1380.始まる腹心戦
ドールの持つ紋様入りの宝珠が輝き出し、この土地に走る魔脈を光らせる。
足元に流れる魔力流に、思わず目を見張るメイたち。
「……この感じ。基本的には初手で捕まえられないと腹心の召喚は止められないシビアなクエストなのね」
追いついたレンがつぶやく。
ドールの制止、腹心の打倒、そして二体を先に仕留める。
魔神復活まで三つの段階があると考えれば、初期段階が難しいのは当然だろう。
宝珠から生み出される、ホログラムのような紋様。
それは空間に『門』を生み出し、そこから一体の魔獣が現れる。
「強敵の気配ですね」
「本当だねっ」
召喚された腹心。
その姿は、二足歩行の灰色獅子。
高さ3メートル弱ほどで、真紅の腰巻がカカトの辺りまで伸びている。
首元と手首を飾る銀の装飾が、大物であることを示す。
青い目をした獅子は、手にしたハルバードを大きく一度払ってみせた。
「……でも、町中での戦いにならなかったのは良かったわね。何か余計なギミックとかが足される可能性があるもの」
レンの言葉は、正解だ。
町中で召喚された場合は、『手間』が増えるこのクエスト。
正面から向かい合って戦えるのは、むしろ良い方だ。
「それであなたは……同じクエストの参加者ってところ?」
レンの問いに、マフラー少女はこくりとうなずいた。
「ドールを追う際の動き、攻撃は見事でしたね」
「それなら、共闘でいいかしら?」
少女は、またもうなずく。
「よろしくおねがいしますっ!」
メイが笑顔で言うと、今度はわずかに時間を置いて、再びうなずいてみせる。
「我ガ神ノ復活ヘ立チ塞ガルカ、人間」
その青い目を向け、腹心の獅子がハルバードを構える。
「ナラバソノ不遜、身ヲ捧ゲテ詫ビルガイイ――ッ!」
「きますっ!」
ツバメの声に合わせて、腹心獅子が動き出す。
強く地面を踏みしめ、一気に距離を詰める。
話しながらも、先頭に出ていたメイを狙っての攻撃だ。
豪快な振り降ろしに対して、メイは軽いバックステップでこれを回避。
「わわっ」
するとそのまま刃が地面を割った。
どうやらその威力は、相当なもののようだ。
「【連続投擲】!」
即座にツバメが【雷ブレード】を投じて攻撃。
すると腹心獅子は、そのまま踏み込みハルバードを豪快に一回転。
メイを攻撃しながら、迫るブレードを斬り飛ばしてみせた。
どうやらこの回転撃は通常攻撃にもかかわらず、巻き起こす烈風も同時に攻撃判定を持つようだ。
しかしこうして二人が敵の意識を引き付ければ、当然そこに隙間ができる。
「【速歩】!」
少女は鋭い踏み出しで、腹心獅子の懐へ。
「【雷走破】!」
高速疾走から放つ掌底が、雷光を放つ。
だが腹心獅子は、これを空いた手で防御。
反撃の態勢に入ろうとするが、すでに少女は動き出していた。
「【爆水拳】!」
続けざまに左の拳で放つ一撃が、猛烈な飛沫をあげる。
高い火力を広い面で打ち出せるのが、『水』の強さ。
その力強さに弾かれて、腹心獅子は大きく後退をさせられた。
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
そこへレンが即座に放った炎砲弾が見事に決まり、メイたちが戦いの先手を取った。
「【速歩】!」
少女はさらに距離を詰め、腹心獅子の前へ。
「【爆水拳】!」
今度は大きく上がる飛沫で、その視界を阻害する。
「【加速】【跳躍】【反転】【連続投擲】!」
飛沫ごと腹心獅子を跳び越えたツバメは空中で振り返り、【雷ブレード】を連投。
これに気づいた獅子は、即座に飛び退き回避を成功させる。
「【崩天気功】!」
するとすぐさま、少女が魔法のように放つ気の波動の一撃で敵を狙う。
近いほど高く、遠いほど低い火力になる一撃は、ダメージを期待できる距離ではない。
しかしこれを嫌がった腹心獅子から、強引な避け方を引き出した。
「【誘導弾】【超高速魔法】【ファイアボルト】!」
その一撃が当たり、大きな隙が生まれたところで――。
「【重ね着】【装備変更】!」
【猫耳】の上に【狐耳】を付けたメイが駆け込んでくる。
腹心獅子は強引にハルバードを振り回すが、これをメイは超えていく。
「【アクロバット】からの【ソードバッシュ】……エクスプロード!」
衝撃波が、【狐火】による青い炎を巻き起こす。
腹心獅子は大きくHPを減らし、地を跳ねて転がった。
「……いい動きするわね」
魔法を最後に持ってくるためのつなぎ、そしてメイの高火力攻撃を決めるために、とっさに見せたツバメとの連携。
メイの華麗な動きと、同時に放たれる一撃の威力に、少女が驚くところを見ながら感嘆するレン。
前衛三人がこれだけ上手に攻められるのであれば、良い戦いができそうだ。
そう、確信したその瞬間。
「「「「っ!?」」」」
なんと腹心獅子が、受けたダメージのほとんどを回復した。
「静かにしてたのは、そういうこと……っ!」
見れば下がった位置にいたドールが、回復スキルを施したようだ。
戦いを見守るだけではなく、こういう形で援護をしてくるのは予想外だった。
「分かれて戦いましょう! 腹心を抑えるチームと、ドールを打倒するチームで!」
こうなれば、回復役の早い打倒が急務だ。
状況は手前のメイとツバメ、中段に少女がいて後方に自分。
敵はまだ手の内を見せていない感じがある。
そうなるとメイには、腹心獅子を任せておくのが良さそうだ。
「メイとツバメはこのまま獅子をお願い! あなたは私とドールを!」
「りょうかいですっ!」
応えて、すぐさま構えるメイとツバメ。
一方少女は少しメイたちの方を気にした後、小さくうなずいた。
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前話、少し文字を足して補足してみました! 意図のある文章なのですが、それが伝われば……!
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