461.混戦
ツバメの参戦によって状況は一転。
猛威を振るっていたイフリートが落ち、自然と近接二刀流同士の戦いへと移行する。
ツバメと瑠璃花は、静かに互いを見つめ合う。
「メイちゃんパーティのアサシンと戦えるなんて、うれしいかも」
「あ、ありがとうございます」
ツバメ、少し返答に困ってなぜかお礼を言う。
「【輝刃降臨】……いくよっ!」
「【加速】【リブースト】【四連剣舞】!」
その範囲を2メートルと長く伸ばした短剣の連撃を高速移動でかわし、すぐにまた舞い戻って放つ剣舞。
「【クイックダンス】!」
それは移動スキルとして使えるものではないが、近接同士の戦いには非常に有効。
細かく速い足の運びで、瑠璃花はツバメの放つ四連撃を全てかわしてみせた。
「完全回避……っ!」
そのまま一気に前に出ると、【クイックダンス】によって絶え間なく移動しつつ通常攻撃を放ち続けるという戦法で迫る。
まさに剣舞と呼べる動きの連続攻撃に、ツバメも回避に集中。
振りの速さは短剣、だがその範囲と威力は大剣を超える。
これが瑠璃花の戦闘方法だ。
「【加速】っ!」
あえて攻撃スキルを使わないことで最速の攻撃を続けてくる瑠璃花に、ツバメはたまらず後方へ移動。
「【投擲】!」
「【投擲】!」
そして偶然にも同じタイミングで放ったブレード同士が、空中でぶつかり弾け飛んだ。
トップの名に恥じない、見事な戦いぶり。
しかし、両者の違いはここからだ。
「高速【誘導弾】【ファイアボルト】!」
再び駆け出した瑠璃花をけん制する速い炎弾が、そのバランスを若干崩す。
「【加速】【リブースト】【電光石火】!」
わずかとは言え生まれた体勢の変化は、同一方向への三連続加速攻撃をかわし切ることができない。
「くっ」
ツバメの斬り抜けが腕を斬り、2割ほどのダメージとなる。
イフリートが落ちたことでレンが援護に回れるようになり、戦況が変わり出した。
金糸雀とアトラクナイアの戦いにも、変化がおとずれる。
「【炎舞】!」
「【アクセルスウィング】!」
「【幻燈豪炎撃】!」
「【キャンセル】【アクセルスウィング】!」
地面に叩きつけられた【幻燈錬機】が爆発して炎をあげる。
「ちっ!」
炸裂する炎から、慌てて距離を取る金糸雀。
「高速【フリーズストライク】!」
ここでレンが放つ氷砲弾を、アトラクナイアは木の陰に隠れて必死の回避。
距離を取りつつ、再び【幻燈錬機】を掲げる。
「【氷舞】!」
するとさらに四つの氷刃が生まれ、金糸雀へ向けて飛翔。
追って来る炎球に新たな氷刃が加わり、追尾弾の数が倍になる。
「だあああっ! 面倒だなこれ!」
木にぶつかった炎球が炸裂し、余波でわずかに体勢を崩される。
【幻燈錬機】による追尾弾の連打と、直接攻撃の連携は意外と侮れない。
しかし『追尾』を利用して戦うアトラクナイアは、自分以外にも似た戦い方をする者がいないと思い込んでいたことが転機となる。
「うぇえっ!?」
大きく外から回って飛んで来た【低速】【誘導弾】【フリーズボルト】が、その肩口に炸裂。
体勢を崩した。
もちろん待ち続けていたこの隙を、金糸雀は見逃したりはしない。
「待ってたぜこの瞬間を! もう召喚獣もいねえんだ、術師はここらが引き際だぜ! ――――【金剛武装】!」
スキルを発動し、狙いをアトラクナイアに絞る。
すると追って来ていた炎球と氷刃が、その身体にぶつかり弾けた。
「さあ……もう逃がさねえぞ」
しかし金糸雀は微動だにしない。
ただ真っすぐ、アトラクナイア目がけて歩き出す。
「【炎舞】!」
再び放たれる炎球。
金糸雀はもう、回避など行わない。
「【氷舞】!」
直撃する追尾弾をものともせず、ただハンマーを担いで進む。
「と、止まらない……」
【幻燈錬機】による攻撃は、当たれば敵の体勢を崩すのが強み。
だが【金剛武装】の効果はどんな攻撃を受けてもノックバックなしで突き進み、『中遠距離攻撃』に対する防御まで大きく上げるというもの。
そのうえさらに、移動速度までもが向上していく。
「【炎舞】! 【氷舞】【炎舞】! もう一回【氷舞】!」
徒歩が早歩きになり、やがて駆け足になる。
一撃必殺のハンマーを肩に担ぎ、炎球の炸裂をものともせずに迫り来る金糸雀の姿は、もはや狂っているようにしか見えない。
しかし高速移動スキルを持たないアトラクナイアは逃げることもできず、とにかく全力で魔法を飛ばしまくる。
「【炎舞】【氷舞】【炎舞】【氷舞】【炎舞】っ!!」
金糸雀の足は、それでも止まらない。
足音を響かせ、砂煙を上げるほどの勢いで迫り来る。
「……さあ、勝負だ」
そして一言。
手にしたハンマーを高く掲げ、目前にまで迫り来た。
「【炎舞】【氷舞】【炎舞】【氷舞】! 【幻燈豪炎撃】ぃぃぃぃ――――ッ!!」
豪炎を噴き上げる【幻燈錬機】を、アトラクナイアは全力で叩き付ける。
すでに全身が燃え盛っている金糸雀、それでもなお止まらない。
「【ミョルニル・インパクト】ォォォォォォ――――ッ!!」
「あ、あわああああ――っ」
振り降ろされた大槌は地を砕き、天高くド派手なエネルギーエフェクトを噴き上げる。
残りHPの全てを消し飛ばされたアトラクナイアはそのまま宙を舞い、「きゅう」と地に伏した。
「すごい……こんな死に戻り方……初めてでゅあ」
そしてなぜか最後には、感動の面持ちで消えていったのだった。
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