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388.青バラのリリーネvs野生のメイ

 メルーナはもう、ワクワクが抑えられない。

 難攻不落のホウキレースで完全勝利を見せたメイに、キラキラと輝く目を向ける。


「ホウキレースでは後れを取りました……ですが」


 二人のお嬢様の敗北を前に、ついに動き出す青バラのリリーネ。

 これまた高級そうな渋い色の木材に、金の意匠が付けられた豪華な短杖を手に取った。


「魔法による決闘こそ、古くから伝わる魔導士の正しき勝負。ここで名家の名家たる所以を教えて差しあげます」


 絶対的な自信と共に、壇上へと誘う青バラのお嬢様リリーネ。

 魔法で撃ち合う形も、防御で防いで迫る形も、プレイヤーたちの全ての工夫を打ち破ってきた少女だ。


「さあ、始めましょう」


 優雅な足取りで舞台へ上がると、静かに杖を構えた。

 メイも軽い跳躍で、壇上に上がる。


「いよいよか……」

「相手はこれまで全ての挑戦者を、難なくさばいてきた無敵魔導士だぞ」

「重装騎士の防御でも、ハイレベル魔導士の攻勢でも届かなかった最強令嬢……っ」

「……メイ、がんばれー!」


 遅れてきた見学者たちが「まあ、いつものやつだろ」と何となく視線を送る中、茶髪お嬢様戦から勝負を見てきた住人たちは真剣そのもの。

 メルーナもドキドキと期待の入り混じった顔で、両の拳を強く握っている。


「それでは始めます」

「用意……スタート!」


 合図は茶髪と銀髪の二人。


「いきます! 【サンダーボルト】!」


 先手はもちろんリリーネ。


「うわ! やっぱ速え……っ!」


 恐るべき速さの魔法連射は、まさに怒涛。

 初撃の凄まじい速さに加えて、リキャスト速度も段違いだ。

 その上飛んで来る魔法自体も、レンの高速魔法に劣らない。


「あれが反則なんだよ! 俺たちが観測したところでは【クイックキャストⅢ】【リキャスト短縮Ⅲ】を持ってないと撃ち合いにもならないんだ……っ!」

「確かに、あれは反則ね」


 このクエストのためだけに、結構なレアものである二つの『キャスト』スキルを探すのは面倒が過ぎる。


「……でも、関係ないわ」


 メイの手にあるのは【魔断の棍棒】


「それそれ! それそれそれそれそれーっ!」


 すさまじい勢いで飛んでくる雷光弾を、余すことなく打ち返していく。

 そして打ち返された雷光弾が、再び青バラの放つ雷光弾にぶつかり弾け散る。


「すっげえ……! なんだあれ!」

「あんな戦い方、見たことないぞ!?」


 ラウンジをまばゆく照らす白光に、思わず目を奪われる魔法学校住人たち。


「まだまだですっ!」

「まだまだいきますっ!」


 さらに連射速度を上げる青バラに、メイも気合を入れ直す。

 派手にぶつかり合い飛び散る光の粒子。

 それでもメイは一歩も下がることなく、むしろ大きく一歩踏み込んでいく。


「くるっ!」


 さらに【聴覚向上】がサウンドエフェクトの変化を捉え、初級魔法から中級魔法への移行を察知。


「【エーテルストライク】!」

「【フルスイング】っ!」


 とても中級とは思えない早いキャストタイムで放たれた魔法も、メイは見事な振り降ろしで打ち返した。


「【エーテルストライク】!」


 反射された魔法に、すかさず放った青バラの魔法がぶつかり爆発。

 閃光が駆け抜けていく。

 これには気軽な感じで見学し始めた住人たちも、思わず立ち上がってメイの戦いに夢中になる。

 するとリリーネは、ここで火力を上げてきた。


「【エーテルキャノン】!」


 飛び出す強烈な上級魔法。

 それは一定の範囲をまとめて消し飛ばす魔力砲だ。


「広範囲の魔法で、一気に場外を狙う気かっ!」

「【ラビットジャンプ】!」

「おおっ! かわしたぞ!」


 迫る魔力波の一撃を、大きな跳躍でかわすメイ。

 だがこの流れは、高く飛ばせて落とすという『ラプラタで姉妹が見せた戦法』そのものだ。


「――――【マジックエコー】!」


 それはリリーネの持つスキルの中でも、かなり強力なものの一つ。

 同じ上級魔法を二連続、しかもその方向を自在に変えて放つことができるというもの。

 決闘クエストで使用されることはめったにない、ある種の奥義だ。


