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721.金策します!

 目的は【A】ランク商品を手にして【浄化剤】と交換、もしくは指定の額を払うこと。

 そのためにはまず、元手が必要だ。

 当然その値が大きいほど、スタート地点は高くなる。


「金策とは、どうすればいいのでしょう」

「メイさんたちには、最高の金策があります」

「そーなの?」

「ですか?」


 メイとツバメは一緒に首を傾げる。


「【密林の巫女】ね」

「はい。ステータス上げの果物は消費アイテムとしては高級品です。それは育ちが遅く、なかなか収穫できないから」

「種と実で、結構な価格差があるのよね」

「その通りです。メイさんたち用に【種】は常にたくさん用意してあるんです。果実にして売れば、元手としては上々でしょう」


 マーちゃんは各ステータス上げの種子を、メイにまとめて渡す。


「それではさっそく、収穫に向かいますっ」


 メイは敬礼ポーズを決め走り出す。


「私たちはバラけて商品探しをしましょう。高く売れそうなものを見つけたらマーちゃんに聞いてみて、チェックしておきましょう」

「はい」

「は、はひっ」

「私はお宝探しを手伝いつつ、メイさんが戻り次第果実を売ってしまいます。少しだけ安めに値付けすれば時短で資金繰りができるはずです」


 こうして五人は、分かれて動き出す。

 メイは街の南東部に、広い草原があることに気づいて駆けつける。

 次々に種をまき、すべて使ったところで【密林の巫女】を発動。


「大きくなーれ!」


 メイの言葉に合わせて伸び出す、果実の芽。


「大きくなーれっ!」


 ぴょんぴょん飛び跳ねるメイの動きに合わせて、一気に伸び上がる。


「もっともっと、大きくなーれっ!」


 そして早くも、果実が実を付け始めた。


「……なんだあれ」

「バイセル南マップに、小さな南国果実園が……」

「ていうかあれ、噂の野生児ちゃんじゃね?」


 こうしてメイは、通りがかりのプレイヤーに『メイちゃん果実園』と呼ばれる小さな森を生み出すのだった。


「こうして見ると、知らないアイテムがすごく多いわね」


 一方、掘り出し物を探してフリーマーケットを回るレン。

 何に使うのか分からないものも、とにかく無数に並べられている。

 レンはとりあえず装備品の数値から、その価値を推定することにした。


「攻撃25で知力10。各戦闘ごとに魔法スキルを一発だけ『火力上げすることが可能』っていうのは間違いなくいい杖ね。見た目の格好悪さがこの価格の原因かしら。でも、見た目より実益重視のプレイヤーは多いはず……」


【銀閃の杖】より知力上昇値は低いが、スキル付き。

 腐った太枝に巻きついた変な柄の布は、なかなかに悪趣味。

 そして提示価格は【銀閃の杖】より安い。

 もし自分の知らない付加価値を持っていたりすれば、面白くなりそうだ。


「【ファイアボルト】」


 レンは炎弾を撃ち上げ合図を送る。

 するとすぐにマーちゃんがやって来て、さっそく杖に目を向ける。


「……いい商品ですね。間違いなく買値より高く売れると思います。レンさんは良い目をしていますね。ただ、価格的な儲けは弱いかもしれません」

「なるほどね」


 儲けは出るが、【A】ランク商品を狙う今の状況では弱い。

 二人はこの杖を控えに置く形にした。


「マーちゃんさん、あれはどうですか?」


 新たな商品探しに戻ろうとすると、今度はツバメはやってきた。


「ヒヨコ……? 始めて見ました」


 ツバメが指さしたのは、大きくなるヒヨコのオブジェクトアイテム。


「大型化する素材を使って、わざわざヒヨコ……これはマニアックですね。絶対に好きなプレイヤーはいますし、ちょっと高くても売れます。でもその人を見つけるのに時間がかかりますね」

