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1370.悪夢と狂気

「囲んだ! これで今度こそっ!」


 闇の使徒たちに囲まれてしまったシールド。

 ここから物理や魔法を織り交ぜた全方位攻撃が始まってしまうと、防御メインのシールドには厳しい状況だ。


「【錬金の盾】!」

「なに?」


 なぜか盾を大型化したシールドに、首を傾げる闇の使徒たち。


「【チャリオット】!」


 シールドは、大きな盾を抱えて走り出した。


「う、うおおおっ!?」

「ブルドーザーかよっ!」


 シールドは正面に立つ闇の使徒たちを、跳ね飛ばす形で突進。


「【シールドバッシュ】!」

「「「うああああああ――――っ!!」」」


 そのまま道を生み出し、どうにか包囲網を突破した。さらに。


「そろそろですね」


 それでもあらためて包囲を始めようとした使徒たちの『集まり具合』を見て、スワローがスキルを発動。


「【ヴェノムバスター】……発動!」

「なっ!?」


 先ほどの戦いで『毒』を盛られ、屋根から落ちていった使徒から、突然大量の毒液が巻き散らかされた。

 こうしてたくさんの使徒たちが『劇毒』にかかったところで、すかさずワイルドがクールに手を上げる。


「【グリーンハンド】【痺れ花】」


『劇毒』は、他の状態異常も重複するという恐ろしい効果を持つため、二重罹患者が続出。


「バカな……」

「我らよりも何倍も恐ろしい毒を……っ」

「これが野生とアサシンの、技の融合……」


 倒れ、動けなくなったプレイヤーたちを見下ろすベリアルたちは、まさしく闇の組織の猛者だった。


「【低空高速飛行】!」


 スワローとワイルドの状態異常乱舞によって、優劣がハッキリしたことを確認したベリアルは屋根の上を行く。

 月明かりの下、突き進む聖教都市。

 するとその先に、狙い通りの人物の姿。


「そこまでよ、ルナ」


 同じく屋根の上を、『足りない魔法陣』をつなげるために動いていた、維月刹那・ルナティックだ。

 その手には【魔法石】がしっかりと握られている。


「それはこっちのセリフだよナイトメア。降臨する神に呪術をぶつけるだなんて、こんな面白い展開をボクが逃すと思うかい?」


 刹那は肩までの黒髪を揺らしながら、楽しそうに笑う。


「思わないわ。だから、直接止めにきたの」

「そうでなくちゃね。ボクにしてみれば、神の降りる街で闇の者同士が戦うなんて最高の余興だよ」


 向かい合う二人。

 怪しい笑みを浮かべたままの刹那の背後には、構える暗夜教団の如月輪廻と六道彼方。


「ならば、お前たちの相手は我らがしよう」

「そォいうことだねェ」


 ベリアルの背後には、後を追ってきたスキアとクルデリス。

 これでベリアルは、刹那の相手に集中できそうだ。


『――――勝利条件:敵の打倒または【魔法石】の破壊』


 視界の一角に現れた、勝敗のルールとHPゲージ。

 戦闘時のダメージが一定以上になると、刹那の魔宝石は割れて砕けるようだ。


「さあ、始めようナイトメア」

「そうね」


 ベリアルは短くそう言って杖を握り直す。そして。


「【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」


 放つ四連続の火炎弾が、開戦の合図となった。


「【連続魔Ⅲ】【ブレイズバレット】!」


 反撃の炎弾は五連発。

 刹那が一発多く、ベリアルは一歩の移動でこれを回避する。


「【連続魔Ⅲ】【ブレイズキャノン】!」


 即座に続く炎砲弾の連射は、三連発。

 初級だけでなく、上級魔法も三連発で放てる【連続魔】は、ベリアルも認める好スキルだ。

 さらに使用武器を杖ではなく『バングル』にすることで、早い攻撃を可能とする。

 ベリアルは続けざまに、飛来する炎砲弾を早いサイドステップで回避する。


「【飛び影】」


 するとすぐさま長短自在の高速ステップで距離を詰めてきた。


「【レビティア】!」

「っ!」


 それは指定距離内の対象を、空中へ強制的に飛ばすスキル。

 ベリアルは慌てて、横っ飛びからのローリングで回避する。


「【跳び影】」

「っ!?」


 そして虚を突かれた。

 同じ発音で放たれた新移動スキルは、高低自在なジャンプ。

 空中で手を伸ばすと、ベリアルに狙いをつける。


「【ブレイズキャノン】!」


 空中から放つ炎砲弾を再びのローリングで回避すると、爆発にあおられて地を跳ね転がる。


「【跳び影】」


 続けざまの跳躍に、慌てて顔を上げる。

