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179.歴戦の暗殺者

 見事な攻勢でリザードマンたちを片付けたツバメ。

 その前に現れたのは、目元に傷のある歴戦の戦士だ。

 黒衣をまとい、手にはバックラーと短めのソードという装備。


「同業と言ったところでしょうか」


 リザードアサシンを前に、ツバメも静かに武器を構える。


「メイさんたちと合流する前に敗れるわけにはいきません……勝負です」


 速く静かなダッシュで、リザードアサシンは距離を詰めて来る。

 逆手で持ったショートソードの振り上げを、ツバメはバックステップでかわす。

 続く踏み込みからの横なぎも、さらに足を引くことで回避。

 閃くスキルエフェクト。

 放たれるは、シンプルな【十文字斬り】


「【加速】」


 敵のスキル攻撃を、いち早い移動で退避。


「【電光石火】!」


 そしてすぐさま高速の切り抜けで最接近を果たす。


「ッ!」


 輝くエフェクト。

 ツバメの攻撃はバックラーによる的確な防御に阻まれた。

 弾かれ、たたらを踏むツバメ。

 対するリザードアサシンも、防御スキルの使用によってわずかな硬直を見せた。


「そういうことなら……っ」


 ツバメはすぐさま追撃を仕掛ける。


「【四連剣舞】!」


 するとリザードアサシンも、再びエフェクトを輝かせた。


「ッ!!」


 なんと高速の四連撃は、全段バックラーで受け止められてしまった。


「ここにメイさんやレンさんがいてくれれば……っ」


 間違いなくこの隙を突ける。

 むしろ、そういう戦い方が想定された敵なのだろう。

 少なくとも、攻撃の軽いツバメが単体で戦うには相性最悪の相手と言って間違いない。


「……そういうことでしたら」


 一度距離を取ったツバメは、ここで【ダインシュテル】を【デッドライン】に持ち替える。

 それは採掘商人が作ってくれた、敵防御を打ち抜く金刃のダガー。


「【電光石火】!」


 駆け抜ける一撃は、やはりバックラーに弾かれる。しかし。


「ダメージ……入ってます」


 しっかり1割ほどHPゲージを減少させていた。

 するとリザードアサシンは後方へ跳躍。


「ッ!!」


 空中からの【投擲】で、短剣を四つ放ってきた。

 これをしっかり、目視で回避するツバメ。

 しかし最後の一つが地面に刺さると――。


「なっ!?」


 爆発。ツバメは弾かれ、こちらもHPゲージを1割強ほど削られた。

 攻勢は続く。

 リザードアサシンがツバメの足元を指差すと、地面から五本の氷刃が突き上がる。


「【跳躍】!」


 これを高いジャンプでかわす。

 この隙にリザードアサシンは突撃してくる。

 対応しようとツバメが、剣を構えたところで――。


「足が……動きません……っ!」


 見ればツバメの足元の『影』に、短剣が突き刺さっていた。

 動かない足は、敵をその場から動けなくするスキル【影縫い】によるものだ。

 輝くスキルエフェクト。

 リザードアサシンは再び【十文字斬り】を放つ。


「く、うっ!!」


 吹き飛ばされたツバメは、そのHPを一撃で半分ほどまで減らされた。

 派手さはないが、的確な強さを見せるリザードアサシン。

 歴戦を思わせる見た目通りの渋い攻撃で、戦いの主導権を握る。

 追撃は短剣による連撃。

 これをかわすと、リザードアサシンは再び地面を指さした。


「【加速】!」


 突き上がる氷刃を後方への高速移動でかわす。

 するとリザードアサシンは跳躍。

 直後、【連続投擲】による短剣が迫りくる。

 爆発に気をつけながら、これを回避したところで――。


「【連続投擲】からも【影縫い】が可能なのですか……っ」


 またも止まる足。

 当然敵は、この隙を逃さない。

 駆け込んでくるリザードアサシンが、ライトエフェクトを輝かせる。

 状況はまさに、絶体絶命。


「ですが。このスキルの『停止』は足元のみ……手は動きますっ! 【アクアエッジ】【四連剣舞】!」


 放たれる四本の水刃は、範囲を持つ攻撃。

 まさに攻撃モーションに入るところを狙われたリザードアサシンは、水刃に斬られて地を転がる。

【影縫い】の効果が切れたツバメは【加速】で後を追い、追撃の【アクアエッジ】を放つ。

 こうして敵のHPも、残り半分を切った。

 一進一退の戦い。

 しかしここで、リザードアサシンの目つきが変わる。

 突撃からの早い攻撃。

 その最後に【十文字斬り】へとつなぎ、さらに踏み込みから【十文字斬り】をつなげる。


「同一スキルの連携!? 【加速】っ!」


 決死の回避。

 同一スキルを【クールタイム短縮】でつなげるというシンプル過ぎる攻撃が、腕をかすめていく。

 リザードアサシンが指を差す。

 今度は地面から吹き上がる炎が、ツバメを狙い撃つ。


「【加速】……【跳躍】ッ!」


 噴炎の連発。

 一方的な炎術攻勢で、洞穴内に次々と紅蓮の炎柱を突き上げる。

 これをツバメは、ひたすら移動スキルで回避する。


「近づけません……っ!」


 大きく距離を取ると、リザードアサシンは指で六芒星を描いた。


「距離を取ったのは、失敗ですか……っ」


 足もとに生まれた炎の波が、一気に押し寄せて来る。

 地面を焼き尽くす豪炎に、逃げ場なし。


「ですがっ! 【壁走り】!」


 ツバメは走り出す。

 そのまま壁を蹴り、天井を駆け、反時計回りで地へ戻る。

 こうして見事に炎の波を乗り越えたところで、リザードアサシンは再び炎の波を放った。


「なっ!? それなら……足を止めなければいいだけです……っ!」


 ツバメはなんと、そのままもう一度壁を蹴り上がっていく。

 そのまま渦を巻くようにもう半回転。


「こんな戦い方……できるものなのですか……っ」


 天井を駆け、リザードアサシンの真上まで来たところで【壁張り付き】を発動。

 急停止。そして即座にスキル解除。

 始まるのは、これまでの天井走りが嘘のような自由落下。

 ただ真っすぐに、リザードアサシンのもとへ。


「この落下攻撃、好きかもしれません……【アサシンピアス】!」


 バックラーによるガードも、【デッドライン】はそれを許さない。

 駆け抜けるライトエフェクト。

 落下【アサシンピアス】は見事、HPゲージを削り切った。

 粒子となって消えていく、黒衣の歴戦リザードマン。


「本来私では勝てない相手でした。【金星鉱】を見つけてくれたメイさん、剣を作ってくれた採掘商人さんに感謝です」


 そうつぶやいて、息をつく。


「……以前はこんな風に、淡々としていましたね」


 今となってはやはり、勝利の時に駆け付けてくるメイがいないのは寂しい。

 レンの「やるじゃない」みたいな表情も。


「早く戻って、一緒にダンジョンを進みましょう」


 歩き出すツバメ。

 リザードアサシンの倒れていたところには、一枚の地図が落ちていた。


「どこの地図でしょう……」


 階数の表示はない。

 ただそこには、大型転移結晶の位置だけが記されている。

 一応インベントリにしまい、あらためて転移結晶の前へ。


「……皆のもとに、たどり着きますように」


 触れた結晶が緑色に輝き、ツバメはその姿を消した。

お読みいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 同一で繋げられるなら加速の後に加速で隠しが発動し縮地を覚えるとかあったら面白そうだね 立体起動の縮地で空間把握であらゆる角度からのアサシネイト
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