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1374/1383

1374.降臨の時

「どうにか……闇の使徒を抑えることができましたわね」


 リズをギリギリのところで退けた白夜は、大きく息をつく。


「五月晴れと共に紅の翼として行動することで得た経験値、戦い方を参考にしていなければ、負けていましたわ……」


 残りHPは驚異の1ケタ。

 従魔ラグナリオン共々、壁にぶつかっただけで死に戻るほどの状態だ。

 まさに紙一重の勝利を飾った白夜は、降臨の舞台へと駆け戻る。

 街を覆っていた妖しい気配は、もうなくなっている。

 これは聖教都市に集まっていた魔力による攻撃を、抑えられたと考えていいだろう。


「魔法陣自体は……また別のクエストで誰かが止めてくれたと考えるべきですわね」


 鋭い白夜は、他にも動くパーティの気配を察知。

 それが闇を継ぐ者だとは気づいていないが、感謝の念を抱きながら会場へ。


「白夜さま、ご無事ですか?」

「どうにか、と言ったところですわね」


 やってきたフード付きローブの使徒に続けて、集まってきた光の者たち。


「とにかくこれで、儀式は滞りなく行うことができますわ」


 数人の使徒と共に、白夜は舞台の前へ。

 見れば舞台を取り囲むように立つ聖教騎士は、その数を大きく増している。

 さらに司祭たちによって『結界』を思わせる光の壁まで展開され、その防御態勢は完璧。

 これはもう、外部からの攻撃は不可能だというゲーム側の『表明』だ。


「始まりますわね」


 舞台前の良い位置につけた白夜は、始まる降臨祭に視線を向ける。

 続く司祭たちの祝詞に合わせて、止まっていた降臨の輝きが増していく。

 神々しい光の粒子と共に生まれる、天使の梯子。

 夜の聖教都市に生まれる光景は、とても美しい。


「これは本当に、すごいクエストになったわね」

「本当ですね。とても壮大です」


 少し離れた屋根の上、闇を継ぐ者の面々は舞台を眺める。


「降臨の儀か、後学のために見ておくとするか」

「僕はあんまり興味ないなァ」


 スキアとクルデリスも、その視線はしっかり舞台に向いている。


「ワイルドはどうだ?」

「そうだな……興味津々とでも言っておこうか」

「ふ、ふふっ」


 クールキャラなら『興味深い』が程よい選択だろう。

 そこを素直に『興味津々』と言ってしまうところに、スキアは笑みを隠せない。

 そしてもう自分からメイの『おかしなキャラ付けを聞きに行っている自分』に、また笑う。


「ねえ、このポーズじゃないとダメなの?」


 そして黒づくめ衣装のまま、いかにも秘密組織といったポーズでいるワイルドたちに、白目をむくベリアル。

 各々が、楽しく待ち時間を過ごしていると――。


「き、きますっ!」


 シールドが声を上げた。

 司祭の祝詞に合わせて、楽隊が鳴らす荘厳な音楽。

 すると光が一層強まり、やがてプリズムを思わせる虹色の輝きと共に広がる黄金光が、視界を埋め尽くす。


「「「おおおお……」」」


 その光景を目にした者たちは皆、感嘆の声を上げる。

 広がる大きな白い翼。

 純白のローブを揺らす、神々しい天使の降臨。

 その輝きに、舞台の周りが昼間のように明るくなる。


「「「おおおおおおおお……っ」」」


 大きくなる歓声。

 ワイルドもポーズこそ決めたままだが、尻尾が楽しそうに振るえている。


「やりましたね、白夜様!」

「ええ、無事に降臨の儀を成すことができましたわ」


 面子を賭けた儀式の成功と、闇の使徒への勝利を喜ぶ光の使徒たち。

 楽隊が鳴らす美しくも壮大な音楽に、誰もが夢中になる。

 そんな中で、一息ついた白夜。


「…………ん?」


 不意に覚える違和感。

 それは、自分の隣に並んでいるフード姿の使徒についてだ。

 白夜は光の使徒の面々を見れば、誰か分かるくらいには顔を覚えている。

 だが、レクイエムとの戦いを終えて戻ってきた自分に「白夜さま、ご無事ですか?」と声をかけてきた、この人物は誰だったか。

 記憶を振り返るが、どうしても覚えがない。


「少しよろしいですか?」


 白夜はその視線を右隣りに向け、問いかける。


「貴方、一体どこから来たのですか――――」


 そう言いながら、振り向いた瞬間。


「っ!?」


 その腹部に、小型の赤刃が突き刺さった。


「貴方、な、にを……?」


 謎の使徒の一撃は、まるで血でも吸うかのようにHPを一瞬で吸収。

 レクイエムとの戦いでHPを1桁まで落としていた白夜は、まさかの凶刃に倒れる。

 突然ヒザをついた白夜に、首を傾げる一部の光の使徒。


「白夜様?」

「白夜様? どうされたのですか?」


 降臨のまばゆい光と、鳴り響く聖歌の中で広がる困惑。

 異変に気づいたのは、偶然違和感に気づいたごく一部の光の使徒のみ。


「白夜様! 一体何がっ!?」


 問いかける光の使徒たちに、倒れたままの白夜がつぶやく。


「追って……あの使徒を、追って……おそらくあのプレイヤーの狙いは……天使」

「あの光の使徒の狙いが天使!? それは、一体どういうことですか!?」


 フードをかぶった光の使徒らしき少女は、降臨の舞台に足を踏み出していた。

 止める者はいない。

 なぜなら、異変の震源は降臨祭の中心地。

 そして踏み出した何者かは、どう見ても光の使徒。

 外部への警備が厳重だからこそ、その内部で起きる事件は『イベントの一幕』と思われてしまう。

 そのため初動は、大きく遅れることになってしまった。

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― 新着の感想 ―
謎の人物の目的は一体? ここで天使も討伐されてしまったら、某RPGのニュートラルルート(別名殲滅ルート)まっしぐらにw
クイズですが正解ですね、ちなみに全員正面の場合羊豚犬羊で四匹になりますね
ここで『時が来る』少女が動いたわけか。 いや座りが悪い(笑) 何か良い感じの呼び名は無いかな?
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