 そして空中の刹那を見て、すぐさま防御態勢に入るが――。

 刹那は炎砲弾を放たず、掲げた手をそのまま地に着いた。


「【炎槌】」

「きゃあっ!」


 こちらも新スキル。

 地面から噴き上がる閃熱が、防御を崩してベリアルを吹き飛ばす。


「【ブリザード】!」


 ベリアルはここで刹那の接近を抑えるために、氷嵐で視界を奪う。そして。


「【黒翼】!」

「っ!?」


 自らの起こした氷嵐の上を跳び越えていく形で、黒の翼を開いて接近。


「はああああ――っ!」

「っ!」


 振り下ろす【魔剣の御柄】を、刹那はギリギリのところでかわした。


「解放!」

「【飛び影】!」


 続く氷砲弾の解放攻撃も、刹那は知っているため斜め前方への短距離ステップで回避。

 そこから二歩ほど走り、反撃に入る。


「【レビティア】」


 放つは、強制吹き飛ばし。


「マズッ! それならっ!」

「っ!?」


 しかしベリアルも、刹那のこのスキルは充分に知っている。

 空いた手を使い、力づくで突き飛ばすという魔導士らしからぬ方法で、どうにか発動を止めてみせた。


「【ブレイズキャノン】!」


 刹那がすぐさま放つ火炎砲弾は、足元を狙うような軌道。

 ベリアルがバックステップでかわすと、弾けて炎を巻き上げた。


「【跳び影】」


 炎と煙で覆われた視界。

 先ほどのレンの意趣を返すような形で、炎を跳躍で飛び越える。


「【連続魔Ⅲ】【ブレイズキャノン】!」

「【低空高速飛行】【旋回飛行】! 【悪魔の腕】!」


 回り込むような飛行で回避してからの反撃。

 刹那の放った火炎弾の起こす爆発はレンの数センチ横をかすめたが、伸びた【悪魔の腕】は刹那をつかんでそのまま叩きつけた。


「……【誘導弾】【超高速魔法】【ファイアボルト】!」


 そして起き上がりに、タイミングを計って放つ魔法。


「くっ!」


 超速の炎弾が、しっかりと刹那を弾いた。

 それはもはや、実質回避不可能な連携だ。


「スキルを増やして、接近戦を強化してるわね」

「さすがナイトメアだよ、それでもしっかり対応してくる」


 息をつくベリアルだが、刹那は楽しそうに笑う。そして。


「それなら、ボクの新たな力を解放しよう!」


 そう言って両手を開くと、再びヒザを曲げた。


「【飛び影】!」


 急速な接近に、ベリアルは意識を集中。


「――――【連続魔Ⅳ】」

「っ!」


 レンも認める優秀スキル【連続魔】

『Ⅳ』ということは、それが強化されたということだ。


「【ブレイズキャノン】!」


 五連発か、それ以上か。

 ベリアルは放たれる炎砲弾に集中するが、数は一発。

 素直な横への回避で、これをかわすが――。


「【チェーンスキューア】!」

「なっ!?」


 直後に矢じり付きの鎖が八本、地面から突き出してきた。

 これを飛び込みで、どうにかかわして杖を刹那に向けるベリアル。しかし。


「【獄炎】!」

「きゃあっ!」


 刹那を中心に燃え上がる円形の炎が、そのまま炸裂して吹き飛ばされた。


「連続魔法って……別種の魔法をつないで使えるの!?」


 通常このタイプのスキルは同じ魔法、もしくは弾丸系のみ異種の混合が可能という形。

 しかし刹那は、タイプの違う魔法を含めて三度まで連続で使用できるようだ。

 当然MP消費は跳ね上がるが、後のない戦いに出し惜しみなど必要ない。


「面白いスキルね……これによって以前より大きく力を増してるわ」

「続けようナイトメア。面倒な時間制限があるんだ。ボクはこのまま……キミを超えていくよ」


 これ以上ないくらいに、楽しそうに笑う刹那。


「目覚めなよ、ボクの【呪印】」


 さらにスキルを発動し、首元に広がる紋様が輝き出す。

 刹那はさらに、大きく魔力を上げてきた。


「耐え切れるかい? 維月刹那が解放する――――至高の狂気に」


 大きく戦闘能力をあげてきた刹那。

 しかし月を背に語る見事な『入りっぷり』の方に、ベリアルは白目をむいたのだった。

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レン向けの装備があったので 他の人の作品ですが https://ncode.syosetu.com/n1332jl/404/
遺跡カフェレマリアのまとめ設定また書きますね 遺跡カフェ レマニア ニセメイがウェイトレスをしているカフェで簡易闘技場が隣接していて、ニセメイと戦いたいプレーヤーがいればニセメイが応じて、瞬殺してい…
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