表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

400/1395

400.召喚しておいて倒します!

「ベルゼブブ、迫力すげえ!」

「本当だな……!」

「これはとても強そうですねぇ」


 妖しい輝きを灯す篝火と、にわかに光を残す魔法陣。

 現れた大きなハエの王に、結社『ダークブラッド』を名乗った生徒たちは腰を抜かし、魔法学校住人たちは感嘆する。

 武器を構えるのと同時に、始まる戦い。


「風と水、炎あたりの属性攻撃に気を付けて!」

「りょうかいですっ!」


 ベルゼブブが目を輝かせると、目前に現れた竜巻が爆発。

 突風と共に、水弾が降り注ぐ。


「【加速】【リブースト】!」


 これをツバメは、いち早く範囲外へ駆けることで回避。

 メイも身体の軸をずらすだけで、見事にかわす。

 するとそんな前衛組に向けて、ベルゼブブは低空飛行で一気に距離を詰めてきた。


「二人とも、念のため【咆哮】にも注意して!」

「「はいっ!」」

「ヴォォォォォォ――――ッ!!」

「【ラビットジャンプ】!」

「【跳躍】!」


 レンの警告が活きる。

 放たれた大きな【咆哮】にもメイとツバメはしっかり反応し、斜め前方へのジャンプで効果範囲を飛び越えた。


「【アクアストライク】」

「【フリーズブラスト】」


 生まれた隙を突き、メルーナとレンが魔法攻撃を放つ。

 水魔法が先行したことで、見事に凍結を取ることに成功。


「【バンビステップ】!」

「【加速】!」


 着地したメイとツバメは、距離を詰めにいく。


「【フルスイング】!」


 そして凍結が解けた瞬間を狙って、全力の叩きつけを放った。


「ええっ!?」


 しかしベルゼブブの身体は分裂。

 三百を超える小型のハエになって、メイの攻撃を回避した。

 四方八方に広がったハエたちは、バラバラになって再び前衛組に襲い掛かる。


「二人とも下がって! 【ファイアウォール】!」

「【ラビットジャンプ】!」

「【跳躍】!」


 レンの張った炎の壁が、二人を守る。

 するとハエたちは集合して、再びベルゼブブの姿に戻った。


「【加速】【リブースト】!」


 そこに飛び込んで行くのはツバメ。


「【アクアエッジ】【八連剣舞】」


 放つのは水刃による八連撃。

 だがこれもベルゼブブは、分裂することで回避する。


「【アクアグレネード】!」


 続けざまにメルーナが放つ水の爆発も、速い空中移動をするハエたちにはわずかなダメージしか与えられない。

 ベルゼブブは、余裕を感じさせる挙動で元の姿に戻る。


「拡散範囲が広いからー、範囲魔法でもダメージを奪うのが難しい」


 メルーナがそう言うと、レンは小さく息をついた。


「……メイ。どういう形でもいいから一度ベルゼブブを分裂させてもらえる?」

「おまかせくださいっ! 【装備変更】【バンビステップ】!」


 メイは頭装備を【鹿角】に変え、速い移動で一気に距離を詰めていく。


「あの赤い光……メイ、炎がくるわ!」

「ありがとうっ! 【装備変更】!」


 レンの注意通り、猛烈な炎を吐き出すベルゼブブ。

 メイは身にまとった【王者のマント】で打ち消して、そのままっ直ぐ前進。


「【コンセントレイト】」


 それを見たレンは、ここで魔力の集中を始める。

 するとベルゼブブは意外にも、攻撃を受ける前にその身体を分裂させた。


「メイ、分裂後すぐに再合体して攻撃してくる可能性もあるから気を付けて!」

「りょうかいですっ!」


 それはベルゼブブの持つフェイント攻撃。

 分裂の直後に再集結したベルゼブブは、振り上げた前足に業炎を灯し、全力で叩きつけにきた。

 だがレンの先読みによって、メイにとってはこれも余裕の攻撃となる。


「よっと!」


 足の動き一つで、振り降ろしを難なく回避。


「【装備変更】【アクロバット】!」


 そこから広がる爆炎も、メイは側方宙返りで華麗に回避してみせる。


「いきます! 【ソードバッシュ】!」


 反撃は、駆け抜ける猛烈な衝撃波。

 これもベルゼブブは散開で回避して、空中に大きく広がった。


「ああもう、ウザい回避だなあ!」

