216.ミイラで死霊術師です!
「そんな姿のままでは勝ち目などあるまい。今度こそ……貴様らは消えることになる」
そう言い残して立ち去るアサシン。
棺から出て来たのは、黒と紫の法衣をまとい、金の派手な冠を載せたミイラ。
やたらと装飾が目立つ金の錫杖を掲げると、地面の魔法陣から無数のミイラたちが現れた。
様々な武器を持ち、武装した姿には歴戦の風格がある。
「獣人化のうえに包囲までされてるって、なかなかの状態ねっ【ファイアウォール】!」
即座にレンが背後のミイラたちを足止めする。
「【バンビステップ】!」
メイは正面に向けて高速移動。
「【装備変更】からの【キャットパンチ】!」
飛び交う剣をかわしつつ、得意の【狐火】連打で次々にミイラたちを叩き壊していく。
「死霊術師には明らかな魔法防御シールド……まずはミイラからね。メイ! 一気にいきましょう!」
「りょうかいですっ! 【ラビットジャンプ】!」
敵のターゲットを目いっぱい集めたところで後方への跳躍。
「発動」
【設置魔法】が吹き上げた爆炎で、大量のミイラを消滅させた。
「……【霊鳥乱舞】」
対してマリーカは、その場に立ったまま。
炎の壁に阻まれて動けないミイラたちを狙って放つ【霊鳥】たち。
その勢いに、驚くレン。
「マシンガンみたいね……」
機銃掃射のような凄まじい連射が、あっという間にミイラたちを消し飛ばしていく。
その数も、一発ごとの威力もかなりのものだ。
「ツバメ! 次がくるぞ!」
アルトリッテが叫ぶ。
ミイラの数が残りわずかになったところで、死霊術師は新たに召喚を使用。
現れたのは、身体の各所に包帯を巻いた二頭の巨犬。
その口に装飾の派手な剣をくわえたまま、飛び掛かってくる。
「【加速】」
飛び掛かりは同時に斬撃となる。
これを加速でかわしたツバメを目がけて、巨犬は剣を振り降ろす。
「【リブースト】」
これも回り込むような軌道の動きで回避。
すると巨犬は、大きな回転撃へとつなげてきた。
回避を中心にした『速さ』勝負では、対処が難しい敵だ。しかし。
「【電光石火】!」
これをさらに高速移動スキルへとつなぐことでかわすツバメ。
見事な回避で巨犬を翻弄する。
こうして敵に隙を晒させたところで――。
「【ペガサス】! 【ハードコンタクト】!」
跳び込んできたアルトリッテのタックルが決まり、巨犬は転がった。
「まだまだ!」
アルトリッテは追撃に向かう。
「ここで必殺の――――聖騎士パンチだ!」
叩き込む単純な拳撃。さらに。
「アサシンパンチです」
一応続くツバメ。
そして二人同時に、その場から離脱。
「【フレアバースト】」
直後に通り過ぎていった爆炎が、一気に巨犬を焼き尽くした。
「いい追撃だな! 助かったぞ!」
「さすがです」
三人、見事な連携を決めてハイタッチ。
「よいしょっ」
一方もう一匹の巨犬は、メイに猛然と襲い掛かる。
くわえた剣による、飛び掛かりからの斬撃。
これを難なくかわしたメイは、細かく反撃を入れていく。
「【キャットパンチ】!」
はたから見れば、大型犬と小型犬のケンカにしか見えない光景。
「パンチ! もう一回パンチ! オマケにもう一回パンチだーっ!」
だが、圧倒しているのは小型犬だ。
見慣れないスタイルの攻撃をかわし、メイは半分ほどHPを削ったところで振り返る。
「マリーカちゃん! おねがいしますっ!」
「……この速度の敵相手に視線を外した」
普通に自分の方を見たまま巨犬の攻撃をかわすメイに、驚くマリーカ。
「【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」
大きな後方回転。
その着地際を狙いにきた巨犬が走り出したところで。
「……【霊鳥鳳火】」
霊鳥たちが集結して一羽の輝く巨鳥となり、空中で一回転して突撃。
まばゆいほどの光彩を放ち、包帯の巨犬を消滅させた。
「……これが『不動のマリーカ』ね」
【霊鳥鳳火】の余波に、思わずレンは息をのむ。
プレイヤーたちからは固定砲台と呼ばれる、多彩かつ重厚な攻撃魔法。
できるだけ動かずに敵を倒したい。
そんなビルドの最高峰と言える少女の攻撃は、すさまじいの一言。
「マリーカちゃんナイス―っ!」
満面の笑みで駆け寄ってきたメイとマリーカもハイタッチ。
「いい感じではないか!」
前衛が敵を引き付け、後衛がとどめを刺す。
動物化の呪いの状況で採らなくてはならない戦法を、見事なコンビネーションで再現するメイたち。
アルトリッテも、満足そうにうなずく。
ミイラと巨犬は、驚くべき速さで倒された。
だがそれを見て死霊術師は、金の錫杖を大きく掲げる。
広がる魔法の輝き。
血で描かれたかのような禍々しい魔法陣が広がり、そこから一体の化物が昇ってくる。
これまでとは大きく様相を変えた、おぞましいその化物は――。
「ドラゴンゾンビって、ところかしら」
むき出しの骨と、灰化した身体を持つ崩れかけの竜。
「ギュアアアアアア――――ッ!!」
レンの予想に応えるかのように、ドラゴンゾンビは翼を広げて咆哮をあげた。
ご感想いただきました!ありがとうございます!
そして聖騎士さんはその野生ぶりにあまり気づいていないという、おかしな状況でございますっ!
お読みいただきありがとうございました!
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