214.進む獣人5人組
「なかなか見事なコンビネーションだったな!」
武器の持てない獣人状態でも、見事に五人で青銅サソリを打倒したメイたち。
タヌキ姿のアルトリッテは満足そうに「うむ!」と、うなずいた。
「今度こそ、【エクスカリバー】をわが手に!」
そう言って強く拳を握る。
「……ピラミッドにはないと思う」
どう考えても関係のない場所であることに、静かにツッコミを入れるキツネ姿のマリーカ。
「えくすかりばー?」
犬メイが首と尻尾を傾げる。
「その通り! 私は伝説の聖剣【エクスカリバー】を探しているのだ!」
「……もう6年になる」
「ろ、ろくねんも」
運営の広報誌で存在が知られている伝説の剣は、まだ誰にも見つかっていない。
アルトリッテはその記事を見て、完全に一目ぼれしてしまっていた。
「円卓の地『ウェルグランド』はもう探し尽くしてしまったからな! それ以降は少しでも怪しい場所を見つける度に直行するようにしているのだ!」
「今使ってる剣も、聖剣って感じするけどね」
「【エクスブレード】も強力な聖剣だが、私は【エクスカリバー】を手にすることで伝説の聖騎士になる!」
「おおーっ!」
その輝く瞳に、歓声をあげるメイ。
「だとしても、さすがにピラミッド内にはなさそうだけど……」
「だがジッとしてなどいられぬ! 誰かに取られてしまうような気がしてならんからな! もはやそこになかったことを確認して安心する領域なのだ!」
「わかりますっ!」
メイは、自分がいない間に『村が襲われる』のではと考えていた日々を思い出して賛同する。
「学校行事の時も、空き時間を探索に使いました!」
「私もだ!」
「夜に始めて、気が付けば学校に行く時間なんてこともあります!」
「その通りだっ!」
「もちろん修学旅行にも持って行きましたっ!」
「それはちょっと」
「なんでー!?」
最後の最後で「マジか……」となって、メイは悲鳴を上げる。
「……修学旅行の記憶がごちゃごちゃになりそう」
「と、時々お寺でトカゲと戦う夢を見ることはあるかも……」
どうやらアルトリッテも、目的のために『星屑』に入り浸ってトップまで駆け上がってしまったタイプのようだ。
「だがマリーカも四六時中いるぞ。現実と区別がつかなくなってるのではないか?」
「……否めない」
一方その身体の大きさと、運動神経の良さから様々な運動部顧問から声をかけられたマリーカ。
答えは全て「……戦ってるので運動は十分」という形だった。
なかなかのやり込み組だ。
「……実際ずっと、装備品の組み合わせやステータスの伸ばし方、取りたいスキルのことばかり考えていた」
「やっぱりみんな、考えることは似てるわねぇ」
「本当ですね」
アルトリッテやマリーカの話に笑いながら歩を進めていると、犬メイの動きがぴたりと止まった。
「どうした?」
「この先の部屋に二人、アサシンがいるよ」
メイの言葉にそっと石積みの道を進めていくと、続く部屋に二人のアサシンがいた。
「……どうして分かったの?」
異常にいち早く気づいたメイに、マリーカが問いかける。
「話し声が聞こえたから」
「……?」
ここからでもギリギリ聞こえるかどうかくらいの声。
さすがに聞きつけるのが早すぎることに、マリーカは不思議そうに目をぱちぱちさせる。
「チッ、もう追ってきたか」
「呪いを受けてまで追ってくるとはな、やっかいな刺客たちだ」
「だがここから先は我らが領域。ついてくることはできまい」
「……どういうことだ?」
ここまで話の流れを、あまり把握せずにきたアルトリッテが問いかける。
「ええと、アサシン教団はルナイルにいた古い悪王を甦らせようと動いてるみたいなのよ。それがこのピラミッドに眠ってるって感じかしら」
「……悪い王様をよみがえらせて、国を乗っ取ろうというのか?」
「そんなところですね」
「む! そのようなこと、この聖騎士アルトリッテが許さぬぞ!」
アサシンたちを指さし、宣言するタヌキ姿のアルトリッテ。
「……ものすごく迫力がない」
「言うんじゃない!」
「でも、すごく可愛いです」
「……それには同意」
「この普通の女の子、メイも許しません!」
犬姿でアルトリッテに続くメイを見て、さらにうれしそうにほほ笑むツバメ。
「我らの悲願は誰にも邪魔させぬ。果たして、貴様らにたどり着けるかな?」
そう言い残して、アサシンたちは石扉の向こうへと消えていった。
扉には、封印が施されている。
「カギが使えそうね」
「でも、カギ穴が二つあります」
レンは黄金の兜と引き換えにもらったカギを取り出すが、必要なのは二つ。
「ピラミッド内を探せということでしょうか」
「……おそらくこれが使える」
そう言ってマリーカが取り出したのは、見た目のよく似たカギ。
二つを使用すると、重い石扉がゆっくりと開き出した。
「追いかけましょう!」
「もちろんだ!」
先頭を駆けるメイとアルトリッテ。
こうして五人は、アサシン教団の後を追うのだった。
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