「分裂が攻撃にも回避にも使えるって、やっかいすぎだろ!」


 高威力の攻撃をことごとく分裂で避けるベルゼブブに、声をあげる魔法学校住人たち。

 しかしこれは、完全に狙い通りだ。


「ありがとう、メイ」


 レンはその腕に着けていた【宵闇の包帯】に手を伸ばす。

 戦闘開始と同時に『ため』ていたのは【ファイアボルト】

 そこに【コンセントレイト】による威力上昇を追加。

 緩い風に飛ばされるような形でほどけていく包帯と、腕から怪しい輝きが滲み出すエフェクト。

 レンは手にした杖を、大きく広がったベルゼブブたちに向けると――。


「分裂がアダになったわね! 高速【誘導弾】【ファイアボルト】!」


【宵闇の包帯】によって、【ファイアボルト】がその効果を変える。

 一斉に放たれた100の炎の弾丸は、まばゆい無数の軌跡を描きながら、分裂したベルゼブブたちを焼き払っていく。

 あがる悲鳴と共に HPも大きく減少。

 その分裂体の多くを焼かれたことで強制集合させられたベルゼブブは、身体を大きくフラつかせる。


「ヴォォォォォォ――――ッ!!」


 しかしすぐにその目を真っ赤に輝かせ、高速飛行を開始。

 再び無数のハエと化して猛烈な勢いで飛び回ると、大ダメージを与えてきたレンに襲い掛かる。

 その驚異的な状況に、誰もが思わず息を飲む。

 しかしレンは、全く慌てていない。


「……散々魔法と分裂で戦ってきたけど、どうせ最後の一撃は【喰らい付き】なんでしょう?」


 目前で合体し、空洞のような口を大きく広げるベルゼブブ。


「ハッ!」


 レンはまるで「知っていた」とばかりに、持ち換えていた【魔剣の御柄】で斬りつけた。


「解放! 【フレアストライク】!!」


 続けざまに目と鼻の先で放った炎砲弾が、ベルゼブブを大きくのけ反らせる。

 こうなってしまえば、あとは段階を踏んでいくだけだ。


「【ラビットジャンプ】! がおおおおおお――――っ!」


 飛び込んできたメイが【雄たけび】で動きを止める。


「【アクアストライク】!」


 メルーナの魔法で追い打ちをかけたところに、駆け込んでいくのはツバメ。


「【電光石火】【紫電】!」


 再び雷光で硬直を取れば、あとは締めるだけ。


「これで終わり――――【フレアバースト】」


 最後はその顔面に突きつけた杖から放った爆炎が、全身を燃やし尽くす形でトドメ。

 ベルゼブブは、粒子となって消えていった。


「最後の奥義は【暴食】の設定から。悪魔の手の内なんて――――とっくに履修済みなのよ」


 そう言って、舞い散る火の粉を払うように髪をひと振りするレン。


「すげえ……初見のボスを、まるで対策してたかのような完封ぶりだった……」

「敵の手の内を全部知ってるみたいな感じだったな。強ボスのはずなのに、こんなにあっさり……」

「完璧でしたねぇ」


 全ての攻撃方法が『前もって知られていた』かのような戦いに、わいわいと盛り上がる魔法学校住人たち。


「でも何より……」

「ああ、何より……」

「「完璧な中二病だったな」」

「やめて!」

「怪しい包帯と、悪魔に対する深い造詣。もしかしてこの子……闇の使徒ってやつか?」

「それはもう卒業したの! ていうかなんでそんなの知ってるのよ!?」


 後輩使徒たちの活躍を知る住人の言葉に、いよいよ顔を真っ赤にするレン。


「なるほど……元・闇の使徒か」

「それはそれで闇の使徒の上をいく存在みたいな雰囲気が出るからやめて!」


 魔法陣輝く妖しい部屋で、魂の叫びをあげたのだった。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 装備変更→鹿角→装備変更→マント→アクロバット マント変更時に猫耳に変わったってことかな?
[一言] ??「あれが噂のナイトメアか、七つの悪魔を全て召喚する気なのか?」 レン「なんでそう言うことになってるのよー!?」
[一言] 予告したとおり四人の嘘つきパズルです。 嘘つきは三人正直者は一人だけです まりえ:かおりは正直 かおり:まりえとさとみのどちらかは嘘つき さとみ:りんなが言っていることは嘘 りんな:まりえと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