1438.打倒クイーン!
岩壁に走ったヒビから、こぼれ出した溶岩。
「くるっ!」
クイーンが羽を広げれば、それは【羽音波】による硬直攻撃の合図。
「【超高速魔法】【フリーズボルト】!」
何度でも同じ時間の硬直を奪うスキルはやっかいだが、事前モーションにいち早く気づいたメイの言葉に、即座に動くレン。
クイーンの身体にぶつかった氷弾が、【羽音波】を強制停止させた。
「【加速】【リブースト】【紫電】!」
先行したツバメが反撃の雷光を放つと、クイーンは慌てて【超硬化】を発動し駆ける電気に対応。
「続くぽよっ!」
「はいっ!」
ここに駆け込んで来たスライムと迷子が、左右からの攻撃を仕掛けに行く。
「【スリップフット】!」
「【飛び跳ね】ぽよっ!」
クイーンは毒液で迷子の足を止めるが、その時すでにスライムは目前。
ここで真ん中からも、マウント氏が剣を手に駆け込んでいく。
そのまま攻撃体勢に入ったところで、クイーンが初めて見る動き。
頭部にある触角をぶつけて鳴らし、奇妙な音を響かせた。
「「「っ!」」
危険を察知したのか、三人が同時に足を止める。
そして全員が、こちらに慌てて戻って来たかと思った次の瞬間。
「【ジェット・ナックル】!」
「っ!?」
迷子の攻撃が突然、まもりに向けられた。
蒸気を拭き上げながら迫る拳の一撃は、完全にまもりの虚を突いた。
それでも通常防御を決めたまもりの、恐ろしい対応能力。
しかしそこに、スライムが真横から迫り来る。
「【砲弾跳躍】ぽよっ!」
「きゃああああっ!?」
まさかの連携を盾で受けることには成功したものの、その威力を前に派手に転がるまもり。
メイたちの間に混乱が広がる。
「操られていたぽよっ!」
「まもりさん、申し訳ありませんっ!」
何が起きたのかを、いち早く伝えるスライム。
この隙を突き、クイーンは【爆裂毒弾】を発射する。
「「「うわああああああ――――っ!!」」」
炸裂した毒液が、掲示板組の一部を弾き飛ばした。
【クイーン・オーダー】は範囲内のプレイヤーを、まとめて『洗脳』という状態異常に陥らせ、味方を攻撃させるスキル。
このスキルの仕様が不明なため、さすがに困惑する一団。
クイーンは混乱の隙間を縫い、特攻を仕掛けにくる。
「【アイシクルエッジ】!」
「【百雷の矢】!」
「メイちゃんたちは、一度下がってくれ!」
掲示板組のあげる声に、レンはその意図を把握。
どんな形であれ一度はクイーンの味方になってしまうスキルなら、メイやツバメ、レンが『洗脳』された時点で全てが終わる可能性がある。
下がるメイたちに変わり、クイーンは豪快な羽ばたきで特攻。
「「「ぐああああ――っ!!」」」
急な毒攻撃で体勢を崩していた掲示板組に突撃し、再び数人をまとめて跳ね飛ばす。
転がればそこには、落ちてくる溶岩。
慌てて転がって逃げると――。
「【斬岩剣】!」
「くっ!」
倒れ込んでいる掲示板組戦士に、とどめを刺しにきたのは『洗脳』下のマウント氏。
「【フレイムボルト】!」
マウント氏を止めるため、放たれた炎弾が弾ける。
すると剣撃が放たれる直前に、『洗脳』が解除された。
「……おい! これどんな形でも攻撃を受ければ、正気を取り戻すみたいだ!」
目覚めたマウント氏は即座に、【クイーンオーダー】の仕組みに気づいて周知。
ここぞとばかりにマウント氏に全力をぶつけてやろうとしていた、掲示板組の動きが止まる。
「「「っ!!」」」
その瞬間、再び聞こえた触手のぶつかる音。
数人の掲示板組が、同時に【クイーンオーダー】によって洗脳されてしまった。
「即座に攻撃に入れ!」
マウント氏が早々にシステムを公表したことで、近くにいた者を通常攻撃で目覚めさせる戦法が広まり、危機を抑える。
仮に解除に失敗しても、防御を取れば基本的には安全だ。
しかしそんな通常攻撃の隙間を、通然のようにすり抜けていく影があった。