「【ターザンロープ】!」


 しかしメイも【ターザンロープ】をシャンデリアに引っ掛け再上昇。

 魔力砲をかわし、そのまま【アクロバット】で体勢を整えながらリリーネのもとに飛び込んで行く。


「いけるかっ!?」


 思わず身を乗り出す魔法学校住人たち。

 だが、魔法学校首席の【リキャスト】は早い。

 この状況においてもまだ、先行できるだけの速度を誇る。

 跳ばせて、もう一度跳んだところを落とす。

 すでに目前まで迫っているメイに向け、再び杖を構えると――。


「これで終わりです! 【エーテルストライク】!」


 放つ魔力の砲弾。

 それはまさに、メイにとって狙い通りの展開。


「【アクロバット】! からの【フルスイング】だああああ――――っ!!」


 前方宙返りから、叩きつけるような形で振り降ろす【魔断の棍棒】で、魔力砲弾を打ち落とす。

 その先にはもちろん、杖を掲げたままのリリーネの姿。


「ああっ!!」


 着弾した魔力砲弾は炸裂し、リリーネを一撃で土俵際へと追い込んだ。


「【装備変更】!」


 メイは着地と同時に【猫耳】を【鹿耳】に換え、青バラに目標を定める。

 あとは真っすぐ駆け抜けるだけだ。


「とっつげき――――っ!!」

「きゃ、きゃああああああ――――っ!!」


 直撃する強烈な体当たりはそのまま、最強魔法使いリリーネを場外へと弾き飛ばした。


「「「き……きたぁぁぁぁぁぁ――――っ!!」」」

「青バラに……勝ったぞー!」

「ホウキレースに続いて、完璧な勝利だぁぁぁぁ!!」

「メイ、本当にすごいー!」


 魔法がかすめることすら許さなかった完璧な勝利に、観戦者たちは歓喜の叫びをあげる。

 多少舞台が狭くなったところで、複数の敵に囲まれてもいなければ、足場が不安定なわけでもない場所。

 メイが遅れを取りようはずもない。


「メイさん、お見事でした」

「攻撃スキルは使わず、ソフトにまとめたのね」

「剣だとリリーネちゃんがケガしちゃうこともあるかなと思って。それに……ラウンジもめちゃくちゃになっちゃうかもしれないし……えへへ」


 得意の攻撃スキルは使わなかった。

 そう言って笑うメイの余裕に、魔法学校の住人たちは唖然としてしまう。

 一方ラウンジをゴロゴロと派手目に転がって、ソファで大きく跳ね飛んだリリーネは、ゆっくりと立ち上がった。


「この私……敗け……というの……?」

「な、何を言ってるのか聞こえません」

「聞きに行きましょう!」


 自らの魔法を叩き返されて、遠く転がっていったリリーネ。

 まさかの『戻って来ないまま』セリフを言い始める展開に、メイたちの方が小走りで話を聞きに行く。

 定位置に戻って来てセリフを始める場合、その戻ってくる時間がシュールな感じになってしまうことから『その場で語り出す』ことになっているのだろう。

 ラウンジのプレイヤーたちもそろって、リリーネのもとに駆けていく。


「名門グレイシア家の子女にして、クインフォード魔法学校首席のこの私が、どこの者とも知らぬ、ただの一般生徒なんかに……っ! このままでは……終わりません!」


 杖を強く握りしめたリリーネはメイをにらむと、怒りのままラウンジを後にする。

 こうしてメイたちは、長きに渡ってラウンジに君臨していた難関クエストを見事突破してみせたのだった。


「みんな……すごかったー!」


 青バラお嬢のクエスト突破を目の当たりにして、うれしそうに表情をほころばせるメルーナ。

 その輝く目はもう止まらない。


「この魔法学校はー、夜も面白いんだ!」


 オレンジのマフラーを下げながら、三人のローブをつかむ。


「メイたちと一緒にー、夜の魔法学校を冒険したい!」

「夜の魔法学校!? すっごく楽しそう!」

「いいですね。ワクワクします」

「いいじゃない! そういうことなら夜の部……いきましょうか!」

「やったーっ!」


 歓喜の叫びをあげるメルーナ。

 最後には大きな盛り上がりを見せた、決闘クエストの攻略。

 こうしてメイたちは、夜の魔法学校という新たな冒険に踏み出すことになったのだった。



【名前:メイ】

【クラス:野生児】


 Lv:267

 HP:24180/24180

 MP:440/440


 腕力:1060(+43)

