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1377.残火

「なんか聖教都市が大変なことになってるけど、可憐姉は――」

「関係ないわよ?」


 香菜の怪しむ視線に、冷や汗をかきながら視線を逸らす可憐。


「今度は学校の校庭とか、町を使って大きな魔法陣を描くみたいなことは――」

「しないっての! アルティシアで魔法陣を描いてたのは闇の使徒たちだし、現実との区別はついてるから!」

「闇の使徒って、要するに可憐姉のことでしょう?」

「闇の使徒の概念そのものになるほど、実績を積んだ覚えはないんだけど?」


 そう言う可憐だが、一年前ならチャンスがあればやったという確信があるため、ちょっと震えながらだ。

 本当に、本当に家の中での儀式にとどまって良かった。


「とにかく、そういうのはもう卒業したから」

「本当かなぁ……」


 香菜は先日のモンスターバトルグランプリの広報誌を、こちらに向けながらつぶやく。


「うぐっ」


 黒龍を持ち出し、さらにクエストボスと戦う挑戦者を試す役。

 そんな大物ぶりは、果たしてキャラか素か。

 前科の多い可憐では、怪しまれるのも無理はない。


「……あっ」


 買い出しに来ていた二人が改札の前を通ると、白の衣装を着こんだ数人の少女たちとすれ違う。

 その中には明らかに、白夜の装備を意識した子までいる。

 どう考えても光の使徒で、可憐はナイトメア時とは服装も髪色も違うが、顔を背けながら歩みを進める。


「降臨祭の屈辱は、必ず晴らしてみせる」

「もちろんです。私は闇の使徒が『悪魔召喚を潰されたという』大義名分を、あえて悪魔を自ら討つことで、生み出したのだと考えています」

「犯人は、闇の者の中にいるに違いない」


 どうやら光の使徒の中には、降臨祭を潰すためにわざと悪魔召喚を潰させて、闇の使徒が被害者を装った説が流れているようだ。


「大きなクエストが二つ終わって、一段落したと思ったのに……」


 そんな会話に、感嘆する可憐。

 面目を潰された光の使徒と闇の使徒は、各所で小競り合いを続けているようだ。


「……ん?」


 そんな中、すれ違った一人の光の使徒少女が足を止めた。


「今の制服の子、どこかで見た覚えが……」

「っ!? 香菜、急ぐわよ!」

「可憐姉?」


 言われて振り返る、光の使徒勢。

 もしも気づかれれば、間違いなく『闇を超えし者』としての対応を、人通りの多い改札前でやらされる流れになる。

 可憐はすぐさま香菜の手を取ると、駆け足でその場を後にしたのだった。



   ◆



 星屑内で待ち合わせをしていたメイたちは、エディンベアにある『闇を継ぐ者』の基地にやって来ていた。

 それは伝書烏による、クエスト紹介があったからだ。

『闇を継ぐ者』のマネージャーをする男は、一冊の古書を開いて語り出す。


「先日起きた、召喚直後の悪魔が討たれた事件。そして降臨したばかりの天使の打倒……この二つの事件は、偶然ではない」

「……どういうこと?」

「この書によると、天使と悪魔を『生贄』にすることでさらなる大物――――魔神を呼び出すための儀式が行えるようなのだ」

「あれだけ壮大だった悪魔や天使の召喚すら、『前段階』に過ぎないのですか」

「すごーい……」


 悪魔を討ち、天使を討つ。

 そんな凄まじい暗殺クエストがそれだけで終わらず、さらなる大事の準備だった。

 その事実に、驚くメイたち。


「個人でこれだけ大きな展開ができるのだとすれば、本当にすごいわね」


 ソロでも大きなことができる。

 星屑のクエストの幅に、レンが思わず嘆息する。


「ただし魔神の召喚には前提として、三体の『腹心』を呼び出す必要がある。その三体が先んじて先導し、悪魔と天使を贄としたことで得た魔力を使い、魔神が降臨するのだ」

「今度はこちらが、魔神の降臨を止める側になるのですね」

「大きな危機。この問題は聖教都市やアサシンギルドなどの一部などでも話が進んでいるはずだ」


 どうやらこの『制止』クエストは、聖教側や影に潜む者たちにも参加資格があるようだ。


「そして腹心の二体を打倒することができれば、もう魔神の召喚はできない」

「なるほどね」


 三体の腹心との戦いがあると考えると、別口でクエストを受けた者たちと共同で戦うことも前提とされているのだろう。

 おそらく、制限時間内に二体を倒すことが条件になってくるはずだ。


「これは一つの大陸を巻き込むほどの被害を出す話になるだろう。召喚の制止や打倒に失敗すれば、そこからは魔神との戦いがその大陸の最重要課題となるだろうな」

「その大陸の国や街の崩壊、クエストが変わってしまうほどの内容ってことかしら」

「相当の規模ですね」

「ドキドキしちゃうね……!」

「は、はひっ」


 闇の使徒に紛れて悪魔を討ち、光の使徒に紛れて天使を討った何者か。

 今度はその何者かの狙いを阻止するために、始まるクエスト。


「魔神の降臨を止めてもらえるか?」

「もちろんですっ!」

「こんな大きなクエスト、受けない理由がないわ」

「まずは腹心二体ですね」

「が、がんばりますっ」


 うなずき合うメイたち。

 こうして四人は新たなクエストを受注し、魔神による破壊を止めるために動き出すのだった。

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