1381.レンと謎の少女
腹心獅子の、まさかの回復。
ドールは戦いの流れを見守るだけでなく、援護に入るようだ。
「回復を隠れながらされたんじゃ、厄介が過ぎるわね」
複数回の回復は、プレイヤーには大きなショックとなり気概を削ぐ。
これが町の中での召喚なら、化けたり隠れたりの回復で、戦いが面倒な形になっていただろう。
「…………」
今回はチームを分けての戦闘を選択。
言葉少ない少女と共に、レンは回復役の打倒に急ぐ。
濃紫のコートをまとったドールは、なかなかの雰囲気を持っている。
球体関節に金属の鎧をまとわせた姿は、見た目も妖しげで良い。
「援護するわ。前衛を任せてもいい?」
「……分かった」
短く応えた少女が前に出て、レンが後方に構える。
するとすぐに、ドールが動き出した。
掲げた三又の槍を少女に向けて振り下ろし、【三炎弾】を発動。
槍は刃が魔宝石で出来ており、輝きと共に三つの火炎弾が同時に発射される。
「っ!」
これを少女は、かわしながら接近。
するとド-ルは、即座に槍を大きく払った。
生まれる大きな三本の空刃が弧を描く、【風刃斬】が少女を狙う。
「【飛天】」
今度は華麗な前方跳躍で回避し、さらに前へ。
ドールが槍を突き出す。
【氷天槍】は刃の魔宝石が輝かせ、長い氷刃を生み出す一撃。
それでも少女は斜め前方への踏み出して、続けての回避に成功した。
三連続の攻撃を見事にかわしたところで、敵を範囲に収めた少女は――。
「【速歩】」
高速接近で、一気に距離を詰める。
「【雷走破】」
高速疾走から放つ掌底が、雷光を放つ。
これをドールは、斜め後方へのステップでかわす。
「【爆水拳】」
すると少女は、続けざまに左の拳を放つ。
左右の拳による攻撃は当然速く、回避は難しい。
ドールは防御を選び、弾け散る水しぶきに大きく二歩ほど後退。
少女はさらに踏み込んでいく。
「【雷走破】」
再び始まる拳撃を防御してしまえば、当然態勢が崩れている分だけ、先ほどより大きく後退をすることになる。
ドールは強引な回避に入るが、拳の一撃はまばゆい光を見せただけ。
「攻撃がでない……!?」
驚くレン。
それは【フェイント】という、モーションだけ行う変わり種スキル。
同じ動き、発動エフェクトまで起こしながら、攻撃判定は生まれない。
何より、使用後すぐさま動けるのが強みだ。
あらためて強く一歩を踏み出した少女は、虚を突かれたドールの懐に張り込み、右足を大きく引いた。
「【斬火脚】」
豪快な蹴り上げが、ドールと紅蓮の炎を天高く突き上げる。さらに。
そのまま続く『かかと落とし』が、天から炎の槌を叩きつける。
ドールはこの豪快な攻撃に、地面を跳ね転がった。
「【誘導弾】【フリーズストライク】!」
さらに敵が離れたことで、追撃は余裕の状態だ。
「この子、上手い」
見事な戦いぶりに、思わずうなずくレン。
倒れ込んだドールは槍を杖代わりに立ち上がり、体勢を立て直したところで【ワンショット】
それは槍の下部に付けた魔法珠から放つ、高速魔法弾。
まさに突然の、意表を突く攻撃だ。
「っ!」
少女は驚きながらもこれをなんと、メイが以前見せた後方への倒れ込みで回避。
そのまま脚を蹴り上げて、体勢を立て直す。
するとすでにドールはスキルの準備を終えていた。
空中に生まれた大量の氷槍。
その全てが、一斉に飛んでくる。
【氷刃乱刺】は、とにかく回避が難しい範囲攻撃だ。
「前衛の無理は禁物」
少女は無理をせず、防御でこれに対応。
両者が再び向かい合う。
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
ここでレンが、先んじてけん制。
少女の頭を越えていく炎砲弾が、急降下してドールを狙う。
敵の選択は大きな跳躍での回避と、同時に攻撃。
【爆嵐】は槍を地面に突き刺し、生み出す風で吹き飛ばす一撃だ。
槍が地面に刺さるのと同時に、生まれる爆風。
「……今」
少女はしっかり見据えて、風が身体にぶつかる瞬間。
「【龍槌】」
肩を当てにいくタックルは、攻撃はもちろん敵の魔法攻撃などを打ち消すもの。
見事に風が割れ粉砕、足元を吹き抜けていく。
そして暴風が崩れれば、吹き付ける風にローブを揺らしながらレンが攻撃を狙う。
「【聖槍】!」
放たれる聖なる光の槍。
一直線に飛び、そのままドールに直撃するところで――。
「っ!」
槍の柄部分についた魔宝石に封じられた。
「まもりの【マジックイーター】と同じだと考えて良さそうね……!」
ここでドールは、魔法攻撃を封じられた魔導士に狙いを変更。
速い移動で一気に、レンのもとに駆け込んでくる。
「危ないっ!」
急な狙いの変更で突破された少女が、思わず上げる声。
ここで下手な魔導士なら、魔法が無力化されたことで手が止まる。
だがレンは慌てることもなく、杖を下げることもしない。なぜなら。
「【封魔】は確かにやっかいだけど、封じておける魔法は……一つだけが基本でしょう? 【フレアバースト】!」
すぐさま放つ爆炎。
それでなくてもスキル付属の槍。
盾ならまだしも、いくらでも魔法を無効化できるとは思えない。
すると狙い通り、ドールは慌てて封魔した魔法を開放して相殺を狙ってきた。
ぶつかる二つの魔法によって、起こった炎がドールの足をよろめかせる。
そうなれば必然的に、少女が動けようになる。
「さすが、五月晴れの頭脳……!」
一気に距離を詰め、始まる攻撃。
右左右と拳打を叩き込み、そのまま大きな回し蹴りで敵を後退させた。
その反動でレンの方に向くと、自然と目を合わせる。
「ちょっと!」
足を止めたままでいる少女は当然、敵に背を向けた状態。
隙だらけのところを狙って迫るドールに、レンは注意を喚起するが、それでも少女は慌てない。
背中を見せ続ける少女に接近し、敵が【風刃斬】を叩き込もうと槍を掲げたところで――。
「【風王脚】」
風を起こしながら、高速の一回転。
放つ豪快な回転蹴りが、凄まじい威力の空弧を描き出す。
敵に背を見せた状態でも使える、むしろ敵が『好機だと勘違い』して大技を使いに来たところに、カウンターで決まる回し蹴りの刃は見事に炸裂。
ドールは再び、地を跳ね転がった。
揺れる少女の髪、その顔を見てレンが思わず声を上げる。
「ちょっと、あなたもしかして……っ!」
すると少女はマフラーを降ろし、小さく息をついた。
「そう。私だよ……可憐姉」
なんと共闘の相手は、妹の香菜ことカナだった。
「どうしてこのクエストに……?」
レンがたずねると、カナは当然のように言い放つ。
「もちろん、お姉ちゃんの監視だよ!」
「…………」
悪魔召喚、天使降臨ときて、続く大きなクエスト。
そこにレンが絡んでいれば、怪しまないはずがない。
こうして始まった姉妹の、まさかの共闘は続く。
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