21.子グマ防衛戦です!
助けた子グマは、メイのヒザより少し背が高い程度。
そんな小さなクマを抱きしめるメイと、頭を撫でるレン。
「この子、どうすればいいのかしら」
「おうちに連れて行けばいいのかな?」
「その可能性が高そうね。まあ、そうなると当然……」
ガサガサと聞こえて来る足音。
それは、プレーヤーのものではなかった。
「邪魔者が出て来るわよね」
現れたのは、10人ほどのハンターNPC。
あっという間に、メイたちを取り囲む。
「そいつは金になるんだ。悪いが俺たちに……寄こしてもらおうかあっ!」
途端に怯えだす子グマに、HPゲージが現れた。
「防衛戦ってことね。メイ、そのままその子をお願い!」
「まかせて! 【バンビステップ】!」
さっそく飛び掛かってきたハンターを、メイは子グマを抱えたまま大きなステップでかわす。
「【モンキークライム】!」
そのまま樹上へ蹴り上がると、もうハンターたちはついて来られない。
攻撃は弓と魔法に変わる。
「【ラビットジャンプ】!」
しかしこれも、樹上を自在に跳び回るメイには当たらない。
「メイ、攻撃は?」
「できないよー!」
「なるほど。あの子を置いて戦えば的になるし、抱えて守るのなら攻撃はできなくなるって仕様なのね」
状況の把握を終えたレンは、攻撃を開始する。
「【連続魔法】【ファイアボルト】!」
一撃で3人のハンターを倒す。
その隙に斬り掛かって来たハンターの攻撃をかわし、再び杖を掲げる。
「【連続魔法】【ファイアボルト】!」
これで残りは4人。
ここでたたみ掛けようと、レンが【フレアアロー】を放とうとしたところで――。
「増援を頼む!」
リーダーらしき男が魔法を打ち上げた。
ピンク色の煙が空中で弾けると、新たに8人のハンターがやって来る。
「ああこれ、リーダー以外はいくらでも出て来るやつっぽい」
これまでの経験から、レンはこのクエストの方向性を予想する。
「それなら一気に勝負をつけるわ【フレアストライク】!」
放たれた赤熱の炎弾が、リーダーに直撃する。
ごうごうと上がる炎、しかしそのHPゲージは薄く削れたのみ。
「リーダーは攻撃をしないけど、遠距離系の攻撃には強い耐性ありって感じかしら。これじゃ【魔眼開放】でも大して変わらないわね……っ」
とはいえ、ここで武器による攻撃を狙うならメイが動くしかない。
「そうなったら、あの子に隙ができちゃうし……」
ハンターたちは樹上への攻撃も続けているが、メイは子グマを抱きしめたままでも完璧な回避を繰り返す。
万が一にも捕まらないと確信できるほど、軽快な動きだ。
「子グマは絶対に安全だけど、だからこそ終わらないやつ……っ」
メイといる限り、あのクマがダメージを受けることはない。
ただ。膠着している状況を変えるなら、メイに一度子グマを手放してもらうのが一番だ。
「でも……たとえゲームでも子グマが矢で撃たれるところなんて見たくないっ」
仮に数発はもちこたえられるのだとしても、嫌なものは嫌。
だがそうなれば、魔法の効きにくいリーダーをどうにかしなくてはならない。
「ああもう、面倒なクエストになっちゃったわね……っ! 【連続魔法】【ファイアボルト】!」
三連発の炎弾が、増援のハンターを打ち倒す。
「【ファイアウォール】!」
接近を防ぐために張った炎の壁にぶつかり、弓の男が倒れた。
「増援を頼む!」
しかしさらに現れた4人の増援。
せめてまともな物理攻撃があればと、レンは唇をかむ。すると。
「――――おねがいしますっ!」
突然メイが、明後日の方を見てそう言った。
「なに? いま何をお願いされたの?」
ここにはメイとレンの二人だけ。
意図が分からず困るレン。
すると、次の瞬間。
「【アサシンピアス】」
突然、リーダーの男が倒れた。
「なに? どういうこと!?」
リーダーのゲージが一発で弾け飛び、消える。
レンが慌てて辺りを見回すと、そこには短剣を手にした小柄な少女が立っていた。
「これで増援は来ないはずです。今は残りのハンターを」
少女は淡々とした声でそう言うと、駆け出した。
「【電光石火】」
一気に距離を詰め、ハンターを斬り抜ける。
状況は分からないが、残りのハンターを倒すだけというのであれば問題ない。
「【連続魔法】【ファイアボルト!】」
レンは一気に3人のハンターを打ち倒す。
その間に少女は、2人斬り伏せていた。
これで残りは6人。
「【紫電】」
さらに少女が放った雷光が、ハンターたちの間を駆け抜けていく。
硬直を奪ったところに続ける斬撃で、残るハンターは3人。
「とどめよ! 【フレアバースト】!」
レンは最後のハンターたちを、大技でまとめて消し飛ばした。
「撤退だ! 撤退だぁぁぁぁ!!」
すると慌てて起き上がったリーダーのあげた声に、ハンターたちは散り散りになって逃げ去って行った。
残されたのは子グマを抱えるメイと、状況がつかめずにいるレン。
そして突然現れた、メイよりも一回り小さな少女だけ。
「ありがとうございましたっ!」
メイが元気よく頭を下がる。すると少女は――。
「私が……見えるのですか?」
幽霊みたいなことを言い出した。
誤字報告ありがとうございます!
自分では意外と気づけず、助けていただいております!
お読みいただきありがとうございました。
少しでも「いいね」と思っていただけましたら。
【ブックマーク】・【ポイント】にて、応援よろしくお願いいたします!




