215.追いかけてアサシン
「いきなり道が二つに割れてるわね」
深部へと消えていったアサシンを追うメイたち。
後について行くと、そこにあったのは別れ道。
「さて、どうしたものだろうな」
「ええと、こっちはやめておいた方がいいかも」
メイは鼻を鳴らしながら言う。
「なぜだ?」
「ジャングルにいた時に、毒の花粉で動きを鈍くしてくるモンスターがいたんだけど、その花と同じ匂いがする」
「なるほど、罠ということか」
「……まず、匂いに気づく部分にツッコミを入れるべき」
「よし! ならば安全な方を進もうではないか!」
もっともなツッコミを入れるマリーカ。
しかし素直なアルトリッテは、「犬は鼻が利いて当然」と考え意気揚々と歩き出す。
進んだ先にあったのは、持ち上げて開けるタイプの扉。
その下部に、わずかな隙間ができている。
「……これは複数人で開けるドア。その隙に敵の攻撃がくることは必定」
見るからに重厚な扉は【腕力】の数値で開くもの。
その高さ次第で、開けるのにかかる時間が変わってくる。
そしてそんな隙を、敵が見逃すはずはない。
足元に生まれた魔法陣から、すぐさまミイラたちがわき出てくる。
「メイ、お願いできる?」
「おまかせくださいっ!」
さっそくメイが扉に手を伸ばす。
「せーの! それーっ!」
そして、扉が天井に突き刺さるほどの勢いでドアを上げてみせた。
「……とんでもない腕力」
「おおっ! これならミイラごとき余裕だな! 【ホーリーライト】!」
こうなってしまえば、ミイラはただの雑魚でしかない。
聖なる光で一網打尽。
「【連続魔法】【ファイアボルト】」
焼け残ったミイラたちも、レンがきっちり片付けた。しかし。
続く部屋の真ん中まで進んできたところで、全てのドアが閉じ出した。
「マズいぞ! 閉じ込められるっ!」
「おまかせくださいっ! 【装備変更】【バンビステップ】!」
すぐさま駆け出したメイは、頭装備を【猫耳】から【鹿角】に変更。
降りてくるドアの隙間に早すぎる動きで滑り込み、そのままドアを力ずくでせき止める。
「今だ!」
メイがドアを支えている間に、駆け込む四人。
「ふむ! 見事なスライディングだったな!」
「……動き出しからすべり込みまでの動きが自然すぎる」
本来であれば流れ込んでくる砂の中、扉を開く仕掛けを必死に探す必要のある部屋。
これを一瞬で抜けてしまった五人は、さらに前へ。
そして突然聞こえた音に、振り返る。
「上からだと!! 下がれレン、マリーカ!」
天井から落ちてきたのは、後衛狙いの大蛇。
「おまかせくださいっ! がおおおお――っ!」
おとずれた突然の危機、メイは【雄たけび】で大蛇の動きを止める。
「【ハードコンタクト】! ツバメ!」
とっさに動き出していたアルトリッテは、衝撃波をともなうタックルで大蛇を弾き飛ばした。
「【紫電】! メイさん!」
追撃はツバメ。
「【キャットパンチ】だー!」
最後にメイが連打を叩き込んで、打倒。
「むはははは! 我らにかかれば余裕だな!」
見事なコンビネーションを見せた三人は、ハイタッチを決める。
「……がおーって叫んで敵を硬直させた」
その意外過ぎる攻撃に、感嘆するマリーカ。
ピラミッドの仕掛けは、さらに発動を続ける。
部屋中に現れた魔法陣から現れたのは、大量の盾持ちミイラたち。
「武器が使えない状態でこれはやっかいね! メイ、道を塞いでもらえる!?」
「りょうかいですっ! 大きくなーれ!」
通路にまいた種が、一気に伸びる。
石畳の道を埋め尽くす低木でミイラたちの動きを止めつつ、メイたちは隣の部屋へ。
「……つ、ついに植物を操りだした」
いよいよ感嘆から驚愕へと表情を変えたマリーカ。
レンはこの隙に、魔法を発動する。
「【設置魔法】【フレアバースト】」
あとはミイラたちが低木の隙間を抜けてくるのを待つだけだ。
「発動!」
綺麗に一網打尽。
面倒な盾防御も、足元から噴き出す魔法を防ぐことはできない。
全てのミイラを、まとめて焼き尽くしてみせた。
「ふむ、頼もしいな! どうやら無事に罠を突破したようだ!」
「……まずメイの見たこともないスキルに驚くべき」
初見のメイの技に順応して、満足そうにうなずくアルトリッテに、さすがにマリーカがツッコミを入れる。
どう考えてもやっかいなはずの仕掛けを、五人はメイの野生の力を起点に乗り越えた。
「……もしかしてメイは、ジャングルを切り開こうとする悪い人間たちと戦っている?」
「え?」
「……現実世界でも」
「戦っておりませんっ!」
「……今日もアマゾンの木の上からログインして――」
「おりませーんっ!」
あまりに身軽で強靭。
そのうえ耳と鼻も利く。
野生的なメイの姿に、聞かずにはいられなかったマリーカ。
「そうだったのか……すまない。私たち人間が愚かなばかりに……」
そして、アルトリッテまで勘違いをし始めた。
「違います! わたしも同じ普通の女の子ですっ!」
「この三人すごいわね」
「見事にすれ違っています」
そんな三人に笑う、レンとツバメ。
「まさか、ここまでたどり着くとはな……」
そして楽しい空気の中、アサシンはものすごく神妙な面持ちをしていた。
「だが貴様らにはここで消えてもらう。アサシン教団を産み出した古き王を復活させ、この砂漠を闇と混沌の支配する暗殺者の国とするために……」
その手に黒い宝珠を掲げると、宝珠が禍々しく輝きだす。
「よみがえれ! 古き死霊術師よ!」
アサシンの言葉と同時に、足元の魔法陣から現れた棺が開いていく。
「我らは必ず『復活の儀式』を執り行う。平穏なルナイルなど今日で……終わりだ」
現れたのは、黒と紫の法衣をまとった一体のミイラ。
「そうはさせません!」
「その通りだ!」
メイとアルトリッテは思い出したかのように二人並んで、アサシンを指さした。
誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!
実はすでに聖剣の前段階を持っていた。灯台下暗しの流れ面白いですねぇ!
エクスカリバーは本当に色んな表記が見られますね。一番有名な剣かもしれません。
お読みいただきありがとうございました!
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