですわね」
いよいよ調子に乗り出す白夜。
「……なんですの?」
しかしレンの目が、自分ではなくその後ろに向いているのに気がついた。
白夜はゆっくりと振り返る。
そこにあったのは、海中から伸びて来た長い触手。
漁船が大きく揺れる。
海面にその姿を現したのは、オオウミドリですら小鳥に見えるほどの巨大なイカの化物だった。
「な、なんですのこれは――――ッ!?」
「うわあ! すごーい!」
尻尾をブンブン振ってはしゃぐメイ。
海面にその姿を現したのは、海の大物クラーケンだ。
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