1466.黒い霧
「それでは、よろしくお願いいたしますっ!」
「まっかせといて! さらにパワーアップしたローチェちゃんの力を、見せてあげちゃうんだからっ!」
「行ってくるのですな!」
「また後で会おうね」
サツキタウンで再会したトップ三人に、【重鎮石】の防衛を頼んだメイたち。
シオールの素敵なお姉さんぶりに、感動しながら見送る。
「それじゃあ行きましょうか」
【不腐鉄】のコーティング作業を邪魔する魔物を打倒するため、こちらも世界樹の西部にある池へと向かう。
見れば澄んだ水がわき出すその池の木陰に、隠れるハウジング職人たちの姿あり。
身を隠しながら、何やら様子をうかがっている。
「大丈夫ですか?」
小走りで駆けつけたマーちゃんが問いかけると、ハウジング勢が応える。
「あいつがうろついてて、【不腐鉄】を持ち出せずにいるんだ……!」
池の辺りを漂っているのは、黒いガス状の何か。
「もしかして、あの黒い霧みたいなのが魔物なの?」
「ゴーストはいましたが、ガス状の敵は初めて見ましたね」
「い、異世界ならでは敵なのでしょうか……」
まるでこの場所を見回っているかのような動きを見せる、霧状の魔物。
その大きさは、縦横共に2メートルに迫るくらいか。
「こっちに気づくと、容赦なく攻撃してくるんだ」
どうやら、打倒せずに進むことはできなさそうだ。
「そういうことなら、おまかせくださいっ!」
新たな敵の登場に、尻尾をブンブン振って気合を入れるメイ。
「そうね、私たちで片づけましょう」
「はいっ」
「は、はひっ」
四人はうなずき合って、木陰を出る。
そのまま並んで池の方へと向かうとすぐに、敵の黒霧がこちらに気づいた。
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
即座に先手を打つレン。
黒霧はこれを引き付けたところでかわし、戦闘態勢に入る。
「「「「っ!?」」」」
距離は開いたまま。
メイを囲むようにして生まれた、無数の粒子の輝き。
「【ラビットジャンプ】!」
そこから抜け出すようにして、メイが跳び上がった次の瞬間。
粒子が一瞬で爆炎に変わった。
驚きを見せるメイたちに、黒霧は攻撃を続ける。
再び集まる粒子が、今度はレンを狙う。
「【低空高速飛行】っ!」
すぐさま速い飛行で、粒子の範囲から逃げ出す。
すると渦巻く白嵐が荒ぶり、ギリギリで範囲内に残ったレンのカカトを凍り付けにした。
「【疾風迅雷】【加速】【加速】!」
この隙を突いて、緩い弧を描く形で接近するのはツバメ。
「【電光石火】!」
放つ高速移動斬りは見事に決まり、短剣が黒霧を斬り裂いた。しかし。
「物理ダメージは通らないようです……っ!」
一度は真っ二つに割れた黒霧は、すぐに元の形状を取り戻してダメージも無し。
「【フリーズブラスト】!」
レンは範囲攻撃でのダメージを狙うが、黒霧はこれも速い移動で回避。
動きも良く、攻撃も多彩。
どうやら、なかなかの強敵のようだ。
「「「っ!?」」」
ここで黒霧は、粒子輝く範囲を三つ同時に展開。
「【加速】!」
「【低空高速飛行】!」
「【バンビステップ】!」
その範囲内にいた三人は、慌てて回避行動を取る。
直後、三つの炎が一斉に炸裂した。
黒霧はここで、標的をまもりに変える。
「粒子が、飛んで来ます……っ!」
今度はキラキラと輝く微細な鋭石となった粒子が、ショットガンのように飛来。
「【地壁の盾】!」
無数の切片が、まもりの盾を斬り裂いていく。
その勢いはすさまじく、一つ一つの火力の高さを物語っている。
「【投擲】!」
攻撃を続けようとした黒霧にツバメが投じたのは、【炎ブレイド】
これを嫌がった黒霧は鋭石粒子による攻撃を止め、退避を選択。
同時に、動き出している四人の位置取りを確認した。そして。
「「「「っ!!」」」」
辺り一面、四人全員を取り囲む粒子の輝き。
「派手な攻撃ね……っ!」
これまでより少し時間をかけて、粉塵爆発にも似た大きな炸裂を巻き起こした。
四人はとっさの防御で、この広範囲同時攻撃に対応。
大きくたたらを踏んだメイたち。
ここで前に出たのは、【天雲の盾】によって見事な防御を決めていたまもりだ。
再び放たれる範囲氷結攻撃は、まもりの足で抜け出すには難しく、凍結に加えてダメージを受けることが確定的だ。
「【水球の守り】っ!」
しかしその身体を包むように生まれた球状のヴェールが、まもりを猛烈な白嵐から守り抜く。
「まもりならではの対応ね……!」
敵の早い範囲粒子攻撃はやっかいで、なかなか決め手がつかめない。
だが【水球の守り】による完璧な防御が決まったことで、黒霧の状況『把握』がわずかに遅れた。
「【裸足の女神】っ!」
その瞬間を突いて飛び出したのはメイ。
まもりへの連続攻撃で生まれた隙を、見事に突いた形だ。
黒霧は慌てて、土星の輪のような形状に集めた粒子を展開。
広がった緑の粒子は、『猛毒』を与える状態異常攻撃だ。
「【アクロバット】!」
しかしメイはこれを、ギリギリの急ブレーキから回転跳躍で回避。
広がっていく輪状の毒粒子がちょうど消えたところに、手にした剣を振り下ろす。
「【フルスイング】!」
叩きつける猛烈な一撃は、凄まじいエフェクトと共に黒霧を両断し、その余波が霧を払う。
だがやはりダメージにはならず、再びその姿を取り戻す。
「【フルスイング】!」
しかしメイも、高い火力の基礎級スキルを連続で放てるという強さがある。
豪快な振り払いが再び、黒霧を消し飛ばした。
そしてまた、元に戻ったところを――。
「【フルスイング】だーっ!」
容赦なくまた吹き飛ばす。
「……永遠に倒せませんが、永遠に足止めできます」
「本当にメイは、常識を超えてくるわねぇ……」
「は、はひっ」
誰も予測しないであろうその対処法に唖然とする三人と、マーちゃんたちハウジング組。
「……いいわ」
レンは今も続くメイの足止めを見て、つぶやいた。
粒子が飛んで来たり広がったりという、めずらしい戦い方をする魔物。
物理攻撃はもちろん単純な魔法攻撃でも、なかなかダメージを与えられそうにない。
「もう少し練習してからにしたかったけど……いきましょう」
レンがそう告げると、ずっと肩に留まっていた使い魔のフクロウが応えるように翼を広げた。
「目標はあの黒い霧。行くわよ――――パラス・アテネ!」
レンの言葉に肩のパラス・アテネが羽ばたき滞空を開始。
魔力の秘められた目を、キラリと輝かせた。
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