表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

441/1392

441.毒の沼と危険なスライム

 七新星によって遠く投じられた【輝石】目指して、走り出したメイたち。

 もちろんここでもメイの【帰巣本能】によって、方角のミスは一切なし。

 前方の敵陣営パーティや黒の鎧をまとった暗黒騎士をかわしながら、先を急ぐ。


「……あれ、霧が消えそうだよ」

「スモーキング・フォレストはここまでってことかしらね」

「ようやく、薄暗い空間から抜け出すことができます」


 そこは開けた、密林にできた穴のような場所だった。

 陽光が広がり視界もクリア。

 思わずメイも、尻尾をグッと張って伸びをする。しかし。


「これは……」

「またひどいマップだな……」


 同行組の面々がつぶやく。

 現れたのは、その全てが紫の液体で作られた巨大な毒だまり。


「おい見ろ! あそこに落ちたのって【輝石】じゃないか!?」


 すると前にいたアングル陣営のパーティが、毒沼の中央付近を指さして叫んだ。

 見れば確かに、一か所だけ白い光を放っている場所がある。

 どうやら【輝石】は、毒だまりの中心に落ちたようだ。

 アングル族プレイヤーはたちさっそく毒沼へと踏み込んで行く。しかし。


「ここの毒ヤバいぞ……っ。HPの減りが半端じゃない!」


 大急ぎで【輝石】へと走るがそれでも間に合わず、慌てて引き返す。


「耐性装備があって良かったぜ!」


 そんな中、引き返すことなく突き進んでいくのは毒耐性付きの装備と、高速移動スキルを所持するプレイヤー。

 一気に【輝石】輝石への距離を詰める。


「いけるぞ! 【輝石】の回収成功……どぅああああっ!?」


 そして今まさに【輝石】に手を伸ばそうとしたところで、その猛烈な衝撃にすっ転ぶ。


「わあ……っ!」


 メイもこれには感嘆の声を上げる。

 地響きを起こすほどの落下で盛大な毒しぶきを巻きあげたのは、紫色をした巨大すぎる毒スライムだった。

 二階建ての家ならちょうど1軒分はありそうな毒スライムは、転んだままのプレイヤーに向けて跳躍。


「う、うおおおおおお――――っ!?」


 広範囲ボディプレスの威力はすさまじく、その上すでに猛毒でHPが減っている状態。

 わずか一撃で、HP全損となった。


「【輝石】は俺がっ!」


 その隙に高速移動スキルで【輝石】を手にしたプレイヤーが、大慌てで毒沼を抜けようと試みる。

 しかしそれも間に合わない。


「なっ!?」


 巨大スライムはその形状を変え、頭をもたげた蛇のような形状に。

 そのまま伸び上がり、逃げるプレイヤーの背を叩きつけた。

 そしてスライム登場に【輝石】へ向かうのをためらったプレイヤーも、毒によるHP減少で倒れていく。


「こんなの……どうしろって言うんだよ……!」


 あっという間にHPを削り切ってしまう毒だまりに、大ボス級のスライム。

 恐ろしいその状況に、集まったプレイヤーたちは途方に暮れる。

 七新星に投じられた【輝石】は、どうやら最悪の場所に落ちてしまったようだ。


「ここはわたしに、おまかせくださいっ!」


 そんな中、ビシッと手を上げて【輝石】回収に名乗りを上げたのはメイ。


「そういうことなら、援護するわ」


 レンは杖を掲げながら、ほほ笑みかけた。


「レンちゃんが助けてくれるなら、絶対大丈夫だねっ!」


 メイもうれしそうに拳を握る。


「それでは行ってきます! 【バンビステップ】!」


 走り出したメイはそのまま、毒だまりを駆けていく。

 すぐに始まる、毒によるHP減少。


「【魔砲術】【フレアストライク】!」


 レンは毒だまりの手前から炎の砲弾を放って、けん制。

 その隙を突き、迫るメイ。

 スライムがその動きに気づいて、身体をムチのような形状へと変える。

 放たれるのは、広範囲の薙ぎ払い。


「【ラビットジャンプ】! からの【アクロバット】!」