【クイーンオーダー】はギリギリで、ツバメをその攻撃範囲に収めていたようだ。
「【加速】【リブースト】」
これに気づいたのはまもり。
ツバメは掲示板組を置き去りに、レンの方に向かって進んでいる。
慌てて両者の間に入り、盾を構える。
すると『洗脳』ツバメは、その狙いをまもりに変えてきた。
「【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】」
まるで五芒星を描いているかのような、鋭角なターン。
「【分身】【スライディング】」
生み出された分身に気を取られた瞬間、その足元を滑っていく。
「これは……っ!」
さらに高速移動時に姿をかすませる【暗転のブーツ】に装備を変えていたツバメは、さらに【疾風迅雷】による【加速】を連発。
分身が混ざってしまえば、もはや本物の判別など不可能だ。
「っ!!」
まもりの背中に走る寒気。
見ればツバメの武器が、盾を通す【境界死線】に変わっていた。
「ツバメさん、ごめんなさいっ! 【大回転撃】!」
まもりは二枚の盾を振り回して範囲攻撃を放つことで、高速移動を無効化し、ダメージを与えてでもツバメを止めることを選んだ。
はずだった。
「【回転跳躍】【空襲】」
「っ!?」
二枚の盾の隙間を跳び、閃かせる短剣。
やはり対人戦のツバメは、至高の暗殺者に他ならない。
美しい伸身の跳躍で迫る攻撃の動線は完璧で、時間が止まったかのような感覚に陥る。
その直後、視界に入ってきたのは――――メイ。
「ごめんねツバメちゃん! 【カンガルーキック】!」
【空襲】を喰らえば、そこからの高火力攻撃までが一連の流れだろう。
ツバメを横から蹴り出して、まもりの危機を救うことに成功。
着地したメイは気づく。
クイーンとの間には、何もなく一本道。
すると互いが、この場の『王』を狙って動き出した。
クイーンはすぐさま触角をぶつけて鳴らし、【クイーン・オーダー】を発動。
しかし駆けるメイの手には【原始肉】
豪快にかじりつけばもう、状態異常は届かない。
ここで左右から迫るのは、親衛隊アリ。
「【ジェット・ナックル】!」
「【砲弾跳躍】ぽよっ!」
こちらも二人の親衛隊が、メイのために道を払う。
「ありがとう迷子ちゃん、スライムちゃん! 【裸足の女神】!」
メイは一瞬で、クイーンの懐へ。
ハサミ攻撃をしゃがんでかわし、そのまま剣を豪快に振り上げる。
「【フルスイング】!」
アリの長い身体が宙を回転して、落下。
だがメイは止まらず、そのままハサミ部分をキャッチしてクイーンを抱え上げた。
「いきますっ!」
「う、おお……っ」
クイーンを垂直に持ち上げたメイに、思わずもれる唸り声。
集まる視線と、一瞬の静止時間。
この後、後ろに投げて叩きつけるのは皆なんとなく分かっている。それでも。
「【ワイルドバスター】だああああああ――――っ!!」
「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」
声を上げずにはいられない。
地面に叩きつけられるのと同時に、巨体が地面にめり込み盛大な砂煙が上がる。
「総攻撃ぽよおおおお――っ!!」
もはやクイーンの生死は関係なく、もしも一ゲージでも残っていた時のために放っておく掲示板組の攻撃。
「【オクタブレード】!」
「【フレイムマイン】!」
マウント氏と計算君の攻撃が炸裂すると、さらに前衛組が畳みかける。
「【風切りの矢】!」
「【白氷花】!」
即座に後衛組が続き、巻き起こる爆発。
吹き飛ばされたクイーンはそのまま壁に激突し、滴る溶岩に燃えながら断末魔の咆哮をあげた。
◆新作『メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚~』始まりました!
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