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720.お次は浄化剤です!

「それにしても、まもりの防御はすごいわね」

「い、いいいいえっ、そんなことは……っ」


 見事な鉄壁防御を見せたまもりに、レンが感嘆する。


「私たちは回避が前提なので、ここまでしっかりとした防御は初めて見ました」

「カッコよかったよー!」


 メイもこれには「うんうん!」と大きくうなずく。

 事実大したものなのだが、パーティでの戦闘経験がないまもりはあまりピンと来ていないようだ。

 そっと盾に顔を隠して恥ずかしがる。


「そ、それに、大ボス相手に勝ったこともありませんし……」


 大ボスを相手にしようとすると、当然パーティプレイになることが多い。

「もしもパーティを組んだら絶対に迷惑をかけないよう」に準備しよう。

 でもパーティで活躍できる自信がないから、声を掛けることができない。

 声を掛けられないから、日の目を見ないというループ。

 そんな毎日を過ごしてきたため、自信がないまま完璧な防御を見せるという不思議な状況になっている。


「ただ今帰りましたー」


 四人は王都の植物学者のもとへ。

 猫まみれのメイは、手に入れた【清地薬】を植物学者へ渡す。


「【清地薬】ですね、間違いありません。これで緑の毒も消すことができるでしょう」

「最後の【浄化剤】はどこに行けばいいの?」


 レンがたずねると、植物学者はわずかに表情を変えた。


「調べてみたのですが……【浄化剤】は今、少し難しいかもしれません」

「今は難しい……? 朝夜で発見しやすさが変わるようなものなのかしら」

「そんなのがあるの?」

「光る素材が必要ゆえに、夜に探しに行くアイテムというのもあるのです」

「なるほどー」


 首と尻尾を傾げていたメイがポンと手を打ったのを見て、まもりは思わず和む。


「【浄化剤】の在庫を持っているのは、バイセルの街に住む商人トレーダです」

「バイセルの商人トレーダね。とにかく行ってみましょうか」


 四人はメイの猫をはがしつつポータルへ向かい、【浄化剤】があるというバイセルの街へ。


「わあーっ! すっごーい!」


 メイはたどり着いた街の光景に、思わず声を上げる。

 中央通りから十字に続く道には、商店はもちろん露店もひしめき合っている。

 石畳の上にじゅうたんを敷き、そこに商品を置いての商売は、まさに自由な商人都市といった感じだ。


「商業都市バイセル、本当に賑やかなところね」

「やはり商人さんが多いですね」


 並んでいる武器等を、ついつい見ながら進むツバメ。

 メイは面白そうなアイテムを見かけて近寄り、見つけた原住民風の槍にゴクリと息を飲む。

 まもりも刃付きの盾という変わり種を見つけて、目を取られる。

 中には何かのクエストアイテムであろうものも置かれているのが興味深い。

 星屑の世界はアイテムや装備品がとにかく数が多く、謎の商品もあれこれ見られるのが特徴だ。


「ここね」


 たどり着いたのは、豪商NPCの住む屋敷。

 トレーダは、屋敷のエントランスで部下に指示を出していた。


「こんにちはー!」


 メイが元気にあいさつすると、若き豪商トレーダは部下を退けこちらに向き直る。


「僕に何か用かな?」

「【浄化剤】を売って欲しんだけど」

「【浄化剤】? いいだろう。それなら――――1億いただこう」

「「「「1億!?」」」」


 ハウジング時に使われるような価格に、四人思わず声をあげる。


「今【浄化剤】は材料である『女神の涙』が不足しているから、価格が異常に高騰しているんだ。そして商人は高く売るのが仕事だろう?」


 そう言って笑うと、トレーダは「しかし」と指を立てる。


「【浄化剤】の商品ランクは今【A】だ。同ランクの商品を持って来ても交換に応じよう。資金を集めるか、同クラスの商品と交換するかを選んでくれ。まあ、君たちのような冒険者には、少し難しいかな、ふふふ」


 用件を伝え終えたトレーダは、再び部下との商談に戻る。


「『買い取る、交換する、奪い取る』辺りで手に入れる感じかしらね。さて、どうしましょうか」

「普通に考えれば1億なんてお金そうそう手に入りませんし、交換用のアイテムを探して見つけるのも難しそうですね」

「とはいえ、それ以外の手に今のところ当てはなし」


 そう言いながらも、迷うことなく街を進むレン。


「ただ、場所がバイセルだったのは幸いだわ」


 まるで当てでもあるかのようにレンは進む。

 その先にあったのは、一つの露店。


「ああっ! マーちゃんさん!」

「おや皆さん、今日はどうされたのですか?」


 そこにいたのは、ヤマトでのイベント以来の付き合いである商人マーちゃん。

 すぐに尻尾を振り振り駆けつけるメイと、早くも盾に隠れて人見知るまもり。

 レンはさっそく、状況を説明する。


「なるほど……バイセルの自由市は世界中から様々な商品が集まるのですが、大抵の品には価格やレア度に合わせたランクがあるんです。そして『C』ランク以上のものは、お金で買うと高額なものばかりになります」

「ランク制度があるのですか……」

「そして売買価格は自由。なので良い掘り出し物を見つけて安く買う。レアなものをより高く売るという楽しみがあります。もちろんスキルなどを使った騙し騙されもあるので、ここでは色んな事件が起きてるんですよ」


 バイセルでは一つのアイテムの交換をしていってどこまで稼げるかといった催しから、掘り出し物探しといった企画が年中行われており、かつては盛大な詐欺事件も起こった。

 広大な『星屑』の世界には膨大な武器防具やアイテムが存在するため、見て回るだけでも面白い。


「基本的には、最終的に交換を狙う形がいいと思いますよ。その提示額は稼ぐ商人が急いでいるならなんとか出せるという価格ですから、冒険者なら何かしらの方法で交換できるものを持って来いというクエストなんだと思います」

「なるほどー」


 こくこくと興味深そうにうなずくメイ。


「とはいえ、本当に一から始めるとなると長い時間がかかるでしょう。そこで、元手になるお金を一気に集めてしまいましょう!」


 これまでのドロップ等をさばき、メイたちもある程度の手持ちがある。

 しかしそれでも【A】ランクのアイテムまでたどり着くのには、かなりの試行錯誤が必要になるだろう。


「でも、どうやって?」

「ここは私におまかせください! メイさんたちにはお世話になっていますからね! 気合入れていきますよ!」


 そう言ってマーちゃんは、得意げに拳で胸を叩いてみせた。

脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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◆◆◆新作よろしくお願いいたしますっ!◆◆◆

【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[一言] 論理クイズは大正解ですね、やっぱりこの難易度は簡単すぎるかな
[一言] 色々隠しイベントとか見つけてるからレアどの高いアイテム持ってそうではあるけどね
[良い点] >>「元手になるお金を一気に集めてしまいましょう!ここは私にお任せ下さい!」 「でもどうするの?」 「はい、まず皆さんに、いくつかのアイテムを購入して貰います。コレとかお勧めですよ」 …
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