「なるほど……では個人的な買い物にしておきましょう」


 そう言ってツバメは、大きくなるヒヨコをその場で購入して頭に乗せる。

 錬金術師がレア素材を使って精製した玩具は、完全に好事家の仕業だ。


「……なかなか難しいわね。これだけ物があるんだし、余裕のある時に宝さがし感覚でやったら楽しそう」

「はい、結構ハマりますよ」


 そんな会話を交わし、再びお宝探しに戻ろうとする三人。

 やはりバイセルの街は面白い。


「あ、あの……」


 するとそこに、まもりがそーっと声をかけてきた。


「あ、あそこにある格好いい斧、もしかしたら……」


 自信なさそうに盾に隠れたまま、指を差す。

 屋根付きの露店がひしめき合い、すれ違うのも大変な狭い道を先行して進むまもり。

 そして一つの露店に並んだ武器の中から、端にあるものを指さした。


「お、斧はあんまり高く売れないでしょうか」

「ダメですね」


 マーちゃんはそっけなくそう言うと、そそくさと露店の並びを出る。

 そして肩を落とすまもりと共に、人通りのないところまで来たところで振り返った。


「良いものを見つけましたね! まもりさん、お手柄ですよ!」

「……え?」


 突然の態度の変化に、驚くまもりたち。


「あれは【ディスターアックス】です!」

「良い品なのですか?」

「ディスター・ハイラインはあらゆる武器を自在に使って魔を打ち倒した『星屑』世界の英雄とされています。そんなディスターが遺したとされる武器『ディスターズ』には、コレクターもいて非常に高い価格が付きます。中でもスキルを二つ持つ斧をあの価格で売っているのは、そんな付加価値を知らないか、早い集金が必要だからです。あれを手に入れれば、一気にランクアップ、売ればかなりの金額が狙えますよ!」

「なるほど。マーちゃんがさっさとあの場を引いたのは、『特別な物かも』とバレないため?」

「はい、ここでは駆け引き一つで値段が十万百万と変わってきますから」


 そう言って笑うマーちゃん。

 しかしその身体をビクリと震わせる。


「早くあの斧を狙いましょう! 見てくださいあの商人の動き、確実に『ディスターズ』に気づいています! 資金繰りが済めば先に買われてしまいますよ!」

「ツバメ!」

「はい! すぐにメイさんのもとに向かいます! 【疾風迅雷】!」


 ツバメは【加速】の連射で、最速でメイを呼びに行く。


「……あの『気づいた』商人も巻き込めるかしら」

「いけますよ! 付加価値に弱いのは商人も同じです!」


 ライバル商人の足止めを目論むレンに、マーちゃんが応える。

 凄まじい速度で帰ってきたメイは、狙い通り大量のステータス上げの果実を持って戻ってきた。

 メイから受け取った果実の数を見て、マーちゃんは即座に声をあげる。


「さあこちら 『野生児メイちゃんのステータス上げ果実』ですよ! なんと今日は10%オフで大量奉仕です!」

「ですっ!」

「「「ッ!!」」」


 マーちゃんとメイの声に、すぐさま集まってくる商人たち。

 ただでさえ流通が少ない果実が、定番価格の10%引きで購入可能。

 しかもそれが『強い、可愛い、野生的』で話題の『メイちゃん』のものだと分かれば、購入を止める理由はない。

 商品はあっという間に完売する。

 なんと『ディスターズ』に気づいた商人まで、メイの果実を購入しに駆けてくるほどの効果だ。

 売り上げを手にしたマーちゃんは、即座にツバメに購入を任せる。


「急ぎましょう! ツバメさんお願いします!」

「はいっ! 【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】っ!」


 ツバメはマーケットを走り壁を駆け、見事な回避で露店の承認のもとへ。


「この斧……買います!」


 こうしてメイたちは見事、【C】ランクの武器でありながら【B】ランクほどの価格で売買できる【ディスターアックス】を、安価で購入することに成功した。

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