 耐久:705(+25)

 敏捷:500(+30)

 技量:435(+20)

 知力:10(+5)

 幸運:10


 武器:【蒼樹の白剣】攻撃43(【大蜥蜴の剣】)(【魔断の棍棒】)(【大地の石斧】)

 防具:【クインフォード魔法学校制服】耐久5 知力5(【王者のマント】)

   :【白花のブーツ】耐久20 敏捷10

 装飾:【猫耳・尻尾】敏捷20 技量20(【鹿角・尻尾】)(【狐耳・尻尾】)(【狼耳・尻尾】)

   :【召喚の指輪Ⅳ】


 スキル:【ソードバッシュ】【投石】【装備変更】【キャットパンチ】【フルスイングⅢ】

    :【ラビットジャンプ】【バンビステップ】【モンキークライム】【ゴリラアーム】【四足歩行】【裸足の女神】【野生回帰】

    :(【アクロバット】)(【突撃】)(【狐火】)(【幻影】)(【トカゲの尻尾切り】)(【魔弾リフレクト】)(【地列撃】)(【グレート・キャニオン】)

    :【アメンボステップ】【ドルフィンスイム】

    :【遠視】【聴覚向上】【嗅覚向上】【夜目】【雄たけび】

    :【自然の友達】【密林の巫女】【蓄食】【帰巣本能】【呼び寄せの号令】

    :【クマ召喚】【クジラ召喚】【ケツァール召喚】【白狼召喚】



【名前:聖城レン・ナイトメア】

【クラス:魔導師】


 Lv:100

 HP:2833/2833

 MP:1234/1234


 腕力:10(+8)

 耐久:10(+41)

 敏捷:140(+12)

 技量:124(+15)

 知力:736(+30)

 幸運:10(+1)


 武器:【銀閃の杖】攻撃8 知力15(【ワンド・オブ・ダークシャーマン】)(【魔剣の御柄】)

 防具:【夜空の冠】防御5 知力10

   :【クインフォード魔法学校制服】防御5 知力5

   :【夜空のブーツ】防御15 敏捷12

 装飾:【銀の腕】防御15 技量15(【宵闇の包帯】)

   :【真っ赤なリボン】防御1 幸運1


 スキル:【スタッフストライク】【吸魔】【浮遊】

    :【ファイアボルト】【フリーズボルト】【ファイアウォール】【ブリザード】

    :【フレアアロー】【フレアストライク】【フリーズストライク】【氷塊落とし】【フレアバースト】【フリーズブラスト】

    :【ダークフレア】【魔力蝶】

    :【魔眼開放】【連続魔法Ⅲ】【連続魔法Ⅳ】【連続魔法・中級】【魔力剣】(【魔力剣・改】)【魔砲術】【コンセントレイトⅠ】【誘導弾】【設置魔法】【魔法速度変化】

    :【クイックキャストⅠ】【クールタイム減少Ⅰ】【MP向上】



【名前:ツバメ】

【クラス:アサシン】


 Lv:88

 HP:4060/4060

 MP:172/172


 腕力:124(+50)(+45)

 耐久:10(+28)

 敏捷:623(+20)

 技量:123(+10)

 知力:10(+5)

 幸運:10


 武器:【グランブルー】攻撃50(【デッドライン】)

   :【ダインシュテル】攻撃45

 防具:【クインフォード魔法学校制服】防御5 知力5

   :【天駆のブーツ】防御18 敏捷20(【暗転のブーツ】)

 装飾:【シルクグローブ】防御5 技量10(【強奪のグローブ】)


 スキル:【加速】【跳躍】【隠密】(【スティール】)【壁走り】(【天井走り】)【残像】【罠解除】【地図の知識】(【暗転】)【リブースト】【疾風迅雷】【エアリアル】

    :【スラッシュ】【投擲】【連続投擲】【電光石火】【雷光閃火】【アサシンピアス】【紫電】

    :【ヴェノム・エンチャント】【四連剣舞】【剣舞の才】

    :【二刀流】【ダブルアタック】【サクリファイス】

    :【アクアエッジ】

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― 新着の感想 ―
[一言] 例のクイズ、天使から始めるとやり易いかも
[一言] お嬢様またでてきそうですね
[一言] もしここでクマさん召喚したらメイ達とお揃いの制服で登場するんだろうね コグマは手にミニワンド持って
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