1373.熱戦
「申し訳ありませんが、レンさん以外には負けたくありませんの」
「ふん、ヤツを追従できるのは、このレクイエムだけだ」
ぶつかり合う二人。
優位を取るリズに対して、白夜は跳躍して再びラグナリオンに騎乗。
そのまま旋回して、狙いをつける。
「【紅蓮砲弾】」
これをあえて少し外し地面に着弾、炎を大きく巻き上げた。
「【ツインストライク】!」
「【暗衝】!」
先行するラグナリオンの突進を、突進の移動使用でかわす。
「【ライトニングスラスト】!」
するとすぐさま、そこを狙いに来る白夜の飛行刺突。
リズは【黒炎魔手】によるカウンターを狙うが――。
「なんだとっ!?」
白夜はわざと攻撃を外し、地面を突いた。
共に虚を突かれたリズは、動き出しが遅れる。
「【ライトニングスラスト】!」
再び最速で放つ高速刺突。
それでもリズは、慌てて体勢を傾け対応。
肩を斬り裂きしっかりとダメージを与えるが、直撃とまではいかず【極光乱舞】にはつなげない。
白夜はラグナリオンに回収されて、再び空へ上がる。
「【紅蓮砲弾】!」
「【灰燼の剣】!」
「【シャインブレス】!」
「やはり空を行く攻撃はやっかいだ……だが! 【絶掌】!」
続く連続攻撃を霧散させたところに、迫るラグナリオン。
「【エアブースト】【エクスプロードバイト】!」
急加速によってタイミングをずらし、一気に食らいつきに行く。
「くっ!」
とっさに身を投げ出し、直撃を避ける。
しかし黒竜の身体に弾かれ、リズは地を転がった。
「タイミングをずらすことでカウンター対策も含んだ、見事な攻撃……だが」
すぐさま立ち上がり、その視線を宙を舞う白夜へ。
「羽虫のように飛び回っているだけでは、我には勝てぬぞ」
そして、手にした大剣を引いた。
「――――【黒威無縫】」
新スキルの発動と同時に、身体から猛烈に噴き出す闇のオーラ。
「堕ちろ」
放たれる豪速の剣舞は、付近に黒い斬撃の弧を次々に描き出す。
その範囲は長く広いだけでなく、どの部分であっても触れれば同じ火力を喰らうことになる。
八本の黒い斬撃の弧は、大きな身体を持つラグナリオンでは回避するのが難しい。
「きゃああああ――っ!?」
描かれる黒き弧の一つを受け、ラグナリオンと白夜が墜落。
落下して共に地を跳ね転がった。
遠距離攻撃や高速移動のないリズは慌てて追うこともなく、ただ静かに剣を振り払ってみせる。
「これほどの剛剣を、あの速度で広範囲にだなんて……反則ですわね」
一方リズの驚異的な安定感の前に、白夜は息をつく。
「得意の空中戦が通じないとなれば、もう貴様に勝機はない」
冷静に言い放つリズ。
すると白夜は、ラグナリオンを背後に控えさせたまま告げる。
「いいでしょう。このままでは埒があきませんわ」
「ほう……空を捨てたか」
「地上戦。従魔師らしく従魔との連携で戦います」
「いいだろう。深き闇の前に沈め、光の者よ」
リズはめずらしく、対空戦にも強いプレイヤーだ。
このまま戦っていても、不利は変わらない。
ならばリズにとっても初見となる、騎竜と地上で連携して戦う方が可能性が高い
白夜はそう踏んで、覚悟を決めるように息を突いた。
「いきます! 【エンジェライズ】!」
先手を取り、仕掛ける接近。
「【エーテルジャベリン】」
展開した六本の光槍でけん制しつつ、レイピアを振るう。
リズが下がったところに、飛び込んで来たラグナリオンが縦の軌道で叩き込む尾。
これを横移動で裂けたところに、続ける払いの連撃。
「【斬空尾刃】!」
身体を二回転させての斬り裂く尾を、リズは盾で防御。
「【エーテルランス・スキュア】!」
「チッ!」
防御不可かつ、喰らえば連続攻撃を受けることになる光槍の一撃。
これを全力のバックステップでかわしたところに、飛び込んでくるのはラグナリオン。
「【頭突き】!」
「なん、だとっ!?」
華麗な戦いを好む白夜の、泥臭過ぎる攻撃に思わず直撃を喰らうリズ。さらに。
「【エクスプロードバイト】!」
喰らいつきからの爆破攻撃。
とっさの盾防御も、爆発に弾かれ大きく下がる。
「このままいきます! 【ツインストライク】!」
地上での連携攻撃は、ラグナリオンの飛び掛かりから。
「【ライトニングスラスト】!」
「っ!!」
なんと白夜はラグナリオンの飛び掛かりの下を、【ライトニングスラスト】で抜いていく。
巨体が宙を舞う姿を見せられてしまった以上、どうしても上からの攻撃に対応してしまう。
視線を上下には割れず、リズはとにかく大きな横の動きで白夜をかわしてすれ違う。
そこに空中から迫る、爪の叩きつけ。
盾で防御すると、続けざまの【斬空尾刃】に弾かれる。
