205.ピラミッドと言えばミイラです!
開いた宝箱に転送させられたのは、石柱の並ぶどこか不気味な空間。
その中心に燃え上がった炎から、豪華な装飾の施された棺が現れた。
「まさかいきなりボス戦になるなんて、思わなかったわね」
「どんなボスが出てくるのかなぁっ」
「棺から出てくるとなればやはり……」
恐ろしい演出とは反対に、期待の視線を向ける三人。
棺のフタが倒れ、中から出てきたのは神官姿のミイラだった。
その手には、装飾の施された黒銀の輪をつけた杖。
目元に、ぼんやりと光が灯る。
すると付近一帯に、足元を埋め尽くす多量の魔法陣が広がった。
そしてその中から、輝きを強めた魔法陣が――。
「光を強めた魔法陣は避けてっ!」
レンがそう叫び、三人はすぐさま足元を確認。
輝いていた魔法陣が、一斉に魔力光を噴き上げた。
「す、すごーい……」
数十本の光の柱が突然突き上がる光景に、メイは感嘆する。
「それなら一気に【バンビステップ】!」
「行きましょう【加速】!」
即座に駆け出すメイとツバメ。
敵までの距離を早い動きで詰めて行く。
すると神官ミイラは再度、杖を掲げる。
輝き出す足元の魔法陣。
今度は神官ミイラを囲んでいる位置の魔法陣たちが、一斉に輝き出した。
「うわっと! ツバメちゃん!」
「ッ!! メイさん!」
思わず二人、抱き合うようにして急停止。
目の前を光の柱が突き上がっていく。
そして光が消えると、今度はメイとツバメを追うような軌道で魔法陣が輝き出す。
「【バンビステップ】!」
「【加速】!」
次々に魔力光を突き上げて追ってくる、魔法陣の輝き。
メイとツバメはこれを高速移動スキルで回避し続ける。
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
もちろんこの隙をレンは逃さない。
ある程度の距離を取ったうえで、誘導をかけた魔法を放つ。
炸裂した炎が、神官ミイラを焼く。
「……魔法防御は得意分野みたいね」
しかしHPゲージの減少は5パーセントに届かないほど。
お返しはもちろん、全体攻撃だ。
「ッ!!」
ランダムに輝く魔法陣が一斉に魔力光を噴き上げる。
「あっぶない!」
移動スキルに乏しいレンは、付近の安全地帯に大慌てで飛び込みセーフ。
一方余裕の回避を見せていたメイは、光の柱が引くのと同時に走り出す。
「【バンビステップ】!」
次々に光り出す魔法陣を、早く細かな動きで回避。
その距離を一気に詰めて行く。
そして目前に噴き出した魔力光をくるっと一回転してかわし、踏み込んだところで――。
「【フルスイング】!」
振り下ろす強烈な一撃。
しかし神官ミイラは【ブースト】で後方へ回避。
「逃がしません【電光石火】!」
そこへ飛び込んで来たのはツバメ。
【ブースト】によって逃げた先に、斬撃を叩き込む。
「なっ!?」
なんと神官ミイラは、V字を描くような軌道で二段階の高速移動。
二段移動スキル【リブースト】で、見事にツバメの追撃までかわしてみせた。
そしてそのまま手にした輝く杖を、大きく薙ぎ払う。
「くっ!」
これをバックステップでかわしにかかるも、魔力光による延伸部分が身体をかすめ、HPが削られた。
神官ミイラは再び、敵を追う魔力の柱で攻勢に出る。
「そういうことなら……っ」
走り出したツバメは、メイの動きをマネして距離を詰める。
魔力光の輝きをかわし、神官ミイラへの『ライン』が見えたところで――。
「【加速】!」
同時に放つ斬撃は、【ブースト】にかわされる。
「【電光石火】】!」
ここでツバメは一歩踏み込み、高速斬撃で追撃に向かう。
だがこれも神官ミイラは【リブースト】で回避。
「【紫電】!」
その瞬間を狙って放つ範囲攻撃。
付近一帯に駆ける稲光が敵を捉え、わずかに隙を生み出す。
「【アクアエッジ】! 【四連剣舞】!」
そして続く水の刃で、神官ミイラを切り裂いた。
「ツバメちゃんすっごい!」
「次はメイさん、お願いします!」
「おまかせくださいっ!」
二人、一度見合って走り出す。
真正面から迫る魔法陣の輝き、吹き上がる魔力光を同時に回避する。
「【加速】」
一気に距離を詰めて放つ攻撃。
これは予想通り【ブースト】に回避される。
「【電光石火】」
後を追う早い斬撃。
これも神官ミイラが【リブースト】でかわしたところで――。
「メイさんっ!」
【バンビステップ】で一気にツバメの背後から追ってきたメイがタイミングを合わせる。
「がおおおお――ッ!!」
【雄たけび】が神官ミイラの動きを再び止める。
「ツバメちゃん!」
再び加速でメイを追い抜き、ツバメは【グランブルー】を手に敵の懐へ。
「【アサシンピアス】」
見事な連携で刺突の一撃を決めてみせた。
「【跳躍】」
そして後方へ跳躍。
「【フレアストライク】!」
そこへ飛び込んで来たのは、炎の砲弾。
「ま、おまけ程度だけど」
燃え盛る炎を前に、そう言って笑ってみせるレン。
「これならいけそうね」
「ツバメちゃん、レンちゃんナイスーっ!」
全員での連携に、思わず跳ねて喜ぶメイ。
ツバメとレンも、メイに武器を振って応える。
地面を転がった神官ミイラは、その杖を高く掲げた。
強烈な輝きを見せる、黒銀の錫杖。
見れば残りHPは6割ほど。
包帯の下で光る黄色の輝きが、赤に変わる。
「さあ、ここからが本番ね。一気に勝負をつけてやりましょう!」
「はいっ!」
「やりましょう!」
ご感想いただきました! ありがとうございます!
宝箱たちはまた静かに元の状態に戻っていきます。ちょっとシュールな絵面ですねぇ。
慌てて宝箱を開けて喰われる。まさに身から砂の状況でございます!
お読みいただきありがとうございました。
少しでも「いいね」と思っていただけましたら。
【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!