 これを難なくかわしたメイは、そのまま空中で一回転。


「【フルスイング】だぁぁぁぁぁぁ――――っ!!」


 豪快なエフェクトと共に放つ全力の振り降ろしを、巨大毒スライムに叩き付ける。

 その圧倒的な威力に、超巨大スライムは真っ二つになった。そして。


「ええええっ!?」


 そのまま2匹の大型トラック級スライムとなり、メイに圧し掛かりにいく。


「うわっと! 【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」


 とっさの後方宙返りで、圧し掛かりをかわす。


「【魔砲術】【フレアストライク】!」


 片方の動きは、即座にレンが魔法で止める。

 残ったもう一方目がけて、メイはすぐさま走り出す。


「もう一回【フルスイング】っ!」


 直撃して真っ二つ。

 すると今度は、自動車サイズのスライム2体になった。

 足元の毒液を大きくなびかせ、2体は同時変形。

 錐のようにとがった先端でメイを突く、形状変化攻撃だ。


「【アクロバット】!」


 見たこともない攻撃だが、予備動作をしっかり見ていたメイはこれを側転で回避。

 すると2匹のスライムは大きく弾み、同時にメイに飛び掛かる。

 その勢いはもはや砲弾だ。


「よっ! それっ!」


 しかしメイは、見事に剣で合わせてカウンター。

 2匹のスライムを同時に斬り払って振り返ると、ビニールプール大のスライムが4匹になっていた。


「ま、また増えてるーっ!」


 今度はメイの四方を取り囲んだスライムたちが、砲弾になって飛び掛かってくる。


「はいっ!」


 これを引き付けたところで、しゃがんでかわす。

 ぶつかり合って、弾け合うスライムたち。


「ここだーっ! 【ソードバッシュ】!」


 駆け抜ける衝撃波がスライムたちを消し飛ばし、その数は通常大が8匹に。

 今度は一転、残った巨大スライムの方へ向かって駆け出していく。

 そして一斉に飛び上がると――。


「え、ええええええ――――っ!?」


 また、元の超巨大スライムに戻ってしまった。

 家一軒分の大きさに戻ったスライムは、毒だまりを強く打ち付けて跳躍。

 その驚異的な体積で、そのままボディプレスをしかけてくる。


「【裸足の女神】っ!」


 対してメイは、ここで速度アップ。

 しっかりとその広い攻撃範囲から抜け出してから【ラビットジャンプ】で跳躍。


「あぶなかったー!」


 巻き上がる大量の毒液と、鳴り渡る地響き。

 巨大スライムが着地際に起こした衝撃波も、見事にかわしてみせた。


「どんどんHPを削る毒沼に、ボスのギミックは『復活』……とんでもない構成ね」

「大丈夫ですか?」


 ツバメは「いつでもいけます」と、うなずいてみせる。


「ありがとうツバメ。でも大丈夫よ。もう勝ち方は分かったし――――何より」


 レンは杖を掲げる


「メイ! 体力は大丈夫!?」

「問題ありませんっ!」

「それじゃあ本番、いきましょうか!」

「りょうかいですっ!」


 二人のやりとりに「ここからが本番?」と、驚きふためくアングル陣営と同行組。


「何より、メイと一緒なんだから」


 戦いは仕切り直し。

 意外にもレンは、この難しい状況を前にして楽しそうに笑った。

誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] スライムなら定番は凍らせるとかかな
[一言] とんち問題ですが、前半の部分はミスリードの部分なので無視しても問題無かったりします、つまようじ2ほんで、しかくをつくるにはどうしたらいいでしょうか? のところだけ考えればいいです。 ちなみに…
[一言] いくつか勝ち方を考えたけど、1番楽で、1番そんなのアリ?!ってどんなのかなぁと。 次回に期待!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