さらにラグナリオンは、【シャインブレス】で追撃を仕掛けてきた。
「【絶掌】ッ!」
これを見事な反応で、霧散させるリズ。しかし。
「【エーテルジャベリン】」
通り過ぎて行った白夜が反転し、後方からの攻撃で削る。
「【エーテルライズ・エクステンド】」
さらに続く足元からの光柱で体勢を崩したところに、ラグナリオンの尾でダメージを与えて弾き飛ばす。
「ぐああっ!!」
「【紅蓮砲弾】! 【シャインブレス】!」
すぐさまの追撃に対し、リズはすぐさま盾で対応。
広がる噴煙の中。
「【ライトニングスラスト】!」
「【黒炎魔手】!」
リズはここで、高速刺突に対してカウンターが取れる見事な対応を見せた。
だが、白夜はやってこない。
それどころか姿もない。
「っ!?」
白夜は正面からではなく、煙に紛れてリズの頭上へ飛んでいた。
当然上はがら空きの状態だ。
レイピアを手に、そのまま落下斬りを狙う。
「っ! 【暗衝】!」
リズは月明かりが遮られたのを感じて、即座に動いて回避に成功するが――。
「ラグナリオン! 【エクスプロードバイト】!」
そこに飛び込んで来た黒竜の、喰らいつきが直撃。
巻き起こった爆発に、派手に地を転がる。
すぐさま追撃に駆ける白夜だが、近接の上手なリズは慌てない。
「【黒閃天衝】!」
足元から突き上がる闇の槍で白夜を足止めしつつ、ダメージを与えた後。
「【暗衝】!」
「きゃあっ!」
容赦のない突撃で弾き飛ばし、生まれる距離。
「【闇の翼】【ダークフラップ】」
すると今度はリズが飛行を使用し、頭上から一気に距離を詰めてきた。
「【暗天の大剣】!」
「っ!」
豪快な払いの一撃を、伏せることでどうにか回避する。だが。
「天を斬れ――――【飛天闇祓い】」
そこを狙った本命の一撃が、盛大な斬撃の弧を描く。
巨大な筆で描いたような、荒々しい斬撃エフェクトが白夜に迫り来る。
「……お願いしますわ! 【ブロッキング】ッ!」
悩んだ白夜の声に応え、飛び込んできたのは黒竜ラグナリオン。
【飛天闇祓い】を喰らい、斬り飛ばされる。
信頼が一定を越えていなければ、このような大技を代わりに喰らってもらえない。
しかし身代わりとなることを選んだラグナリオンは、そのまま白夜の後方に落下した。
「ありがとう、ラグナリオン! 【ライトニングスラスト】!」
放った刺突は体勢を直しつつあったリズを斬り、二人は衝突。
二人とも地を転がるが、先に起き上がったのはリズ。
「【暗夜剣】!」
放たれた剣撃を、かわす白夜。
「【闇十字】!」
続く十字の波動を、飛び込みでかわす。
「【暗夜の大剣】!」
だが大きな払いの一撃はかわせず、防御で対応。
弾かれて、大きく二の足を踏んだ。
「勝負をつけるぞ! 【暗衝】!」
ここでリズは、一気に距離を詰めてくる。
「……イチかバチかですわね」
迫るリズが前、後ろには相棒のラグナリオン。
三者が縦に並んだこの状態。
白夜は、賭けに出る。
「【シャインブレス】」
そう命じて、首を傾げる。
真後ろにいたラグナリオンが放つ光線は一直線に白夜へ向かって飛び、首元をかすめていく。
そしてそのまま、正面から迫るリズの虚を完全に突いて直撃。
「ぐっ!?」
飛行特訓時にあげた信頼度は、白夜のHPを1桁だけ残して見事な隙を生み出してみせた。
「【エンジェライズ】!」
もちろん白夜はすぐさま、距離を詰める。
「【ライトニングスラスト・クルシフィクス】!」
放つレイピアがリズに突き刺さると、足元から生まれる二本の光槍が続いて十字に突き刺さり、敵を磔にする。
「【紅蓮砲弾】!」
白夜の指示によって放たれた火炎弾が、磔のリズに次々直撃して宙を舞わせる。
白夜は手にしたレイピアを引き、狙いを定める。
「【ライトニングスラスト】! 【極光乱舞】!」
空中で突き刺さったレイピアが、凄絶な爆発を起こしてリズはそのまま落下。
白夜は必死に体勢を立て直して、華麗に着地を見せた。
起き上がれないリズのHPはゼロ。
勝負は、ここに決した。
「覚悟を決めた時の泥臭い戦い方、そして従魔との高い信頼……貴様、ずいぶんとナイトメアたちから学んでいるようだな」
「……否定はしませんわ」
白夜がそう言うと、リズは静かに消えていく。
「わたくしだけならまだしも、ラグナリオンまで瀕死とは……」
従魔と共にHP1桁という、瀕死の状態。
首の傾けの角度が少し少なくても、信頼が足りなくても敗戦。
そんな薄氷の勝利に、白夜は大きく息をついた。
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