159.ディナータイムです!
「おーいしぃぃぃぃー!」
大きなテーブルに並んだ、たくさんの料理。
さつきはさっそく、手近にあったパスタに夢中になっていた。
今夜の星城家は、とにかく賑やかだ。
「夕食作るの、香菜も手伝ったんだよ」
そんなメイの右隣に陣取ったのは、星城香菜。
ツインテールを揺らす中学生で、レンの妹。
8年目の『星屑』に現れた超新星『メイ』に、興味津々だ。
「まともな友達ってだけでも奇跡なのに、それがあのメイちゃんだなんて本当にびっくりだよ。可憐姉がいつもお世話になってますっ」
「いえいえー。お世話になってるのはわたしの方なんだよー。レンちゃんすっごく頼りになるんだから」
「ええー……可憐姉がぁ……?」
ここ数年ずっと正々堂々ヤバいヤツだった姉に、懐疑の目を向ける香菜。
「まあ、正直メイが飛び抜けてるからあんまり実感はないんだけどね」
今も驚かされてばっかりだし、とレンは笑う。
「香菜はずいぶんとメイちゃんを気に入ってるのねぇ」
レンの母は、いつになくべったりな香菜を興味深く見つめる。
「メイちゃんすごいんだから! すっごく強いんだって!」
「強い……?」
「あはは、ジャングルに七年ほどいたせいでしょうか……」
「まあ、ジャングルに七年も? 大変ねぇ」
「そうなんですよぉ。村を襲う大トカゲとの闘いの日々でした」
「大トカゲ……えらいわねぇ」
「は、話がかみ合ってます……」
全く疑問を挟まないレンの母に、驚くツバメ。
「……それでよく私のフォローをしてくれてるのが、このツバメね」
「あらそうなのぉ、可憐がいつもお世話になっております」
「い、いえ、こちらこそレン……可憐さんにはよくしていただいております」
少し恥ずかしそうにしながらも、ツバメは丁寧に頭を下げる。
ただただ楽しそうに食べるさつきに比べて、ツバメは少し上品な感じだ。
そんなツバメも実は、メイ狙いの運営写真にちょくちょく写っていたりする。
だがその全てが見切れていたりボケていたりのため、変わらず知名度と存在感は薄いままだった。
「ねえ可憐姉、メイちゃんって一緒に冒険しててどんな感じなの?」
「……ええと」
『半端ない野生児』と応えかけて、言葉を飲むレン。
「常識じゃ計れないわね」
「そうなんだぁ」
「ツバメちゃんから見たメイちゃんはどんな感じ?」
「……ええと」
『野生の王者』と応えかけて、言葉を飲み込むツバメ。
「圧倒されるばかりです」
「ふ、二人とも何かを言いかけてやめたよねっ!?」
さつき、即座にそれに気づく。
「メイ、ここでは【聴覚向上】は使わなくていいのよ」
「使っていません! 二人とも思いっきり何かを飲み込んでたよっ!」
「やっぱりメイちゃんはすごいんだね!」
そんな中、香菜は普段のメイに負けないくらい目を輝かせる。
「いえいえ。レンちゃんとツバメちゃんが助けてくれるからですっ」
さつきも楽しそうに応える。
今夜、星城家の夕食はとにかく賑やかで、終始笑いに包まれていた。
◆
「うう、もう食べられないよ」
「いくらなんでも食べ過ぎよ。ほら、ベッド使っていいから横になって」
「りょうがいでず」
言われるまま仰向けになったさつきは、もうピクリとも動かない。
「今のメイになら、そこらのモンスターでも勝てるわね」
レンは笑いながら、さつきのお腹を指で突く。
「あううー、やめでえー」
するとベッドに仰向けになったまま、さつきがうなった。
これにはツバメも笑ってしまう。
「まだまだ夜はこれからだし、先にお風呂に入っちゃいましょうか」
「お腹いっぱいで動けまぜん……」
「メイは回復してからね」
「さすがにメイさんも、満腹状態では動けませんね」
「お恥ずかしい限りですぅ……」
「お風呂に入った後はどうしようかしら。もちろんそのまま何もせずゆっくりでもいいんだけど……」
そう言いながらレンは、ツバメに視線を向ける。
「行きましょう」
ツバメ、即答。
「メイは――」
「行ぎましょう」
さつき、苦しそうにしながらも即答。
「分かったわ。それじゃお風呂からあがって一休みしたら、ダンジョン攻略第二陣……いってみましょうか」
「はい!」
いよいよ合宿感が出てきて、元気よく返事をするツバメ。
「お、おおー」
さつきも勢いよく起き上がろうとするも、満腹により断念。
右手をそーっと上げながら応えたのだった。
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